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”HSP”という言葉に触れて逆に困っている人へ

HSP(Highly Sensitive Person)概念を知ってしっくりくることもあるけど、そうじゃないこともある・・・

自分(もしくは身近な人)がHSPだとは思うけど、大っぴらに言葉にしたり表現するのはやめておこう・・・

ネット記事・インスタ・Youtube・XなどでHSPの情報をよく見るけど、何が正しいのだろう・・・?

HSPかもしれないけれど・・・結局は何をしたらいいの・・・・?
自分はどうしたらいいのか分からなくてどんどん苦しくなる・・・

HSPを理由に相談されたり、訴えてくるけど、どう対応したらいいの?

そんな方へ届けるための記事となります。


こんにちは。宇賀神です。

HSPという言葉に翻弄されている方が、クリニック「HSP外来」にいらっしゃいます。そして、僕が運営する「心の安全基地 ここ庵」の講座に参加されています。

■べスリクリニック「HSP外来」紹介サイト🔽

■心の安全基地「ここ庵」公式HP🔽

HSPという言葉の捉え方の現状


「HSPブーム」という言葉が日本で出てきた2020年〜の2年間は、自分がHSPなのか否かについての関心が強かったように思います。2023年に入ってからは、本来の捉え方である「自分の特性や特徴を知る一つ」の視点に寄ってきています。

また、精神疾患や発達障害などとHSPが混同する傾向は未だにあります。医療の世界では、世界標準マニュアル(DSM -5TR・I CD-11)に載っている「診断名」として医師が患者さんへ診断します。HSPはマニュアルに載っていないため、診断名でも病名でもありません。気質的概念としての一つの視点にすぎません。そもそも一緒に考えるものではないのですが、混同するのも無理はありません。”この症状や反応が出たら〇〇”という基準で各言葉が使われているという点において一致しているからです。

HSP概念も診断名も、本来は自分の特徴や傾向を掴み、必要な対処ができるためのものです。それなのに、言葉の影響力のままに表面的に受け止めることで、肝心の「自分に合った対処や適応」にまで行きつかない、という現状があります。

僕自身は、医療・心理の業界の中で、HSP概念軸をメインに対話をしています。より細かく言えば、「環境感受性の高さ」と「神経処理の深さ」を日常の場面と紐付けながら、その感覚が人と違うということを知る機会としています。

HSP概念について知りたい方は、下記概要記事をご覧ください。

HSPのみに関わらず、この世界に溢れるあらゆる「言葉」は、大枠の意味がありますが、その捉え方は人によってバラバラであると理解する必要があると痛感しています。HSPを「良くも悪くも環境の影響を受けやすい人」とニュートラルに捉える人もいれば、「なんか分からんけど、繊細な人でしょ?」と捉える人もいるし、「HSP?それって病気なん?」と捉える人もいるからです。”HSPだから〇〇”ということは一切ないのですが、どうしても自分の状況を伝えるためにHSPという言葉を使いがちです。(とても便利ですし、同じ感受性の幅を持つ人同士であれば伝わります)

残念ながら、HSPという言葉をそのまま使って、自分の状況が正確に伝わったケースはまだまだ少ないです。たまたま自分と同じように捉えて共感してくれて、守ってくれる人が近くにいればいいのですが、現状そう多くはない状況が窺えます。

HSP概念を活かす捉え方とは?

クリニック外来で大切にしていることは、自分に起きた事実を伝えられるようにすることにあります。

そのためには、

・自分の現在地と特徴を知る
・今いる環境と状況を整理する
・出来事に紐づく気持ちや考えを明確にする
・問題が起こった根本がわかる
・これからどう捉え過ごすかを決める

