はらへったら読む・茄子の味噌汁
今日の晩御飯は、美味しい茄子の味噌汁が吸いたいと思ったのは昼前のこと。パンチの効いたダシで味噌汁をいただくには、今からちょっとした下準備が必要だ。
キッチンのワークトップに味噌汁用小鍋と、煮干しの袋を取り出す。
三人分の水、味噌汁用小鍋に浄水器から500~600mCC入れた。
ティッシュペーパー一枚をきれいに広げてから、煮干しのチャックを開けて、大小さまざまなミイラたち、十数尾ほどをティッシュペーパーに乗せた。
ミイラをひとつひとつ、頭を取って背中から割り、真っ黒い鼻くそみたいな内臓を丁寧に取ってから順次鍋に投入。
ほぼ、鍋底に沈むが必ずひとつやふたつ水面で頑張るミイラもいる。
ミイラの頭と真っ黒い鼻くそは、ティッシュペーパーでそのまま丸めて握り潰し、食品ロスではないのだと念じながら処分した。
では、夕方までお休みミイラたち・・・
夕方6時、夕飯を準備る時間になった。
ミイラたちはすべて鍋底に沈み、ダシを本格的に放出するまえの沈黙を保っている。
レンジフードの弱スイッチを左手で押し込み、同時に右手でガスを点火させた。
少ししたらミイラが鍋の中で泳ぎ始めている。
沸騰したら弱火にして五分ほど煮てから火を止めてシンク下の網じゃくしを取り出し、ミイラたちを一尾残らず掬い取り小皿に盛ったら、湘南で引いた地引網の中の動かない魚たちのようだった。
小鍋には粉末ダシを追加で投入し、いつものハイブリッドダシになった。
冷蔵庫の野菜室から中型の茄子を三つ取り出し、ガクの部分を指で剥ぎ取りなら水できれいに洗った。イテテテテテ、棘には注意が必要であった。
ガクを剥ぎ取った部分には包丁で一周の切り目、茄子の縦方向にはガクのあたりからお尻まで四カ所切り目を。とどめに、茄子のお尻からセーノ、プスッっと、竹串を突き挿してから抜いた。
ガスコンロのグリルに三つの茄子を並べて、上下強のガスに切り替え12分のタイマーをセット。香ばしい焼き茄子の味噌汁にするので、たっぷりと焼いた方がいいのだ。
その間ビールを飲み始め、つまみにミイラを口に放り込んだ・・・
そして、ボールに水を張って茄子の焼き上がりに備えた。
夏であれば、氷水にするのだが、冬は蛇口からは天然氷水が出るので楽である。
ガスコンロが12分を知らせたのでグリルを引き出した。
さっき茄子に“プスッ”っと挿した小さな穴から茄子スチームが勢いよく噴き出しているのが、なんだか滑稽でかわいい。もういいよと教えてあげたくなった。
小鍋もこの時点で点火し弱火にした。
素手でひょいと、茄子を水に投入したが、茄子は頑張って中々冷めない。冷めないのはわかっている、適当に冷やして小さく萎んだその茄子たちをまな板に乗せて、皮を剥ぎ取り始めた。
焼けすぎの部分の真っ黒なパリパリした焦げも、欠片も残さず丁寧に取る。
この工程だけは苦手、ではなく、嫌いだ。
我慢の作業を続けること三分。
やっとのこと茄子が素っ裸になったので嬉しくなり小さくガッツポーズ。
2cmの輪切りにして、どんどん小鍋に投入していった。
ガスの火を強くして、味噌投入の時がやってくることを小鍋に教えた。
冷蔵庫から坊津・麦味噌<ぼうのつ・むぎみそ>を、シンク下から味噌こし、抽斗から小さいホイッパー(泡だて器)を取り出した。ホイッパーで味噌をキャッチしてから味噌こしの中で、ガリガリガリと回して音を楽しんだ。
その音に反応するか、首を伸ばして飼い猫を見たが向こうを向いて耳だけ動いていた。
味の心配はないが念のため小皿に入れた味噌汁を味見して、誰も見てないがよしと頷く。
冷凍アゲを適量投入して出来上がりだ。
そして、蓋をして夕食まで閉じ込めた。
夕飯の時間になった。
味噌汁の温度は言うまでもなく、熱くなければならない。
再加熱した味噌汁は最後に食卓へ運ぶのだ・・・
出来上がった味噌汁をすすった。
序章、喉の奥から「ァッ―――」と乾いた音を吐いて味噌汁に敬意を払った。
知る限り立ち食いそば屋のオヤジ客がよく、その音を吐く。
箸でしっかり茄子を拾い上げ、香ばしさを楽しみながら、ほくほくと咀嚼し続けた。
茄子から溢れるものは、素材のうま味と味噌が同調した振る舞い。
遠い記憶の中にもそれが存在するのは母の味か?
決してメインの座になることはないが、ここに味噌汁がなければ、香川輝之が出演しないドラマ「半沢直樹」のようなものだ。
味噌汁を超える名脇役はこの世には存在しない。
最後もう一度、喉の奥から「ァッ―――」。(笑)
●茄子の味噌汁(三人前)
坊津・麦みそ 小さいホイッパーで1キャッチ
水 500~600CC
煮干し 10~15尾
粉末ダシ 少しだけ
茄子 中3個
冷凍アゲ 15個
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