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〇〇横界隈について

掃き溜めの様な場所に髪の色を青やピンクに染めピアスを開けまくった若者が集まっている。地べたに座り込み目の焦点は定かではない。路上で飲酒をする者たちで溢れ、罵声の浴びせ合いをする男女が殴り合いに発展しSNSにアップロードされた。淀んだ空気と反吐の様な臭いが周囲に充満し、警察と浮浪者と思しき者が言い合いをしている。今日は特別な祭りではない、昨日までもこうだったし、明日からもこうなる。 「アイちゃん、実家に連れて行かれたんだって」 「うん、急性アル中で救急車で運ばれちゃって、その

    • blew up spirit 8

      「彩乃ちゃんが居なくなるのは寂しいわ」 彩乃の勤める風俗店の店長は店のHPの更新作業をしながら言った 「長い間お世話になりました。あと数か月お願いします。」 「やりたいことが見付かったのなら何よりね。キッチンカーオープンしたら私も食べに行くよ」 「はい、ありがとうございます」 会社員等が退職する場合、本来なら有休消化をし退職した後、失業保険を貰って余裕を持って次の職を探し始めると言う事ができるのだが、風俗嬢は個人事業主として委託と言う形で雇用される事が殆どで、彩乃も例外ではな

      • blew up spirit 7

        「彩乃ちゃんがやりたい事なら僕も応援するよ」 新山アキラはめい花を抱きかかえながら彩乃に言った 「本当に?嬉しい。お店を辞めないといけないから、反対されるかと思った」 彩乃はアキラに生活費とは別に仕事の仲介手数料として収入の10%を支払っていた。 「彩乃ちゃんの気持ちが第一だよ。それに、やるならめい花ちゃんの面倒を見る人間も必要だしね」 めい花は膨れ顔で言った 「この前は、ママが迎えに来てくれるのずっと待ってたんだよ」 彩乃が申し訳なさげに言う 「本当にごめんなさい…」 「知

        • blew up spirit 6

          彩乃は近くにあるカフェに入り落ち着きを取り戻していた。 (ハァ~なんであんな事に…) 頭を抱えながら大きく溜息をつく。 この様に衝動的に反論してしまう事は今回が初めてではなかった。以前にも店で接客中に客の一人が風俗嬢を貶す発言をして咄嗟に反論をした彩乃と喧嘩になってしまう出来事があった。その時は店長が仲裁をして事なきを得たが、彩乃には威圧的な相手に対し反抗的に振る舞ってしまう性格があった。 「ハァ~もう帰ろう。保育園終わっちゃう」 コーヒーを飲み干し立ち上がろうとした時カフェ

        〇〇横界隈について

          blew up spirit 5

          デモの当日、彩乃は少し寝坊してしまい軽い化粧だけ済ませめい花を保育園に預け商店街へと向かった。 デモのスタート地点には50人ほどの女性が集まっておりすでに賑わっていた。髪を青く染めた者や、青が基調の服装であったり、リップやシャドウも青系で統一している参加者が多かった。 「今回は止むを得ず風俗業に従事しなければならなかった女性の悲しみを表現する為、テーマカラーを青にしたブルーパレードです。何か青いものを身にまとえるのならよろしくお願いします」 主催者らしき若い女性が皆に通達して

          blew up spirit 5

          blew up spirit 4

          「かわいいお車がいっぱいだね」 休日に彩乃はめい花を連れてキッチンカー専門の中古車ショップに来ていた。 小さなワンボックスの屋台風なものから、スクールバスを改造し食堂の様にした大型のものまで様々であった。 「中古車ですと、大体150万から400万ほどですね。軽トラを使った小さなものなら低価格で手軽に購入できます。1.5tのものだと350万ほどで少し高めになりますが、エアコンも付いて色々な種類のメニューが出せます。」 店員の説明を聞きながら彩乃は葛藤していた。1.5tだと営業中

          blew up spirit 4

          blew up spirit 3

          「また来ますね!これだけ話を聞いてくださった人はあなたが初めてだったから」 そう言って鏑木紗英は去って行った。 「次顔見せたら即警察呼んで…」 疲れた素振りを見せながら店長が男性スタッフに言った。 「店長があんな風に議論しているのを見るのは初めてだったので少し意外でした」 彩乃が言うと 「そうね。店の子を馬鹿にされている様で少し腹が立っちゃって…。あのフェミニストの子が言う様な仕方なくやっている子も多いけど、本当にこの仕事が好きでやり甲斐を感じながらしている子だっているんだか

          blew up spirit 3

          blew up spirit 2

          「彩乃にぴったりの仕事があるんだよ」 西田彩乃は仕事を辞めてゴミ屋敷の様な部屋で貯金を切り崩しながら生活していた。 金を与えていた男は以前よりも入り浸る様になった。新山アキラと言う名前だった。 「一対一で接客する仕事でシンプルだし、好きな時に出勤していいんだ」 アキラは散らかっているゴミを片付けながら言った 「いつまでも引き篭もったままじゃ健康に悪いし、取り合えず始めてみなよ。知り合いの店だから優しくしてくれるからさ」 貯金は半分以上使い尽くし、実家からの連絡も断っている為収

          blew up spirit 2

          blew up spirit 1

          西田彩乃は就職活動時に駅の階段から転落し右足を複雑骨折した。 大事には至らなかったがその後全ての面接を松葉杖で受ける事になった。 「その右足の怪我はどうされたんですか?」 ほぼ全ての面接で聞いてくる。 「就職活動中の面接に向かう前に階段で転んでしまって…そのまま面接に行ってしまい、痛過ぎて面接どころではありませんでした」 苦笑いしながら彩乃は答えた。面接官も苦笑いした。 彼女は数社から内定を貰い、その中の一つの会社に就職した。持ち前の明るさがあり、すぐ社内で打ち解けられた。

          blew up spirit 1