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訳しづらいフレーズ、あるよね…

絶賛教材作成中の私でございますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

今手掛けているのが、『アゼルバイジャン語の会話文・聴解練習ブック』という類のものなのです(まだ仮題です!)が、会話の中で、買い物の言づてを頼むシーンがありましてね。

そこで、"şirin qoğal"というフレーズが出てきたのです。

şirinはまあ、ペルシア語起源でこれは「甘い」というのでいいんですが、qoğalという単語のほうに困っていましてね。具体的に何を指すのかというのは、上のようにアゼルバイジャン語のウィキペディアなどを見て見当をつけられるのですが、これをさて日本語に訳すときにどうすればいいのかという。

"şirin qoğal"の2語を「菓子パン」としてしまっていいのか、でも「アゼルバイジャンの菓子パン」とするのもどうもなあ…といって、アゼルバイジャン料理の一種ということを尊重して、そのままカナ書きして「シリン・ゴガル」と書いたところで、背景事情をご存じない学習者にしてみたらなんのこっちゃ?となるでしょうし。で、とりあえずは仕方ない…といって、「シリン・ゴガル(アゼルバイジャンの小麦粉を使った食製品の一種)」みたいに書き残してみたのですが、なんか本当にこれでええんかいな…というもやもやとした感じは残ってしまうのですよね。

この語句に限らず、日本語に直しづらいなと思うフレーズはアゼルバイジャン語でも枚挙にいとまがないのはもちろんなのですが、トルコ語にもそういうのはありますよね。たとえばdolmuşは交通手段の一つとしてよく知られてはいますが、訳してと言われたらどうするか。「乗り合いミニバス」でいいのかどうか、なんか違うな…ということになれば、そのまま「ドルムシュ」と書くしかないのでしょうが、これも先ほどのアゼルバイジャン語のşirin qoğalと似たような問題にならないこともないのかな、と思うなどします。

実際、学習者でまだトルコに行ったことがないという方にとって、dolmuşという単語に「これって何ですか」と仮に質問されたらさてどうしたものか、となりますよね?で、直接説明できるのであればこれがどういう類の交通手段なのかを説明することになるわけです。

で、私の個人的な経験だと、これが授業で脱線してしまうスイッチにもなりまして、そういう意味でもなかなか取り扱いの難しい語ということになりがちです。

まあでも、らちが明かない部分もありますからね…日本にないもの、日本文化にないものや概念がどうしてもこういった言語をやっていると出てくるわけですが、そこをなんとか伝えやすいようにするというのはもう出てくるごとになんとかしていくしかないのかなとは思います。

そういえば、アゼルバイジャン語に日本語訳をあてていて、"Çox sağ ol."という文であったり、あるいはトルコ語で"Çok teşekkür ederim."といったりします。いずれも感謝をあらわす表現なのですが、このçox/çokをどう訳すかも悩ましいなと思います。

個々の単語はよいのです。çox/çokはどちらの言語でも副詞として「とても」でよいだろうと。で、"sağ ol." "teşekkür ederim."いずれも「ありがとう(ございます)」でいいのですが、ではそのまま組み合わせて「??とてもありがとうございます」としてしまうと、日本語としてなんか変だと思いません?私の母語話者としての直観としては、かなり容認度の低い訳文になるように感じられるのですがみなさまはどうでしょうか。

で、いろいろ考えて「どうもありがとう(ございます)」みたいなところで落としどころを探るような感じの訳をあてるのですが、果たしてこれで妥当かどうか、もっとよい訳があるのかどうかとか。考え出すと意外に大変な箇所というものにたくさん出会うのが言語の世界、といったところでしょうかね…つくづく、頭を使う作業です。楽しいけど、つらい。

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