目標というものは本来自ら立てるべきものであって人に強制されるものではない、という話。
人事をやっている人にとって「MBO」というキーワードから連想するのは「人事評価」である。
社員の評価を実施する上で、何の基準もルールも設けないと評価結果がカオスな状態となり社員にとっても納得感がない。
私の過去の勤務先では、全ての社員の評価はオーナー兼社長が行っており、「〇〇くんはがんばってるから〇万円昇給ね。」と、毎年数百名の社員一人一人の給与査定を実施している企業もあったが、今思うとレアな環境だったな・・。
MBOとは「Management by Objectives=目標管理」の略語として広く認知されていて、かのドラッカーによって提唱されたものである。
期初に定量・定性に関わらず目標を設定し、評価期間が締まってから目標に対する到達具合で評価を実施する手法。
多くの人事マンが考えるMBOの概念って、大体こんな感じかと思う。
しかし、実はMBOの正式名称は「Management by Objectives and Self Control」なのだ!
尚且つドラッカーが提唱していることからお分かりの通りMBOは人事評価のための手法ではなく、あくまで経営手法なのである。
その名の通り、目標(Objectives)と自己統制(Self Control)を組み合わせた経営手法なのである。
人間は自ら考えた目標を掲げることで、自己統制が発揮され、目標の達成に向けて最大限の努力ができる。
結果として企業の業績向上につながる。
MBOはこの人間観が基礎に置かれている。
組織が社員をコントロールするよりも、社員が異なる個性を強みとして活かしながら自律的に働くことで企業や組織を目標達成へと導く。
さすがドラッカーさん。半世紀以上前の書籍の中で、なんて現代的な思想なのだろう。敬服の念に堪えませんな。
一方で、話を最初に戻すと、日本においてMBOは人事評価の手法として普及している。
もちろん広い意味では人事評価も経営手法に内包されるため、活用の仕方が間違っているわけではない。
しかし残念ながら、多くの日本企業のMBOって「Self Control」が欠落してはいないだろうか?
日本企業において目標は「ノルマ」という捉え方をされがちである。
会社から強制されている感、丸出しである。
どこで誰が落としちゃったのか、Self Control・・・
製造業で国際的競争力を取り戻した戦後の日本において、国力向上のKSF(Key Success Factor)は「国民の勤勉さ」であった。
拘束時間の中でサボらず、与えられた業務を誠実に・黙々とこなす。
ノルマがクリアできていなければ残業だって厭わない。
そんな社員が評価されてきたのが、日本。
元々の国民性と、敗戦からの復興を遂げようとする熱量が掛け合わさることで高度経済成長期がもたらされ、そんな社員たちのおかげで一気に国際社会の主役となった日本。
当時の経営手法としてはむしろSelf Control人材は我の強さや主義主張は悪と捉えられ、煙たがられたのではないだろうか。
よって、日本でMBOが広まるころにはSelf Controlという考え方は歓迎されず、管理者側にとって都合の良い日本式MBOにすり替わったのではないかと推察する。
しかし環境変化が激しく正解のないVUCAと呼ばれる今の時代である。
日本にもSelf Control人材が必要であることは言うまでもない。
今こそ私たち日本の人事マンはMBOの根源に立ち返るべきなのだ。
目標管理を見直そう。
社員個人の目標は社員自ら考えるものであり、会社や上司から強制されるものではない。
自律的な人材が不足していると嘆いている経営者の方、人事の方。
嘆く前に自社の目標管理を点検してみてほしい。
Self Controlが欠落してはいませんか?
最後に念のため補足しておくと、会社は組織であり個人ではない。(当たり前の話ではあるが)
よって、全社の目標・部門の目標など組織目標は各組織の上長が立てるべきである。
大切なポイントは、いくらSelf Controlとはいえ社員個人が会社や所属する組織の目標とベクトルが全く違う目標を立てることは避けなければならない。
よって、必要になってくることは会社や組織の目標とのすり合わせであり、ビジョン・ミッション・コアバリューの明文化と浸透である。
スポーツで言えば、フィールドとルールと道具は決まっていて、チームの目指すべき方向性も決まっており、その中で選手が自ら目標を掲げプレーに邁進するイメージである。
そう考えると、プロスポーツ選手は例外なくSelf Control人材であることは必然なんだなと今更ながら気が付いた。
そんなこんなで、目標というものは本来自ら立てるべきものであって人に強制されるものではない、という話でした。
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