基準を設けることの大切さと息苦しさ、という話
豚骨ラーメン屋の大将からの学び
先日視聴したテレビ番組にて、とある豚骨ラーメン屋の大将がこんなこと風なことを言っていた。
初めて入ったラーメン屋であるにも関わらず、多くのお客様が麺の固さについて「バリカタ」とか「カタ」を指定してきますが、
これは大きな間違いです。
まずはその店のおすすめの硬さで食べるべきです。
なぜならその店ごとに麺も違うし硬さの基準が違うからです。
一杯目おすすめの硬さで食べてみて、替え玉をする際・もしくは次回の来店時に自分の好みの方に調整すればいいんですよ。
なるほどね。と思った。
無類の麺好きを自負する私。週1回はラーメン屋の暖簾をくぐる。
初めて入った豚骨ラーメン屋さんでも必ず一杯目から「カタ」で注文する。
でも、確かにその店で定められている「カタ」の基準と他店のそれとの間には乖離があるかも知れない。
私の求めている本当の「カタ」には生まれてこの方出会ったことがない可能性だってある。
基準というのは人間が考えた便利なツールなのだが、その尺度は実にバラバラなのだ。
ステーキでも同じことが言える。「ミディアムレアの基準ってなんなん?」ってこと。
組織マネジメントにおける「基準」の課題
組織マネジメントの観点からも、多くの企業で実施しているであろう目標管理と人事評価において、同じ課題が出てくることは人事もしくはマネージャーを経験している方には共感いただけるだろう。
目標設定の際も、評価の際も、基準は実施者の主観に依存するため放っておくと見事にバラバラになる。
しかも、目標設定においては設定と承認・人事評価においては自己評価と上長評価と、登場人物が本人と上長という2軸になるため余計にややこしい。
(ラーメンだと分かりづらいので例えを変えて)山登りで例えてみる。
①山頂を目指している人と②5合目までを目指している人が居たとして、二人は同じ能力を有しているとする。
結果6合目まで登れたとした場合、前者①は「目標大幅未達です・・・」と悔しがり、後者②は「目標達成率120%です!!!」と喜びを爆発させるであろう。
しかし、山登りのシェルパ役の上司がどの高さを目指しているかによって上記の評価は変わってくる。
上司が5合目を目指していた場合:よくやった!120%(①にとっては意外な結果)
上司が山頂を目指していた場合:残念、大幅未達・・(②にとってはショックな結果)
このようなことが個人単位・チーム単位・部門単位で起きるのである。
カオス以外の何物でもないし、人と組織の成長・業績向上に寄与するのか非常に疑わしい状態であると言える。
このような状態になることを避けるために、目標設定・評価を実施する際にモノサシとなる客観的基準を設ける必要がある。
また、目標設定の際はSMARTの法則というフレームワークを使用することが効果的である。
以下ChatGPTからのコピペ
このように、客観的な基準を設けることで目標設定・評価においてある程度足並みを揃えることができ、スムーズに事を運べるようになるのだ。
基準があることの息苦しさ
はい、これで目標管理も人事評価も一件落着ね!と言いたいところであるがそんな簡単なものではない。
基準って便利で大切なものだけど、基準が設けられた途端に息苦しさやつまらなさを感じてしまう人材が出てくるのである。
この現象は、心理学では「制御焦点理論」として明らかにされている。
制御焦点理論とは、目標を追求するときの心持ちを「促進焦点」と「防止焦点」という2つのタイプに分類した理論であり、
人間は目標を追求するときいずれかのタイプの心理に基づき行動をすると説明されている。(下図参照)
大学受験を例にすると、
「偏差値追い付いてないけど、希望する大学に行きたい!」という心持ちで勉強に励むのは促進焦点であり、
「浪人したくない、受験に失敗して親に怒られたくない」という心持ちで勉強に励むのは防止焦点である。
誰もが心理として両方のタイプを持っており、状況や環境によってどちらのタイプで目標を追求するかを無意識に選択しているそうだが、基本的には多くの人がどちらかのタイプに傾いている。
さて、皆さんにとって仕事の捉え方はどちらが近いだろうか?
仕事は自分が面白いと思うことを追求したり、理想を実現するためのもの(促進焦点タイプ)
仕事は自分が果たすべき責任を全うし、周囲からの期待に応えることが重要(防止焦点タイプ)
先に説明した目標管理・人事評価の際基準を設けることによって、息苦しさやつまらなさを感じるのは、言うまでもなく促進焦点タイプの人材である。
外れ値こそがイノベーションの源泉
基準を設けると、基準値に準拠した人材が評価される作用が促進されるため、基準からはみ出さないことを目指す防止焦点タイプの人材は安心して仕事ができる。
一方で、基準を大幅に逸脱した外れ値を目指して大胆にチャレンジをしたい促進タイプの人材は、基準が設けられた途端に息苦しくなり、仕事に魅力を感じなくなる。
もっといえば、促進焦点タイプの人材は評価されなくなる可能性が高い。
促進焦点タイプの人材が除外されるような組織が健全なのかと言えば、全く賛同できない。
発明の世界でも企業活動の世界でも、外れ値こそがイノベーションの源泉であることは明白である。
基準を設けることは促進焦点タイプの人材によるイノベーション創出機会を阻害することにつながるのだ。
それでは、企業活動において促進焦点・防止焦点双方の人材が活躍できるような仕組みとはどのようなものだろう?
私の考えでは、基準を設けることは大切ではあるが組織単位のミッションや職種により遊びの幅を設けておくことだと考える。
例えば防止焦点タイプの人材が多いコーポレート部門においては目標管理・人事評価における基準が明確に有った方がよさそうだ。
促進焦点タイプの人材が多いデザイナーや企画系部署などクリエイティブな部門においては基準を設ける項目と自由に目標を想い描ける項目を分けておくといいだろう。
目標管理や人事評価はあくまで手法であり、目的は企業活動において人と組織の成長とパフォーマンスの最大化であることを忘れることなく、人事マンとして歩んでいきたいものである。
以上 豚骨ラーメンの一杯目はお店のおすすめの麺の硬さでいただきましょう!という話でした。
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