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あんときのデジカメ さぬき浜街道を定点観測しながら考えたこと with SONY Cyber-shot DSC-N2

(はじめに)田舎ぐらしがよいのか、あるいは東京でくらすのがよいのか一慨には言えませんが、どこで暮らそうがそのひとはそのひとであり、相手は相手というものです。しかし、そういう認識をすっ飛ばして「よい・わるい」と片付けてしまうのは問題があるのではないか、などと2月の定点観測を行いながら考えてみました。相棒は、黎明期のタッチパネル搭載コンデジです。

ちょっと違和感

 毎月、同じコースを定点観測しているのですが、その道すがら考えたことです。

 東京で大学の教員をしていた頃、講義を担当するときには、必ず、蝶ネクタイで授業に望んでいました。別に蝶ネクタイを佩用するかどうかなんて、そのひとの個人的な趣味の問題に尽きるのですが、それでも「浮いていた」のは否定し難い事実です。

 そもそも、大学の教員というのはファッションとしてはダサい方が多く、それに対する刺激という意味と、もう一つは大衆化してしまう大学教育への反撃という意味、すなわち、その負荷は承知しつつも、プレ現代的な意味での西欧近代の大学教養教育への憧憬という意義で、そうした出で立ちにこだわっていました。

 東京であろうが、地方であろうが、この21世紀において、まあ蝶ネクタイを佩用したおっさんは、ちょっと浮いてしまいます。

 田舎へ流罪されてからの話になりますが、ロードバイクで通勤するようになり、夏場の日焼け対策として帽子を常用するようになりました。冬場は、防寒対策とちょっとしたお洒落の意味を込めてベレー帽をかぶるようになりました。これがまた「浮いてしまう」ようです。

 ひとつは、現代的な意味でのサイクリストは、エッジの効いたヘルメットにサングラスというのがヘッドギアの定番になりますから、サイクリストらしくないという話です。もうひとつは、蝶ネクタイと同じ話です。

 東京であろうが、地方であろうが、この21世紀において、まあベレー帽を佩用したおっさんは、ちょっと浮いてしまいます。

田舎がよいのか、あるいは東京がよいのか再論

 作家の村上春樹さんが、プリンストン大学に滞在していたとき、そこで考えたり、反芻したエッセイが『やがて哀しき外国語』(講談社文庫)になります。この本のなかに「梅干し弁当持ち込み禁止」という作品があります。

 そのなかで、「先日ペンシルヴェニアの大学で勉強をしているという日本人の女子学生」から「私は子供の頃アメリカにしばらく住んでいて、日本に帰ってきてからもずっとアメリカびいきだったんですけれど、今回もう一度アメリカに来て暮らしてみて、やはり日本が好きだって思うようになったんです、村上さんはどうですか」と質問されたそうです。

 それに対する答えが次になります。

 でもそんな風に訊かれても、僕としては何と答えればいいのか本当に困ってしまうことになる。日本にいたって、アメリカにいたって、生活の基本的な質というのはそれほど大きくは変わらないんじゃないかというのが僕の正直な感想だからだ。(中略)
でも僕個人に関して言えば、アメリカにいても日本にいても、生活の姿勢にはそれほどの変わりはない。アメリカにだって不愉快なろくでもない奴はいる。(中略)
でも考えてみれば、同じくらいの割合・頻度で日本でもあったのだ。

(出典)村上春樹「梅干し弁当禁止」、村上春樹『やがて哀しき外国語』講談社文庫、1997年、34-35頁。

 このことは思い返せば、よく理解できます。

 つまり、東京での蝶ネクタイというのは、前時代的という批判です。そして田舎でベレー帽というのは、田舎的でないというそれです。東京にいると、田舎はいいですよね~と言われ、田舎にいると東京はいいですよね~と言われます。そして、それと同じように、「いいですよね~」とは真っ逆さまの反応もあります。

 そういうものを繰り返して応酬されてしまうと、僕としてはどこにすんでいても「生活の基本的な質」というのはそれほど大きく変わらないことを実感してしまいます。

 そして、そのことを確認するために、定点観測しているのかも知れません。

元気な10余年前のタッチパネル搭載コンパクトデジタルカメラ

 さて、今回、いつもの定点観測コースで利用したのは、2006年製SONYのコンパクトデジタルカメラ サイバーショット DSC-N2 になります。3.0型タッチパネル液晶とマニュアルモードを搭載したコンデジで、当時としては先進性と高機能を搭載したモデルと評価できます。タッチパネルモデルは本機以降、SONYの看板モデルであるTシリーズへ、そしてマニュアルモードがWシリーズの上位機種へと継承されたと言われています。そういえば、筐体は、Wシリーズの原型のようにも見えます。

 では簡単にスペックを紹介します。撮像素子は1/1.7型有効1,010万画素CCDで、最高感度はISO1600に対応というのが目を引きます。一般的なコンデジよりも大きなCCDと高感度は高級コンデジの体で、その操作をタッチパネルで行うというのがなんともユニークです。レンズは、35mmフィルムカメラ換算で38-114mmの3倍ズームのCarl Zeiss Vario-Tesserで、全域で原色を忠実に再現する印象です。SONYの初期COMS撮像素子が原色を強調するきらいがあるのですが、それとは対照的ですね。

 さすがに製造から10余年を経たタッチパネルになりますから、スマートフォンになれた指使いで操作すると戸惑うところがありますが、いったん、なれてしまえば、非常に使いやすく、期待を裏切らないカメラという使用感です。銀塩カメラからのカメラメーカーが相次いでデジタルカメラ業界から徹底するなかで、SONYが健闘していることがよくわかります。

以下、拙い写真ですが、作例です。2月の讃岐の瀬戸内コースは海風が強く非常に底冷えのするポタリングとなりましたが、もう春の面影があらわれているように思います。


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さて、今回の撮影行で立ち寄ったのは「釜あげうどん 岡じま」さんの多度津店(仲多度郡多度津町東港町1062-1)です。もうその季節がおしまいになりかけていますが、肉入り力うどんを選んでみました。力うどんをうどんやさんで頂くのは初めてですが、なかなかいいものですねえ。

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 ということで撮影データ。プログラム撮影、ISO100、ホワイトバランスオート、露出補正なし。画像は3648×2736(FINE)で保存。撮影は2020年2月24日。撮影場所は香川県善通寺市、三豊市、仲多度郡多度津町。


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氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。