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はらへったら読む・カレーライス

たまに食べたくなるカレーライス。
すき腹にガッツリ食べたいカレーライス。
カレーは調理が簡単。
スープ系は不要で、サラダだけでいい。

調理担当にとってはいいこと尽くめの献立だ。
我が家には、美味しいとなかなか首を縦に振らないカレー審査員がひとり居る。
過去の審査結果は合格が3割3分3厘といったところで、野球の打率だったらいいかもしれないが、カレーが美味しくないのが7割というのは問題だ。
審査員が言うには“味が薄い”と言うのだ。
過去にも味見をしながら調理はしているが、味に関しては香辛料が邪魔をするようで、よく判断ができないためカレー作りにはいまひとつ自信がない。

今日は成功とさせるために3つの秘策を使うこととする。
エプロンを首に引っ掛け、背中はいつものようにボタンで留めずにキッチンへ飛び込んだ。

いつものようにカレールーは箱半分使用して四皿分を作るのだ。
まな板を取り出し、真ん中に玉ねぎ中玉(200g)を置いてから、深く深呼吸をして調理の開始を告げた。
最近まで自己流で玉ねぎの薄皮剥きをやっていたのだが、今回は少し前に「kurashiru」で勉強させてもらった。頭頂部をザクッっと落として、包丁の刃元で頭から根に向かって薄皮をシャッシャッシャッっと、何年も玉ねぎ剥き経験があるかのような手つきで見事にクリア。
やはり、技は先人から無条件に受け継ぐものだと改めて認識した。
人参(100g)は、ピラーで剥いて乱切りにしておいた。

深いフライパンに日清キャノーラ油を大さじ2ほど入れてフライパンを熱し、クミンシードを小さじ1/3ぐらいを入れて香りが出るまで待った。
さっきの玉ねぎを繊維に沿って十二等分したものを入れ、S&Bのニンニクチューブとショウガチューブをそれぞれ、2~3センチずつ垂らし、中火で焦がさないように十分ほど炒める。
この、クミン、ニンニク、ショウガを入れる技がひとつめの秘策
“NHKあさイチ”から教えてもらったものだ。スパイス感がアップするので、“味が薄い”対策には多少は有効であろう。

同時進行のため隣に小さいフライパンを置いて、サイコロ状のカレー用豚角切りを投入。極力肉の六面に薄い焼き目をつけ火を止めておいた。

玉ねぎ炒めは進行中で、ようやく全体が茶色になりつつあるので、人参も参加させてフライパンの中で踊りあった。
頃合いを見て、サイコロ状のカレー用豚角切りも踊りに参加させる。
次の水の量を少なくするのが二つ目の秘策だ。
パッケージのレシピでは、水を500ml入れろと書かれているので、“味が薄い”対策としての秘策50ml引いた水を入れ、蓋をして沸騰させてからガスを弱火にして「OK グーグル アラーム20分」とGoogle Home Miniに命じた。

大きいジャガイモ1個をピラーで剥いて6個の角切りを取り出し、ピラーを使って角を落として水に漬けた。
ジャガイモは煮過ぎると溶けて無くなってしまうことが幾度かあったのでその教訓として10分程度煮込むような時間で投入するようにしている。

ワークトップに散乱している小物を洗って水切り籠に入れて一旦気持ちをリセットする。
冷蔵庫の野菜室からレタスやキュウリ、ハム等を出して代わり映えしないフレッシュサラダを作った。芸が無いので、酒のつまみに買ってあったトルティーヤチップスを一枚だけ出して、リスが食い散らかした跡のように盛りつけておいた。

ジャガイモはこのあたりで入れることに。
ドボン、ドボドボ、ドップン・・・
大きなシリコン製スプーンでジャガイモをエイと押し込んで、一旦キッチンから退場だ。

🥄🥄🥄

グーグルの奇妙なアラームが鳴ったので、キッチンに入り、爪楊枝でジャガイモに突き刺して少し固めだったのでよしとした。

火を止めて、カレールー投入の儀の始まり。
今日の準備したカレールーは三つ目の秘策としての「プレミアム熟カレー中辛」。
“プレミアム”という呪文が多少でも“味が薄い”対策に有効であればと願っての選択だ。

最近のカレールーは、一個々パッキングされて過保護ではないかと思わせる。一箱の半分は4個のカレールーってことだ。
ドボン、ドボン、ドボン、ドボン。4個入れた。
大きなシリコン製スプーンを大きく回して溶かす。
カレーはほぼ完成しているので、この工程だけは大好きだ。
カレーのいい匂いがしてきた。
かき混ぜる度に、とろみが増して香辛料の香りが広がり、カレー専門店のBGMが聞こえてきそうだ。
これだけとろみがあれば、審査員は薄いとは言わないだろう、きっと。
ハゲな俺に向かって薄いと言われたら受け入れるしかないが、今回はカレーが薄いとは言わせない。
カレールーは理科で習う溶解<ヨウカイ>という状態になったようだ。
ガスを点火して5分ほど、とろ火で煮てから火を静かに止めた。
夕飯まで半時間ほどあるので寝かせると言うよりは仮眠だ。

🥄🥄🥄

腹をすかした家族に、カレーライス、リスのサラダを配膳した。

どうだ!

審査員はリスのサラダから手をつけた。
胃の中でサラダの上にカレーライスを乗せる作戦をとることはよく知っている。
審査員はリスのサラダを半分だけ食べたらカレーライスに手をつけた。
スプーンでカレーを掬って鼻の下でスイングさせてから口に運び、審査員は薄いと思っているのか、首を傾げてから縦に振ってくれた。
微妙なリアクションだったが、それ以上は聞かなかった。

毎回食材は変わり、それにプロが作るカレーではないので、味のバラツキあってあたりまえである。
遠い昔、親父は無条件にウスターソースをかけていた。
子ども達もそれにならってウスターソースをかけていた。
そうだ、そのウスターソースという手もある。
今度は四つ目の秘策にウスターソースを隠し味程度に入れるのを忘れないでおこう。

カレー皿とスプーンのカチャカチャする不規則な音が本格的に鳴り出し、我が家はいっときカレーライスの世界になった。
噛み応えのある豚角切りをスプーンで半分に割って咀嚼したり、適度な硬さのジャガイモを口の中で割ったり、玉ねぎの甘味を感じたり、カレーライスを楽しんだ。
家庭のカレーライスにしてみれば、結構美味しいと思うのだが・・・

我が家にはカレー審査員がいるおかげでカレー作りにとってよい刺激をもらい、そして、我が家流のカレーライスが継続的に改善されていくのだ。
ビジネスだけじゃない、料理もPlan-Do-Check-Actionのサイクルを回せ!

ごちそうさまでした。

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