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読書感想文

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読書感想文をまとめているマガジンです。
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記事一覧

物語に惹かれて、取り憑かれて

物語に惹かれて、取り憑かれて

読書は知らない世界へ飛び込む疑似体験だ。

作品によって雰囲気はそれぞれ。澄んだ青空みたいに爽やかな物語や、夏の海のような青春を感じるストーリーもあれば、真夜中のような暗い怪談や、ドロドロと粘っこい小説だってある。

リアリティがある作品の登場人物に感情移入するのは現実味があって楽しいし、ファンタジーの世界にのめり込めば現実逃避することができる。初めて読む時と二回目を読む時に捉え方が違うのも不思議

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『花束は毒』織守きょうや レビュー

『花束は毒』織守きょうや レビュー

秘密というものは不思議な魅力を纏っています。何を隠しているのか。なぜ隠しているのか。私も他人の秘密を見つけてしまった時、ついつい調べてしまった経験があります。

しかし、秘密を知ったところで幸せになれるかどうかは別の問題です。秘密は秘密のままだからこそいいのかもしれません。なぜなら秘密は時として残酷な真実を突き付けてくるのですから。

あらすじ

『花束は毒』は、「知らぬが仏」を物語にしたようなミ

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『神様の罠』ミステリ短編集 レビュー

『神様の罠』ミステリ短編集 レビュー

私は短編集に魅力を感じています。

作家が作品を寄せ合う短編集。好きな作家がいるから買うのも楽しいし、気になっていた作家がいるから買うのも楽しい。それが他の作家の作品を読むことに繋がり、新たな出会いの場としても優秀です。

今回紹介する『神様の罠』は六人の人気作家が集まり、それぞれミステリを持ち寄った短編集です。ミステリ好きの私にとって「短編×ミステリ」である本作はまさに大好物な組み合わせでした。

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『みんな知ってる、みんな知らない』 チョン・ミジン レビュー

『みんな知ってる、みんな知らない』 チョン・ミジン レビュー

自分が苦しんでいたという事実を、自分以外のみんなは知っているのに、当事者の私は知らない。

自分だけが知らないという恐怖は、他のいかなる感情よりも恐ろしかった。恐怖が膨らむにつれ、絶望も膨らんだ。

記憶を失っていたヨヌは、一人苦しんでいた。

「あらすじ」

『みんな知ってる、みんな知らない』は、少女が軟禁されていた49日間を紐解くサスペンスミステリーです。

主人公は、誘拐されたヨヌと、森の奥

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『#ある朝殺人犯になっていた』藤井清美 レビュー

『#ある朝殺人犯になっていた』藤井清美 レビュー

みすずちゃんのからだは、ぐんにゃりまがりながら、そらをとんだ。

『#ある朝殺人犯になっていた』は、ショッキングな冒頭から物語が始まります。車に轢かれてしまう美鈴ちゃん。車はそのまま走り去ります。

あらすじ

ある日の朝、売れないお笑い芸人の"浮気淳弥"が目を覚ますと、彼のTwitterに【人殺し】【卑怯者】【罪を償え!】【絶対に追い詰めてやる!】と大量のリプライが届いていました。

普段の生活

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短編集『神様の罠』を読んで、芦沢央の「投了図」レビュー

短編集『神様の罠』を読んで、芦沢央の「投了図」レビュー

ある日、街に嫌がらせの張り紙が張られていた。
その字が夫の字と似ている。

もし嫌がらせをした人が夫だったら、そんな人とこれからも変わらずに暮らしていけるのだろうか。

腹の底で何かがぞろりと蠢く。

『神様の罠』は6人の人気作家がミステリーを持ち寄った短編集です。

それぞれ作家の個性が出ており、ファンである作家の作品を楽しむのはもちろん、新たな作家との出会いがあるのも短編集の醍醐味です。

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『死にたがりの君に贈る物語』綾崎 隼 レビュー

『死にたがりの君に贈る物語』綾崎 隼 レビュー

ミマサカリオリは天才だった。
ミマサカリオリだけが特別だった。

ミマサカリオリは残酷な小説家。奇跡みたいな物語を書けるのに、続きをよませてくれない。

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『死にたがりの君に贈る物語』は、人気小説の物語を再現しようとファン七人で共同生活を始めるのですが、次第に"ある謎"が浮き彫りになっていくミステリーです。

ミステリーとして謎解きをする楽しみだけでなく、推しや誹謗中傷についてがテーマの今

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