というステップを大切にしています。

相手に伝わるためには、相手が受け止めやすいようにする必要があります。自分は〇〇と感じた、という気持ちの部分は伝わりづらいです。よく見られる反応は、人前で意見を言おうとするたびに涙が出てくる・威圧的な態度や大声に萎縮してしまう・マルチタスクを抱えると抜けてしまう・苦手な人の近くでストレスや身体反応(腹痛・頭痛・吐き気など)が起こるなどがあります。その気持ちや反応自体をどれだけ言葉にしても、そうなった背景や度合いがわからなければ、相手はピンとこないのです。だからと言って、すんなりとできることでもありません。自分がある場面でどんな気持ちを抱いていたのかについて、自覚して味わうというステップを踏むことで、俯瞰して自分の状況を理解することができます。(逆に言えば、俯瞰して自分の状況を把握できない時には、うまく伝えることができない状況であるとも言えます。)

伝え方の一例を記載します。

ちょっと指摘されると涙が出てきて仕事にならないので辞めたいです
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指摘される時に私は責められているように感じて悲しい気持ちがします。その気持ちを感じた時に涙が出てきたり、腹痛が出てきます。家に帰ってもそのことを思い返されて夜も眠れなくなります。これらが繰り返されて仕事に影響されていることがわかりました。普段なら指摘されないように注意していますが、5つのタスクを同時に持っているので、意識しきれずにやるべきことが抜けてしまいました。これからは、1つずつ集中して取りめるようにしたいです。

ここまで具体的に起こったことの事実と今後の対策まで伝えられると、相手はイメージしやすくなります。そして相手がどう立ち回ったらいいのかが明確になるので、必要支援を受けやすくなっていきます。実際のクライエントさんとの対話でも、一緒に考えながら、伝える相手の性格や立場などを踏まえて伝え方を組み立てていきます。

ここまでお読みの方は薄々気づいているかもしれませんが、HSPという言葉自体に意味をなさない、ということです。上記の一例のように、自分に起こっている現状から、どう今の状況や症状につながっているのかを明確にすることで、今の環境に適応するための対処策が見えていきます。

HSPという言葉を使っている情報はこれからも溢れた状態が続くと思っています。その時に意識したいことは「その言葉や奥の真意にしっくりくるか?」ということです。”納得感”と言ったりもします。同じようなことでも、誰が言っているのかで受け止め方が変わることがあると思います。それは、言葉自体ではなく、奥にある意図・思い・価値観が紐づいているからです。

HSPという言葉にどのような過程で出会ったのか?しっくりポイント、違和感ポイントは何か?自分に合った捉え方は人それぞれです。

僕自身はあえて「HSP」という言葉からこうして伝えています。それは、HSP概念が提唱された経緯を深く知って感動したからです。具体的に言えば、感情論ではなく、身体論であること。脳神経学・生物学・歴史文化学などの研究者の見解から「感受性=Sensitivity」という新しい領域を生み出してくれたから。長年かけて明らかにしてくれた敬意と感謝の思いがあるからです。日本においては、最先端の研究や情報は後追いになります。クリニック臨床現場の視点とどう掛け合わせたら、HSP概念を活かした支援ができるのか?と常に考えています。

支援者の皆さまへ

冒頭に書いたことは、実際に僕の元に来てくださった方々の声です。HSP概念自体が曖昧な状況ですので、自然なお声であると思います。僕自身クリニック勤務させていただいてから3年が経過し、1300件以上の事例を担当しました。クリニック内だけでは、求められるニーズに対して対応しきれないとひしひし感じています。そんな思いから、最近Xにて音声配信をしました。

2023年に入ってから、同じ価値観を持つ、異業種の皆さまとの横のつながりを広げています。これからは、同業の方々(医療業界・心理業界の皆さま)との繋がりも広げていきたいと考えています。

HSPという言葉自体というよりも

・自分のペースと環境や組織から求められているペースにギャップがある
・感受性の高さゆえに細かいことを受け止めすぎてしんどくなる
・HSP情報や診断名に翻弄されて自分に必要な支援や対処が見えなくなる

などの課題に対して、具体的な対処法を見つけ実践する機会を提供したいと考えています。

同じ課題感を抱えている支援者の方や、僕の思いに共感くださる方がもしいらっしゃったら、繋がりたいと考えています。(各SNSでのコメント・DMどちらでもお知らせいただけたら嬉しいです。)

普段はこのような言い方をすることはないですが、久々に長文記事を書くにあたって明確にしたいことでしたので、言葉にさせていただきました。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

宇賀神


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