"レストランは5感覚で楽しめるアミューズメントパーク” フランス3つ星レストランで修業を積んだ 小山健太郎さん
レストランの可能性に魅了され飲食の世界に入って10年。フランス料理人として現地での経験を活かしながら、「もっとニッチなところを攻めていきたい」という野望をもち、新しいことにチャレンジしている小山健太郎さんにお話しを伺いました。
小山 健太郎(こやま けんたろう)さんプロフィール
出身地:熊本県熊本市
活動地域:東京、フランス
経歴:大阪あべの辻調理師専門学校卒業
東京 西麻布 cave de Hiramatsu
丸の内 arcana Tokyo
を経て、渡仏
フランス オンフルール saquana
パリ lecas carton
ペルナンヴェルジュレス le charlmagne
シャニー maison lameloise
で研鑽を積み、只今香港の新店舗の開業準備中
記憶に残るような空間、みんなが楽しめるレストランを創りたい
記者:どのような夢やビジョンをお持ちですか?
小山さん(以下敬称略):これをやりたいっていう夢はなくて、あえて言うんだったら、僕は店をもって自分がそこに滞在するのは50歳、60歳になってからでいいかなと思っています。今はいろんな人と協力しながら食を通じていろいろ新しいことをやっていきたいですね。
というのも、レストランだけどんどん建てちゃっているので、飲食業も人手不足なんです。しかも若いときとかすごい厳しくて給料も少なくて、夢も希望もなかなか見出すことができない職種なんですよね。よっぽど好きで入ってきた子じゃないと、結局挫折してしまうみたいなことが結構あるので。そういう人達でも夢や希望をもって働いたら料理人として輝けるんだぞって、僕たちが伝えていかないといけないと思っています。
フランスでは、料理人っていう職業自体がリスペクトされる部分があるんですよ。田舎にある三ツ星レストランのオーナーとかシェフって、もうすごい実力者で一目置かれる存在なので、それくらい日本でも飲食の地位を引き上げていきたいっていうのはありますね。若い子が進んでやりたい職業にしていきたいです。
記者:飲食の魅力はどういうところだと思いますか?
小山:僕レストランがすごい好きなんですよね。この職業に入ったときから、嫁とか彼女がいないときはレストランに行く、それしかなくて(笑)そこが唯一の楽しみだったんです。なんか、すごい楽しいんですよね、5感で楽しめる大人のアミューズメントパークみたいな。そこにすごいはまりました。
料理は瞬間芸術だと思います。音楽とかオペラとか、録音できますけどその場限りじゃないですか。その空間を提供するっていうのがレストランだと思うんですね。だからオペラやコンサートのように、1万2万とか同じくらいの料金を払ってもらって同じように感動してもらう。レストランっていうのは、本当に5感覚。5感を総動員して体感する、食べて、嗅いで、触って、そういうところがすごい魅力的だと感じます。
記者:飲食というのが、小山さんにとってただ食べるってことではなくて、5感をフル活用して楽しむイメージなんですね。それを提供するのがレストラン。
小山:そうですね。そういうレストランをベースにやりつつも、食べる楽しさっていうのを一般の家庭でもやってほしいな、広めたいなっていうのは思っています。コンビニやスーパーで弁当を買ってくるよりも、家庭で料理を作るっていう楽しさを味わってほしい。
今の時代、共働きで時間もないと思いますが、料理を作るっていう行為自体がすごい楽しい時間なので、そういうのをもっと多くの人に知っていただけたらなぁって思います。
表に立ってやらないといけない時期があると思う
記者:それを具現化するために、どんな目標・計画を立てていますか?
小山:香港で、自分が料理長でお店を成功させて話題にさせてから、人も育ててその幅を広げていけたらと思います。
計画性がないので、すごいざっくりとした目標しか立ててないです。25歳くらいでフランスに行くとか、30歳でシェフになるとか、そういった目標は立てていて、それを順々に来てる感じです。だから、明確なこれをしたいという夢はないっていうのはそういうことですね。逆に夢をこれと決めちゃうと、それで止まっちゃうと思います。だから、ざっくり海外で活躍したいとかフランスに戻りたいとかはあるんですけど、実際にそこで何をやるかはわからないです。
記者:その目標や計画に対して、現在どのような活動指針をもって、どのような活動をしていますか?
小山:僕は、その場その場でしかできないことをやっていきたくて、フランスにいた時はそこにいるときしかできない経験・体験をしようと意識していました。今は今しかできないことを。フランスにいたらフランスの雑誌を買うしフランスの本を読むし、フランスの音楽、ワイン、そこで感じたことが財産になると思っています。
今日本に帰ってきて、市場に行って自分の好きな食材とか魚とかを買ってきて試して、自分の好きなように料理したりしますね。若い時って言われたことをやることで精いっぱいなので、そういうところが成長したなと感じています。
一人前かって言われるとまだまだだと思ってるんですけど、まだまだなりに表に立ってやらないといけない時期ってあると思うので、今はレストラン全部ひとりでやってます。僕の中ではそこが自分の作った料理を出す実験場で、お客さんの反応を確認する場なんですよ。
フランス料理ってもっと自由な感じ
記者:その夢やビジョンをもったきっかけは何ですか?そこにはどのような発見や出会いがあったのですか?
