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好きなことして生きるために必要なこと

自分の子供には好きなことして生きて欲しい。この想いを伝えることは簡単だが、そのためには何をしたほうが良いのか?とまでは深く考えていなかった。

そして、今は「学校の勉強とどう向き合うか」がその答えに一番近いのではないかと思い始めている。

僕は「学校の勉強なんて社会で生きていく上でそれほど役に立たない、それより集団生活での学び、失敗や成功の体験の方がよっぽど重要だ」と考えていたが、それも違うような気がしてきたのだ。

そう考えるようになったのは、とある人に話を聞いたからだ。

僕には少し毛色の濃い"Tさん"というエンジニアの知り合いがいる。
話し出すと平気で3時間も4時間も話してしまい、ことあるごとに「つまりね」と要約し、僕の軽快な相槌に「いや、そうじゃなくてね」と否定を挟みたがる、とぉっってもお話好きな人。わかりやすく言うと超絶めんどうくせぇ人だ。
とか言いながら、僕はこの人のことが割と好きだったりする。

とにかくオタク気質で、好きなことにはとことんハマる人なので分野は限られるが知識が突き抜けている。
あと自分の知らないことは「それ知らない」とはっきりと遮断するところもポイントが高い。

いろんなジャンルをつまみ食いして広く浅い知識しかないくせに、知ってる風を装う節がある僕には"憧れ"の存在でもある。

そういう気質の違いもあって、話を聞くと参考になる、タメになる話を聞けることが多いのだ。

何ヶ月か前のことだが、その人と話す機会があって、LINE電話で2時間ほど話した。2時間で済んだのは僕が先にケツを切っていたからだ。(それでも強制的にこちらから話を終わらせないと終わらない)

最初はエンジニア関連の仕事話をした。僕は彼よりエンジニアスキルもその周辺の様々な知識も圧倒的に劣っているので、教えを乞う形で話を聞く。
この仕事関連のありがたいお話だけだと、僕のメリットしかないので、僕が彼に与えられるのは次の話題になる。

そして次の話題は彼の恋愛事情へ発展する。
彼としては嫁と子供がいる僕の環境が喉から手が出るほど羨ましいらしい。とはいえ、恋愛の話になると立場が逆転⋯⋯とまではいかない。
僕は応援する立場に回る。
下手なアドバイスはいらない。
「とにかく話を聞いてほしい」が彼の求めることなので僕は相槌に徹するのだ。

GoogleMeetで趣味の合う子と話が盛り上がったとか、次のデートの店はこういう雰囲気にしようと思ってる、という話とか。僕は「良い出会いっすね!」「それは楽しいっすね!」「彼女が羨ましいっすね!」など、彼のモチベーションが上がる相槌を返し応援する。

何度か話しているうちに分かったのだが、相槌の精度は問題ではない。
勢いがあって、語尾に「っすね!」があればそれで良い。

なんなら「fugsjkbfgfっすね!」みたいに適当な単語の羅列でも良い。

彼は今後の展開や予測をロジカルに、自信がある風に話したあと
「いやー、でもうまくいくかわかんないだけどねぇ」と照れたように言った。
あぁ、本気なんだな。
今回の出会いを良縁として、嫁と子供のいる未来を手に入れようと頑張っているようだった。
僕はそれを純粋に応援したいと思った。

思ったのだが、やはり話が長すぎてだんだんと脳がホワホワしてきて、今晩のおかずを考えながら相槌を打つようになった。

そんな感じで「っすね!」をAIのように自動返信し、他のことを考えているうちに、ふと1つの疑問が沸いた。

「彼はどういう子育てをするつもりなのだろうか?」

僕の持っていない視点で遥かにレベルの高い知識を持っている彼の子育ては、どういう計画があるのだろうか?
彼のことだから理想の計画はあるにはあるだろう。
ぜひ聞いてみたいと思った。

彼の出会った女性の話が長ったらしくなる前に、いや長ったらしくなったので僕は会話のタイミングを見計らって
「そういえば子育て論ってあるんですか?」
と聞いた。

「僕はねー。1つだけ持ってるんだ」

即答だ。やはり持っていた。少し胸が躍った。

「えっ!まじっすか!うわー、それ聴きたいなぁ!!」

僕は今までのAI相槌とは比べ物にならないくらい熱意の入った相槌を打った。それもあってか、彼はやたら嬉しそうに

「えー、ほんとにぃ?じゃあしょうがないなぁ」
と少し勿体ぶってから

「僕はね、オタクになってほしいと思ってる」

そう言った。

「やっぱり、オタクって強いっすよねー。僕は昔からオタク憧れがあるんです。自分がすぐに飽きて他のことを手を出してしまうから」

「へぇ、なんで飽きちゃうの?」

「え?なんで?あぁ⋯⋯」

「僕は自分がオタクだからそっちの気持ちは分からないんだよね」

彼のダイレクトな質問に僕は一瞬脳がフリーズしてしまった。そう言えば、いろんなものに手を出してきたけど、自分はなぜやめてしまったんだっけ?

