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一日一頁:斉藤幸平『人新世の資本論』集英社新書、2020年。

先の兵庫県知事選や合衆国大統領の選挙を見るにつけ、暗澹たる思いは隠せないものの、それでも前へ進んでいくために必要な手続きとは、お互いに関わっていくこと、それを最大限に表現すれば〈コモン〉ということになるのではなかろうか。

時間がなくても1日1頁でも読まないことには進まない。

 そのためには、国家の力を前提にしながらも、〈コモン〉の領域を広げていくことによって、民主主義を議会の外へ広げ、生産の次元へと拡張していく必要がある。協同組合、社会的所有や「〈市民〉営化」がその一例だ(第六章参照)。
 同時に、議会民主主義そのものも大きく変容しなくてはならない。すでに見たように、地方自治体のレベルでは、ミュニシパリズムこそがそのような試みである(三三八真参照)。
 そして、国家のレベルでは、「市民議会」がもう一つのモデルとなる(二一五頁参照)。
 生産の(コモン〉化、ミュニシパリズム、市民議会。市民が主体的に参画する民主主義が拡張すれば、どのような社会に住みたいかをめぐって、もっと根本的な議論を開始できるようになるだろう。つまり、働くことの意味、生きることの意味、自由や平等の意味をめぐって、オープンな形で、一から議論できるようになるはずだ。

斉藤幸平『人新世の資本論』集英社新書、2020年、356頁。


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氏家 法雄 ujike.norio
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。