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HSP概念について〜基本的な情報まとめ〜

本記事はHSP(Highly Sensitive Person)のことを正確に知りたい
全ての方に向けて書いています。(読了目安時間:4分)


日本におけるHSP認知と現状についてまとめます。
HSPという言葉が先歩きし、返って混乱するケースが多く見られます。
HSP情報の捉え方がスッキリする機会になれば幸いです。
(2023年7月11日の記事のリライトです)

🔸HSPとは?

・Highly Sensitive Personの頭文字をとった言葉
 ※日本語で直訳すると語弊が生じるため敢えてしません

・1996年アメリカの心理学者エレイン・アーロンによって
 提唱された気質的概念 (診断名ではない)
 →感覚処理感受性として初めて世界へ論文を発表
  夫のアーサー・アーロンは”吊り橋効果”を提唱した社会心理学者

「環境感受性理論」で研究中の心理学領域
 →感覚処理感受性・差次感受性・生物感受性など
  様々な感受性理論を統合した理論

良くも悪くも環境の影響を受けやすい
 感受性が高い人(全人口上位20〜30%の人たち)
 
を便宜上"HSP"とラベルするニュートラルな名称

・心理統計を行って再現性が確認された正式なチェックリストは
 アーロン博士HPの27項目尺度
 マイケルプルース博士の感受性尺度の2つのみ
 ※上記以外は全て主観的で根拠のないものです。
  日本版HSP尺度も出てきていますが
  論文で発表されているのみで開示されていない状況です。

・感受性尺度とは、美的感受性、易興奮性、低感覚閾の3つ

「神経処理が深い」が(感覚処理)感受性の根本だが
 それを正確に測るチェック項目は未だ無し

・感情論や生きづらさを表すものではなく、
 脳神経の動きについて遺伝と環境の相互作用の観点から捉えた一つの視点

・健常群が研究対象であり、
 臨床群(病院やクリニックにいらっしゃる方)は研究対象ではない

🔸HSPを正しく認知するためのヒント

・日本では2020年6月頃より番組や本から認知が広がる
 →世界で受けたい授業(日テレ系)・「繊細さん」・芸能人の自認など

・タイプ別に分けられる傾向(HSS型、内向型、HSEなど)
 →類型論に近いが、現在の心理学上で定義される
  性格特性・パーソナリティ論に当てはめることはできない

・心理学者、研究者などが出す論文の情報に触れるハードルが高く
 エビデンス(科学的根拠)の視点が抜けやすい

・日本のSNSで発信されるHSP情報のほぼ全ては"主観的情報"で
 自分の特徴や傾向に気づく一つのきっかけにすぎない

・「HSPは〇〇」「HSPあるある」は、
 発信者の主観であって一般論ではない
 (人によるということ)

・自分と相手の感受性の違いに気づき、傾向を知る一つの視点

・条件によって感受性の出方が変わる(自分はどうなの?を知る)

・まだまだ曖昧で発展途上な概念のため
 情報を鵜呑みにせず、どう捉えたらしっくりくるかを大切に。

🔸HSP関連のリンク紹介


◾️セルフテスト(アーロン博士HP)

◾️マイケルプルース博士の感受性テストページ

(英語表記なのでGoogle翻訳などご活用ください)


◾️HSP提唱の経緯とアップデート情報
 敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術 (フェニックスシリーズ)


◾️環境感受性とは?
 Japan Sensitivity Research:心理学者によるHSP情報サイト


◾️HSPを科学的根拠からまとめられた本
 HSPの心理学: 科学的根拠から理解する「繊細さ」と「生きづらさ」


◾️日本のHSP研究について詳しく知りたい方向け
 HSP研究への招待:発達、性格、臨床心理学の領域から


🔸HSP外来 宇賀神の観点

◾️HSPと発達障害

 混同している方が多く来院されます

 →HSPは、心理学領域の気質的概念
  発達障害は、医療領域の診断名・病名

     (DSM−5-TR:精神疾患の診断・分類マニュアル・ICD-11:国際疾病分類)
       に載っているもの  
  ※DSM:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders
  ※ICD :International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems  

  そもそも視点と領域が全く違うので、比べることができません。
  HSPは診断名・病名ではないので、医師からの診断はしません。

  日本の中で、HSP(感受性の高さ)と神経発達症(発達障害の新名称)
  の関連性を示唆する研究が出てきています。
  
  表出する症状が類似しているところから、
  混同している現状があります。
  HSP外来では、脳神経の仕組みから感受性の高さを説明し
  それぞれの傾向と対処についてワークします。

◾️HSP概念の捉え方傾向


ある程度支持する人(活用派)
ニュートラルに捉えている人(傍観派)
懐疑的に見る人(否定派)

の3つに大枠分かれていきます。

医療業界の方や専門心理職(公認心理師・臨床心理士)
は傍観派と否定派が多い印象があります。

来院されるクライエントやSNS上で見かけるHSP自認者は
活用派が多数です。

そして、クライエントの働く組織や企業風土、人間関係等を見ると
感受性の高さに対する理解と配慮ができている環境は
全体の5%未満です(HSP外来 対応件数より算出)

HSP概念自体を広げるというよりは
「感受性」の違いを知ることで、どの領域や環境においても
問題解決やより心地よい空間作りに繋がっていく実感を広げたいです。


◾️宇賀神個人の視点

HSP概念は、本来自分の特性や特徴の一つの視点です。具体的な枠を示すものではなく、傾向を知るためのものとしてクリニックHSP外来では活用させていただいています。

私自身、2017年に初めて”HSP”という言葉に出会って、腑に落ちたことが多かったです。が、その当時「男性が敏感であるのは恥ずかしい」と思っていて、スッと受け入れられませんでした。

今思うのは、感受性の高さや敏感性は、身体的な反応だけではなく、その時いる環境や慣習・文化と後天的に身につけた生存戦略、愛着形成や発達性トラウマなど、さまざまな影響を受けて出てきます。

クリニックにてHSPを入口に今の症状を改善したくていらっしゃる方々
1800件以上対話してきました。(2021年1月〜2024年8月現在)

HSP情報が広がって、本来は関連のない医療現場にて問い合わせが激増しています。

今でも一定数HSP外来にいらっしゃる方々がいるのは、「HSPを知ってそれかもと思ったけど、結局自分はどうしたらいいの?」と困り果てているからです。

今広がる情報では、個人に合った対処まではフォローされていません。見た情報に当てはまっていれば安心できるけど、当てはまっていなかったらより不安になって混乱する。

HSPで困って病院やネット上で相談しているのに、具体的な対処策を提示できる人がいない(そもそも仕組みがない)というのが現状です。


個人個人がHSP認知をするだけではこうした動きは無くなりません。

なので微力ですが私は「チーム」と「横の繋がり」を基盤としてHSP概念を活用する。一人ひとりに合った対処と今の世界を心地よく過ごすための具体的道筋を見つける機会を作り続けています。

少しずつですが、同じ視点を持つ方々との関わりが広がってきていてとても嬉しいです。これからも横のつながりを広げながら、私が抱く視点を社会へ示していきます。

最後までお読みくださりありがとうございました。

宇賀神

◾️HSP外来についての記事


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