独り言
梅雨時の午後6時半のことだった。
野暮用があってコンビニへの徒歩3分の道を歩いていた。
その日は曇天で、日没が近かったこともあり、比較的心地の良い気候だった。
本当に何の変哲もない、日常の一瞬。
そのはずなのに、何か苦しかった。
不思議に思い周囲に意識を傾けると、目に映るもの全てがくすんで見えたのだ。
曇天の空。コンクリとアスファルトに包まれた灰色の町。薄く光を伸ばす街灯。
完全な灰色に覆われることなく、中途半端に色が点在しているその町の光景が、どうしても気持ちが悪かったのだ。まるで片方の眼だけが色盲になってしまったような感覚。
初めから全て白黒で構成されるモノクロの風景ならば何の違和感も感じなかったのだろう。普段なら折々の光を放つ周囲の建造物が、灰色の所為で薄気味悪く映る不思議さ。
夏特有の蒸し暑さがなく、涼しい風が吹いていたことも、気持ち悪さを増幅させた。暑さを感じればまだ死にかけた感覚を蘇生できたのかもしれない。
曇天の空に包まれた梅雨時の午後6時半。
嫌いな瞬間がこの日、新たに私の記憶に刻まれた。
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