マガジンのカバー画像

浮世絵の紙

6
江戸時代のオリジナルの浮世絵に使用された紙の説明及び解明・復元の記録
運営しているクリエイター

#好きな日本文化

礬水(どうさ)引き①

和紙は多孔質で繊維同士の間に隙間があります。そのままでは摺ったときに絵具の水分は広がり滲みます。そこでこの隙間を埋めるために、和紙は摺る前に礬水という液体で下処理を行います。礬水は膠と明礬を混ぜて作ります。一枚一枚刷毛で和紙の両面に引いた後、乾かして完了です。膠と明礬のバランスはもちろん季節や天候などによっても影響を受ける微妙な作業です。

2017.10.18

浮世絵の素材ー和紙② 特注復元紙について(第一期目)



高知県立紙産業技術センターと和紙職人田村亮二氏の協力のもと、江戸時代の浮世絵の復元紙「木灰煮米粉入奉書」が完成しました。自分の仕事の為だけの特注品です。既製品には無い多くの手間がかかるので、普通は製作依頼に応じてくれる人はいませんが、同センターの研究者の方が興味があるということで、協力して貰えたのは非常に幸いでした。
 一般的に浮世絵の復刻版には昔から「越前生漉奉書」という紙が使われています。

もっとみる

浮世絵の素材ー和紙①

江戸時代、多色摺りの浮世絵には一部上物には越前奉書という紙が、その他多くには政(まさ)(伊予政・伊予奉書)という紙が用いられました。さらに幕末には「地政」と称して、古紙を原料の大半に用いた漉返しの紙が江戸近郊で漉かれ、安価な芝居絵等に用いられていたと言われています。

現代の復刻には一般的に越前奉書が使われています。越前奉書、伊予奉書共に現在も生産されていますが、当然の如く時代の変化、及び製法の変

もっとみる