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感想『チェヴェングール』(アンドレイ・プラトーノフ 工藤順 石井優貴訳)※長め感想

 世界各国の翻訳者を「奇々怪々」と苦悶に追い込んだ、ソ連文学の傑作長編小説。
飢餓と革命と共産主義と混乱に満ちた本作を、「ホモソーシャルにおける女」という観点からつらつら語らせてください。
プラトーノフ先生ぐらい女をガチ女として描く男性作家、野田サトル先生ぐらいしか知らないんですけど。
ロシアと革命が合わさるとそういう電波とか出るんですかいっぱい浴びよう。

本作はチェヴェングールという土地が最大の舞台で、そこは理想郷なんですけど男しかいないんです。
ガチガチのホモソーシャルなんですよ。
働かなくてもいいけど、常に「共産主義」をしてなくちゃいけなくて、しかし「共産主義」とは何か作中の誰もわからないし、読者もわからなくなってくる。マジゲシュタルト崩壊をしているわけです。で、働かないでどうやって生きてるかと言いますと。

雑草食べて生きてる。

チェヴェングールに個人の所有物というものはあっちゃいけないので、働いちゃいかんのです。
で、この男共が何をしているかというと「共産主義」をしている。
共産主義は動詞じゃねえのツッコミ待ちなんですが、本作では「共産主義」が動詞なんですよ。
その「共産主義」(動詞)が何を生み出すかというと、何も生み出さねえとしか言いようがないです。

男共はだんだん虚しさに耐えきれなくなってきて、「妻がほしい」と言い出す。
で、プローシカという男が女を探しに行くんですね。
この「女」は「現実」のメタファーではないかと思うんですよ。
しかもメタファーでありながら、リアルに「女」そのものでもあるわけですね。
それまで雑草食べてゴロゴロしてた男共は、嫁さんが来るかもとなった瞬間に働き出す。
なんもしてない自分に、耐えきれなくなるわけです。
「共産主義」とかわけわからんものよりリアルな生活を始めちゃう。
なんかこの寓話にぶち込まれるナマなカンジよくないですか? わたくしは大好きです。

で、また作中に登場する女がリアリティ溢れてまして。
「この男はダメだな」と、思った瞬間に見切りをつける! ナマすぎるだろっていうくらいにガチリアルなんですよ。

まだ作品の1%も語っていませんが、流石にここらで止めておきます。
ご静聴ありがとうございました。

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