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〇〇横界隈について

掃き溜めの様な場所に髪の色を青やピンクに染めピアスを開けまくった若者が集まっている。地べたに座り込み目の焦点は定かではない。路上で飲酒をする者たちで溢れ、罵声の浴びせ合いをする男女が殴り合いに発展しSNSにアップロードされた。淀んだ空気と反吐の様な臭いが周囲に充満し、警察と浮浪者と思しき者が言い合いをしている。今日は特別な祭りではない、昨日までもこうだったし、明日からもこうなる。

「アイちゃん、実家に連れて行かれたんだって」
「うん、急性アル中で救急車で運ばれちゃって、そのまま補導」
「アイちゃんの親、マジで毒親なのにね…」
「私の親だってそうだよ。」
「私もそう…酒は危ないから控えよう」
「そうだね。クスリでODにしよう」

クスリは主にせき止め薬が用いられた。以下の症状に効能があります。怒り、悲観、希死念慮、貧乏、無能、不能、僻み、妬み、憎悪、承認欲求、うつ、発達障害、精神障害、LGBTQ、毒親、登校拒否、イジメ、ルッキズム、動物性も使用されておらずヴィーガンの方も安心。用法・用量を守らずご使用ください。

目が覚めた。アスファルトに飛び散った吐瀉物におはようの挨拶をする。何日までなら風呂に入らなくてもいいだろう?それを競い合いたい。言葉を喋ろうとして口から屁をこいていた。通じる?通じない?笑って叫べたら、それでいい

「HIVより梅毒の方がヤベーよ。10年後とかに脳が腐って死ぬ」
「俺ら絶対全員かかってるっしょ。最近ブツブツできて来たし」
「でも10年後なんて誰も生きてないよ。梅毒の前にクスリ飲んで飛んで死ぬ」

金を持っている奴は歓迎、そうじゃないなら何か面白い事やってくれ、顔を覚えて欲しいなら、居場所が欲しいなら、家に帰りたくないなら、ここはそう言うところ

割のいいバイトあるらしいよ。お金を受け取って来て入金するだけ。それでウン十万。そのバイトやってクスリ買ってODしようよ。こんなクソみたいな世界、しらふで生きるのはつら過ぎる。ODしたら次は効き難くなってしまうので、クスリの量をどんどん多くしていかないといけない。胃の中が薬でじゃらじゃらになったらダイエットにいいかもね。

「タカさん、死んじゃったらしいよ。留置所で」
「マジで、悲しい。タカさん居ないとウチらどうしたらいいの?」
「でも、ぶっちゃけウザくなかった?仕切り屋だったし」
「そうかも。じゃあウチらもう自由だね」

初めて性的虐待を受けたのが6歳の時だった。風呂に一人で入り始めた私に兄が指を入れたりキスしたりして来た。挿入されたのは私が小学5年生の時だ。それまで指を入れられていたので痛みはそこまで無かった。中学に上がり、胸も膨らんで来た頃父親からの性的虐待も始まった。私は家にあまり帰らなくなり、最終的に家を飛び出しこの界隈に住み着く様になった。知らない男に金を払わせ、セックスを提供して生活している。今までただ搾取されていただけの性的資本で報酬を得る事は悪い気分では無い。愛する恋人もでき、生まれて初めて自由を手にした。

「私はHIVキャリアだけど、今は薬で発症を抑えられるから生でヤってもいいよ」
「医学の発展はすげぇ」

生ぬるい風が頬を舌なめずる。スカートに付いているレースの縁は薄黒く汚れていた。街の喧騒が燃料の様に身体の中に流れ込み笑い声をあげる。飛びっきりの生ゴミだけを厳選したサラダ。蛆虫の兄妹として生まれた。

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