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「ブラック企業の見極め方」前編

人材業界に勤めていると、よく「ブラック企業に入らないためにはどうしたら良いのか」という質問をいただきます。“ブラック企業の見極め方”をご紹介。転職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

このコラムでは、主に中途採用に関して皆様に知っておいていただきたい「採用されるコツ」を中心にお伝えしてきました。

今回から、数回にわけて「ブラック企業の見極め方/ブラック企業に入ってしまった場合の対処方法」というテーマでお伝えしていきたいと思います。

何故このテーマで書こうと思ったのかというと、「ブラック企業に入らないためにはどうしたら良いのか」と質問してくる方が一時期とても増えたから。

そして、私自身ブラック企業ともいえる会社にご縁を得て働いた経験があったからです。

「会社なんて入ってみなけりゃ実際のところよくわからないよ」という意見もありますし、「そもそもブラック企業ってどんな企業? 人それぞれ、感じ取り方次第のところもあるよね」という意見もよく伺います。


■ブラック企業の定義

厚生労働省のページには、「ブラック企業について明確に定義はしていない」ものの、一般的な特徴として、

① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う 企業のこと を指しているとの記載があります。

これらに沿って考察してみた、「すぐに実践できる、ブラック企業の見極め方」について、お伝えしていきます。


人事担当者の対応で見極める


私自身の経験をお話します。

いわゆる「ブラック企業」グループに足を踏み入れてしまったことがありました。知人から「●●区にあるフィナンシャル・グループ内の人材紹介事業を行う子会社の社長がとても良い方で、キャリアコンサルティングの実務経験がある人材を探しているのですが、笹乃さん手伝ってみませんか?」と声をかけられたのです。都心の素晴らしい眺望のオフィスで、何度か社長と面談を経て(確かにとても良いお人柄の方でした)採用されたものの、そこからの動きはものすごく鈍いものでした。


人事担当からのメールの返信のペースが異常に遅く、入社手続きに行った時も顔色が冴えません。話題がないので壁にかかっていた絵を褒めたところ、「会長の趣味なんで」とボソっと一言。この会社、大丈夫かな? と一瞬不安がよぎりました。

入社してから知ることになるのですが、彼女は会長の無茶振りに応えつつ、毎月大量の退職者の手続きに対応せざるを得ないため、ほぼ会社に寝泊まりしているような生活が続いていたそうです。私の入社手続きも「また犠牲者が出る…」と気乗りしていなかったらしいのです。

(この人事担当者は半年後にこの会社を去り、人材不足から私がグループ人事業務も任されることになるのですが…この話はまたいずれ)


キャリアコンサルタントは、常に「転職者を推薦しやすい・入れやすい」会社を必死に開拓しています。中には、いわゆる「人の出入りの激しい企業」が含まれることがあります。
ですが、その中身についてまるで吟味していない(入社した後はどうでもいいと割り切っている)キャリアコンサルタントも少ないものです。多くのキャリアコンサルタントは、転職者にその転職先で頑張って欲しい、少しでもご本人にとって良い選択肢を提案したいと願っています。

そんなキャリアコンサルタントが企業を見極める最初にして最大のポイントは「人事担当者」の対応。お人柄だけでなく、レスポンスの速さで、人事の企業に対する熱量は伝わってくるものです。お話していて、内容に血が通っているか。具体性があるか。

訪問するたびに担当者が変わっていた。ということもありましたし、「ここだけの話、自分の転職先を紹介して貰いたいです。どこかありませんか」と仰る人事も複数いらっしゃいました。こういう企業に転職者をご紹介するのは難しいな…と思ったものです。


自分自身のことは勘が働きづらい…

このように、何社もの人事と話をし、「人事を見る目」に自信があった私が、何故自分自身に起きたことには勘が働かなかったのか。
それは、「直属上司である社長が良い人柄」だったこと、グループの会長とは直接業務上関わりがないと説明されたことを鵜呑みにしたことでした。自分のこととなると、見立てが甘くなってしまうものですね。実態としては、出社初日から21時スタートの営業会議(という名の「詰め会」)に出席するよう指示され、社長を飛び越えて会長が日曜日だろうと深夜だろうと、それほど緊急性が伴うことがなくても個人携帯まで電話を架けてくるような状況でした。

時間が経った今となっては、こうした体験を共有することにより、私と同じような轍を踏まないように皆さまにお伝えできる場が持てることにとても感謝しています。


「裁量労働制」なのに勤務時間が記載されている場合


さて、人事が機能していない会社は、往々にして法令順守意識が薄い傾向にあります。
例えば、「成果を重視し裁量労働制を採用している。残業代は発生しない」という求人をご覧になったことはありませんか? 裁量労働制とは、労働時間を実労働時間ではなく一定の時間とみなす制度で、全ての職種に適用できる制度ではありません。ソフトウェア開発やデザイナー等、法律に定められた一部職種のみに適用されるものです。
一方で、「勤務時間…9:30~18:30」等と書かれていたら黄信号。そもそも裁量労働制は労働者に勤務時間を管理させる制度。時間管理も個人の裁量に任せることになるので、勤務時間帯も決められず、出退勤も自由なはずです。

これは、労働法に対する意識の薄い経営者が、労基知識の少ない労働者(特に若手)を雇用して事業を行う際に、都合の良い解釈で人事制度を作ってしまったりするような、人事の権限が弱く経営者に意見できない社風の会社で起きます。


たとえ今、いわゆる「ブラック」な社風でなかったとしても、景気後退した際にすぐにブラック企業になってしまう可能性が高い。「残業しても残業代は出ないのに、仕事が早く終わったりしても休めない」状況となってしまい、結果としてサービス残業の温床になってしまいます。

人事が経営者に専門職としてこういった問題に意見できない会社は、ブラック企業もしくはブラック企業予備軍と判断して良いと思います。


給与がものすごく高い、またはレンジに幅があり過ぎる


求人票で見極める方法もあります。給与が驚くほど高額な場合や、給与に幅がある場合(例えば、年収300万円~750万円等と記載されている)場合は注意してください。

「成果報酬型で、頑張れば頑張る程給与に反映されます!」等として設定されている場合、かなり厳しい(というか、ほぼ不可能な)ノルマをこなした場合のみ高給になるといったケースや、見なし残業手当が含まれていることが考えられます。
ノルマが達成できなかった場合、当然給与も低くなり、実際の労働時間で考えると、都道府県の労働局が規定している最低時給よりも少ない給与しかもらえていない…といった事態になりかねません。
(※ちなみに東京都の最低時給は、2019年9月現在で1,013円。2020年度は新型コロナ禍により事実上据え置きになるのではと言われています。)


いかがでしょうか。
次回も、「ブラック企業の見極め方/ブラック企業に入ってしまった場合の対処方法」についてお伝えしていきたいと思います。どうぞお付き合いください。

笹乃亜瑚

よろしければサポートを是非お願いします。現在医療介護系の人材会社に所属しつつ、これまで経験してきたことを「転職しようと思ったこともないひとたち」「転職活動したことがないひとたち」が「転職せざるを得なくなってしまった」ひとに還元できるようにしたいと思い活動を始めました。