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再開と出会い

ジリジリと照りつける太陽が憎いくらい暑い日々が続く中、必死で労働に勤しむ毎日…
いったい、この過酷な状況はいつまで続くのか…
ふと周りを見渡すと、街ゆく全ての人が幸せそうに見える。
きっと不幸なのは自分だけなのだろうと…

先日、10年近く前に働いていた会社の同僚から、突然、連絡(LINE)あった。同僚と言っても、私より歳は3つ下の女性。いわゆるお互い中途採用ってやつだ。

同僚: 「久しぶり!元気してる?」

という、日本国民の9割が使いそうな差し障りのない一文から入る。

私: 「おー!久しぶり、相変わらずだよ。」

と、私も差し障りのない一文で返してみる。

そもそも会社を辞めて10年近く経つのに「相変わらずだよ。」の説得力はあるのだろうか?

短い一文だけで読み取れてしまうであろう二人の関係性は"昔の同僚"ということだけ。それ以上でも以下でもない。

この関係性から察するに、コミュ障であり無駄に年齢を重ね人生経験豊富とは言えない私であっても、この後の展開は容易に想像できてしまう。

【考察1.】
勤めていた会社の同期会(OB会)で人数が足らない。もしくは共通の知り合いが結婚するので、二次会の誘い(きっと披露宴には呼ばれない)

【考察2.】
宗教、又はマルチ(マルチまがい)への誘い。

経験上ほぼ、この2択で間違い無いだろう。あとは挨拶文のあとに来るアプローチ次第でどちらか確定するはずである。

同僚: 「久しぶり食事でも行かない?焼肉とかさ。」

はい確定です。早くもフラグ回収です。二次会の誘いであれば、事前に会う必要なんてない。ほぼ他人の私に、わざわざ会わなくちゃならない理由があるからだ。

スタンダードな人生経験は不足しているが、宗教の誘いやマルチ系の誘いの経験値は豊富だ。コミュ障気味な人間は、こういう類の勧誘をされやすいのかもしれない。

まぁコミュ障と言っても私の場合、相手の考えていることを勝手に妄想してしまう癖が凄い。しかも不安要素ばかりが気になってしまい、考えだすと止まらないし、まだ会ったばかりなのに「私はこの人に嫌われている」という結論に至ってしまうという地獄。

本来なら、こういう誘われ方をされた際は断るべきなのだろうけどOKしてしまうところもまた私らしさなのかもしれない。いや、彼女だから…か。

週末を迎え、元同僚が予約してくれた焼肉屋へ向かう。昔勤めていた会社の最寄駅から程近い小さな焼肉屋らしい。

裏路地を歩いていると、私を呼ぶ声が聞こえてくる。10年以上経つのに、あの頃と変わらない元同僚の姿があった。

案内された席に着くと、元同僚の「ちょー久しぶりじゃん。」から、お互いの現状確認トークに花が咲く。

久しぶりの再開もあってか、話すことが多すぎていつもの自分じゃないみたいだ。なんだか楽しい。

元同僚: 「ココさ、最近見つけたんだよね。みんな美味しいんだけど、特に冷麺、暑い夏に最高なんだよ!」

私: 「あ、冷麺苦手なんだよね。なんか輪ゴム食ってるみたいな感じで…」

相変わらず空気が読めないというか、これもコミュ障の症状なのかも知れない。

元同僚: 「とりあえず適当に注文するね。すみませーん!注文いいですかー!」

店員が注文を聞きに来る。

元同僚:「生ビールふたつ!牛タン塩2枚、カルビ2枚、ハラミ2枚… あと〜、白菜キムチにナムル、ジャンボサラダハーフ、韓国のり!お願いしまーす。」

私: 「冷麺は頼まないの?」

元同僚: 「普通さ、冷麺は〆でしょ?最後に頼むから心配しなくても大丈夫。」

正直なところ冷麺なんてどうでもいい。それ以上に気になることが頭から離れないでいる。

私: 「で、突然どうしたの?」

元同僚: 「久しぶりに会いたくなってさ。」

私: 「それだけ?なんかあるんじゃないの?」

元同僚: 「え?何もないけど。あるとしたら冷麺食べて欲しかったけど(笑)」

相当な冷麺推しのようだが、私の頭の中はそれどころじゃない。

私: 「普通、音沙汰ない昔の同僚と、いきなり飯食いたくなるとか無くない?」

元同僚: 「だから、それがあるんだって!だから今、ココに居るんだから。」

そんな論争を繰り返しているうちに、元同僚の冷麺タイムを迎え「ココの冷麺がいかに美味いか」というプレゼンを聞かされるが、やはり頭の中は、あのことでいっぱいだった。

食事を終えレジに向かう。

コミュ障とは正反対なのかもしれないが、何でも気になり出したら止まらないし、空気も読まずに発言してしまうから控えないといけないことは理解している。

だけど、今ここで聞かなければ、もう二度と会うこともないかもしれない。

私: 「店員さん!ちょっと聞きたいんですけど、ジャンボサラダハーフって普通のサラダですよね?」

店員: 「フツウヨリ、チョットオオイ」

と、若い韓国人スタッフが、覚えたての日本語で答えてくれた。

何故だか「またこの店に来たいな」と思った瞬間だった。

おしまい。

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