小山:対面で実際いろいろな人に会って話をしていくうちにというのもありますが、SNSやインターネットの影響が大きいです。フランスに行くのって大体、現地にいたシェフからの紹介とか、あるいは確立は低いですけど何通も手紙を書いてレストランに送るんですよ。そんな中で自分でも今どきだなって思うんですけど、僕はFacebookがきっかけでフランスで働くことになりました。ノルマンディのSa.Qua.Naというレストランに行きたいと思っていたのでそこを調べたら、偶然にも日本人の共通の知り合いがいたんです。その人に紹介してもらって最初はダメって言われたんですけど、たまたま空きが出て、行った次の日から働くことになりました。
記者:それはもう、小山さんの行きたい意志ですね!
小山:いやもう、行くしかないっていうか、絶対行くって決めてたので。そんなうまくいくとも思ってなくて、正直別のところでもいいと思っていましたが、なんか通っちゃいまいたね。
記者:なぜノルマンディのSa.Qua.Naに惹かれのですか?
小山:コテコテのフレンチじゃなくて、すごい変わってるんですよ。シェフ自身がおいしい料理を作りたいっていうのがあって、多分人と違うことをやりたいんですよね。僕もそういうところがあって、似たような考え方を持つ人の料理がすごいいいなと思うんです。
記者:小山さんも、人と変わったことがやりたいというのがベースにあるんですね。
小山:天邪鬼ですね。基本的に少数派に行きたい。人と同じことをやりたくない。高校の時、9割以上が大学に行ってサラリーマンになるような学校で、面接でサラリーマン以外のことをやりたいと言って驚かれました(笑)
記者:異端児ですね(笑)日本だと出る杭は打たれるというのもありますが、そういう雰囲気に対してはどう思いますか?
小山:みんなの群がる中に行く自分が嫌でした。小学校の時、同じようにみんなで教育を受けていることに違和感を感じていました。子供ながらに、できる子はもっと先に行ったらいいのにと思っていて。
子供のころにもっと別の教育を受けていれば、もっと違う価値観を持てたんじゃないのかなと思うので、僕は子供にそういう教育は受けさせたくないと思っています。
記者:その発見や出会いの背景には何があったのですか?
小山:たぶん今は夢のマイホームっていう時代じゃないですよね。どこかに居場所を構えるより、もっとフットワーク軽くした方がいいと思っています。僕は海外へ行くのもすごい好きですし。
嫁にこういう話をするとすごく不安がられて、あなた香港の次はまたどこかに行くつもりなの?って言われます。僕は行くつもりなんですけど、フランスに行ったらアフリカもあるし、南米もあるし北米もあるし、オーストラリアも行ってみたいし、人生一回だからいろいろなところに行ってみたいなと思っています。
そこで、仕事をやって旅行で行くんじゃなくて、自分の仕事で海外に行けたらいいかなと。それが料理人の一つの強みというか、料理ってどこにいてもできるんですよ。その地域ごとに、その土地に合った食材はあるので。
フランス料理の何がいいかっていうと、自由なんですね。和食だったら出汁や醤油、味噌がないとダメだっていう。日本料理って縛りがあると思ったんです。
フランス料理の技術を学ぶことによって色々と融通がきくんじゃないかと考えました。今人気のあるシェフはもともとフランス料理を勉強していて、フランス料理っていうのを取っ払って「僕の料理です」っていうのを言えるのは、柔軟性のある技術を学んできたからだなと思います。
記者:最後に読者にメッセージをお願いします。
小山:自分の好きなことをこれからやっていく、自分の価値を高めていくことが大事なので、集団よりも個人で輝ける時代にしていこうよということを言いたいですね。会社の一つの勉強してもいいと思いますが、そこから自分できることをやって行ったら日本ももっと元気になるんじゃないかなと思っています。
記者:小山さん、本日は素敵なお話をどうもありがとうございました。
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【編集後記】
今回インタビューを担当した、坂村と竹内と澤田です。
若くして飲食業界全体のことを考え、世界を視野に入れている小山さん。お話を伺いながら、落ち着いた語り口調の中に秘めている熱い想いが感じられました。
最後の写真の分厚い本は「発酵」がテーマのもので、関心をもって勉強されているそうです。
小山さんの演出する”レストラン”に足を運んでみたくなりますね!
貴重なお時間をありがとうございました。
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