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もうすぐ今日が終わる。やり残したことはないかい?

 昨日、勤務校の卒業式が行われ、生徒たちが高校から巣立っていきました。どんな時でも別れは寂しいものです。一日経って心にはぽっかり空いていて、今日一日はぼーっとしてだらだらと過ごしていました。

 初任から1年生(入学)→2年生→3年生(卒業)→1年(入学)・・・、というサイクルを3度繰り返していました。そして10年目となった今年、初めて2年連続で3年生を受け持つことになりました。

 1年生から3年生まで持ち上がる場合、知っている生徒がたくさんいます。また1年毎にクラス替えはあっても、基本的に当該学年の授業をメインで担当することが多い。そのため、お互いに顔と名前も一致していて、どんな人や知っているわけです。

 しかし、今年はそうではありませんでした。僕は部活動の生徒以外とほとんど触れ合うことがなく、授業も持っていません。生徒も学校ですれ違ったことがある程度で僕のことを知りません。4月の始業式、お互いに「初めまして」の状態から始まりました。

 高校3年生っていうのは、とてもとても大事な1年です。もちろん、他の学年も大事なのですが、卒業した後のことを考えると、高3の担任には決して軽くない責任や役割があると思っています。高校教員、特に私立で大切なのは「出口」です。一人ひとりが、高校のその先の進路に向かうための手助けをどれだけできるにかかっていると思っています。

 勤務校では、ほとんどの生徒が大学に進学します。将来をイメージさせる進路指導、多様化する大学入試への対応、確かな学力を身に付けさせる授業。学校行事とかはもちろん大事。でも、特に3年生は進路。こう考えています。

 3年生の1年間は短いんです。長期休暇と3学期の登校日を考えると、実質は半年くらいしかありません。そんな中、僕の目標は「生徒全員を希望する進路に導くこと」と決めて、ほぼ初対面の生徒たちに始業式で宣言しました。

 高校3年生でいきなりほとんど知らない人が担任になること。生徒にとっては不安だと思うんです。僕が同じ立場だったらそう考えるから。良い先生ってどんな先生でしょうか?行事にも一緒に全力で関わってくれる先生?親身になって相談に乗ってくれる先生?生徒目線で考えてくれる先生?ノリがいい先生?答えは人それぞれで良いと思うんです。教員によって考え方は違うので。これまでは1年から3年まで持ち上がりだったから、全部に力を注ぐことが出来た。でも今年は違いました。限られた時間の中で、自分の中で優先順位をつけなければいけなかった。もちろんイベントも全力で楽しんだんですが、頭の中で常にその目標を念頭に置いていた。

 正解がどうであったかは分かりません。後悔もたくさんあります。でも、先生ってなんだろうって自分自身に問い直した一年でした。何事も時間が経つと慣れてきて、疑問を感じなくなります。どうすれば彼らが良き進路に向かえるかと考えて行動したことで、教師の役割や学びについて改めて考えました。それは紛れ間もなく彼らのおかげです。だから教員をやっていてよかった。

 本番。めっちゃ緊張していましたが、本番の呼名は間違えずに終わることが出来ました。いつもよりも大きな声。震えなくてよかった。

 卒業式が終わって教室に帰ってからの最後のHR。たった1年、実質半年。最後になって悔しさがこみあげてきた。もっと一緒にいたかったよ。クラスの時間も行事も放課後の時間も授業も僕には全然足りない。関わりたかったんです。

 でも、皆笑顔で温かく迎えてくれた。11か月前の緊張していた顔はもうどこにもない。1年という短い時間でいつの間にかもう大人になっていた。高校生って凄いんです。僕らの想像なんてはるかに超えていく。

 担任としての最後の話。皆の真剣な顔を見たら、涙がこみ上げてきた。歳をとると涙腺は緩くなるんだよって言ったら笑ってた。

 もうすぐ今日が終わる やり残したことはないかい
 親友と語り合ったかい? 燃えるような恋をしたかい
 一生忘れないような出来事に出会えたかい
 かけがえのない時間を胸に刻み込んだかい

 https://youtu.be/Vb50GwvHH14?si=oA3XrESghV2IMVvD

 
 大好きな曲を紹介して、少しだけ唄わせてもらった。誰にでもある後悔もやり残しも、それぞれにとって忘れないかけがえのないものなんです。それは短い時間しか関わっていない僕にとってもそうだった。

 卒業生を出して心に空いた穴は、一生ふさがりません。どうなるかわかりませんが4月にはまた新たな学級を迎えるでしょう。でも、代わりなんていないんです。僕の心に空いた4つ目の穴はずっと大事に取っておいて、時々懐かしくなって思い出して、その時の糧にする。

 卒業おめでとう。ありがとう。

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