僕は少しだけ考えた結果、

「なんか上手くできなくなるから⋯⋯ですかねぇ?最初はけっこうスムーズに進むんですけど途中でパタっと止まるっていうか」

と答えた。

「あぁ、それはあるよね。壁にぶち当たるとき」

「それ!それですよ。Tさんでもあるんですね?」

「あるある。でも壁にぶちあたった時に何が足りないのかってのは、明確な答えがあるから」

まじか。腕を見ると鳥肌が立っていた。
この先の答えを聞けば、僕もオタクになれる。
そう思った。

ここで少し整理しておきたいのだが、僕の中の「オタクになる」というのは世間一般のイメージで言う「秋葉原に行く」というような意味ではない。

「オタクになる」=「とことんハマる脳になる」

ということだ。

そしてこの「とことんハマる脳になる」というのは「好きなことをして生きていくための必須スキル」である。

実はこれ、本当に長年のコンプレックスだった。小さい頃は成績は5段階でオール4を取るような子供で、それなりに出来るのはありがたいのだが、何かに突出できない自分をずっと変えたいと思っていたのだ。

で、その答えを彼はさらりと言った。

「周辺知識だよ。まぁ、基礎知識と言い換えても良いけど」

「はぁー、なるほど」

ちょっとよく分からなかった。

しかし、彼は根気よく基礎知識や周辺知識がなぜオタクへの道を切り開くのかを説明してくれた。

その説明を簡単に図にしてみたのがこれだ。

基礎知識・周辺知識で壁を越える


簡素な図だが、お分かりいただけただろうか?
基礎知識でぐらつきを防止して、周辺知識で土台をもっと広げる。
こうすれば、どこまでだって伸びていけるのだ。

言われれば当たり前に感じるが、僕は大事なことに気付かされた気分だった。

そして、僕はこの伸びない時期にすべてやめてしまっていたのだ。

確かに最初はやりたいことやって、グングン伸びて俺スゲーってなっていた。それもそのはずで、面倒な基礎知識を後にしていたから。問題集と答え合わせだけやって教科書や解説書を全く読んでなかった状態に近いと思う。

学校の勉強もそうだった。このやり方でそれなりの点は取れるが突き抜けた結果は得られなかった。

でも。

でもさ。

基礎知識の勉強って面倒くさいのよ。

だから僕は正直に言った。

「でも基礎知識とかって面白くないんですよね。だから僕はオタクにはなれないかもしれないっす」

「あぁ、それはね。学校の勉強が楽しくなかったからだよ」

この人は何を言ってるんだ。

「学校の勉強が面白い訳ないじゃないですか」

「そう?だって問題が解けるって面白いじゃん。分からなかったことがわかるようになる。それが学校の勉強から学ぶことだよ」

また鳥肌が立った。

学校の勉強をなぜするのか?これは必要か?と言う話ではない。

学校の勉強は、将来好きなことして生きていくための練習になる。

好きなことで壁にぶち当たって、その先に進むには基礎知識が必要。

基礎知識があれば問題があってもすぐに答えがわかる。それがメチャクチャ気持ちが良い。楽しい。続けられる。

どんどん解けてオタクになれる。

つまり、「学校の勉強とどう向き合うのか」が「好きなことをして生きるために必要なこと」なのかもしれない。
言葉にすれば簡単だが、もちろんとても難しいことはよく分かる。

これが尊敬するTさんから聞いた話だ。
もちろん個人の見解なので、万人に当てはまる答えというわけではない。でも、僕の中ではかなり参考になった話だった。

よし。将来大きくなった息子は勉強が楽しくなるような方針が良いな。
とは言え、あまり肩肘貼らずに見守ることも大切だ。

まだ1歳の息子よ。成長まってるぞ。

ちなみに今の息子に「パパは?」と聞くと

「ん"ーん”んん!!まんまんまん!」

と答える。

先は長い。

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