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会計学の基礎

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#IFRS

その資産は本当に資産として相応しい?費用化の意味と「のれん」について考えてみよう。

その資産は本当に資産として相応しい?費用化の意味と「のれん」について考えてみよう。

財務会計論で使っている講義用の資料からの転載です。一部手直ししながら載せておきます。

今回のポイント:
 ・資産性と償却(費用化)の意味を考えよう。
 ・「のれん」の会計処理を巡る考え方の違いを理解しよう。

1.    その資産は本当に資産として相応しい?

資産とは企業が支配し、便益を享受できる経済的資源です(概念フレームワークを確認しましょう)。しかしながら、貸借対照表の項目においては、「

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市場の機能の重要性:エンフォースメントから考える

市場の機能の重要性:エンフォースメントから考える

これまた、IFRS17論文のこぼれ話、です。

保険契約を保有する事業体、つまり保険会社の財務状態、経営成績を統一的な基準で測定するIFRS17保険契約

これは現在適用が免除されてるIFRS9金融商品と同時に適用されることから、保険会社の貸借対照表(IFRSでは連結財政状態計算書ですが)、損益計算書がガラッと変わることになります。

つまり、B/Sの資産、負債側も時価を基本として評価されるという

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レジェンド問題から考える財務諸表を取り巻く環境の変化:基準重視から、情報作成のプロセス重視へ

レジェンド問題から考える財務諸表を取り巻く環境の変化:基準重視から、情報作成のプロセス重視へ

レジェンド(legend)問題

もう昔のことのように思えますが、1999年、日本の企業が作成する英文のアニュアルリポートに添付される監査報告書に

「日本の会計基準および監査基準に基づいて作成されている」旨を記載することが求められていたことをご存知でしょうか。

レジェンド問題はその後、日本国内の会計基準及び監査基準の改訂により解消されました(2004年3月期に消されたようです)。

会計基準、

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会計基準とエンフォースメント体制

会計基準とエンフォースメント体制

『エンフォースメント』

IFRS研究においてはキーワードとなる用語です。

IFRSを適用してもエンフォースメント、つまり基準適用の実施体制が適切な形で機能していなければ、質の高い情報にならない、と考えられているからです。

エンフォースメント体制がIFRSの適用の質を決めるという話が今では常識的な話になりつつあります。

例えばGlaum et al. 2018は、エンフォースメント体制を「の

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未実現損益問題をIFRSと日本基準を比較しながら考える:ソフトバンクグループを事例に

資産負債アプローチ、いわゆる資産と負債を時価評価しその差分を成果とみるやり方(ざっくりいいますと)が主流になっています。

日本基準においてもIFRSのコンバージェンス(IFRSの基準と近づける動き)をしていますので、当然、これに応じた基準改定が行われていきます。

2020年4月以降の以降の事業年度から、時価算定基準が変わります。

図解されていますので、ぜひこちらを参照していただければ。

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『財務会計は公益のためにある』~学生からの質問に答える~

『財務会計のどこがポイント、大事なところなんですか?』

学生にこう聞かれました。

いい質問だな・・・と思いました。

そういえば、こちらにもまとめてました。

読み返してみると自分が当時考えていることがわかりますね。

ですが、今、はっきりとわかってきたのは、

『財務会計は公益のためにある』

ということです。

公益(パブリックインタレスト)は、「社会一般の利益。公共の利益」、ですね。

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概念フレームワーク、企業会計原則の意義

概念フレームワーク、企業会計原則の意義

1.企業会計制度全体を意識する総論の重要性を最近感じています。時に盛り上がりすぎて、個別の議論ばかりに終始しがちな私ですが、常に企業会計制度全体を意識して話をすることの重要性を感じています。

そのために、まず重要になるのは概念フレームワーク、企業会計原則を理解すること、ですね。

というのも会計基準は複雑化しています。そうした中で元となる考え方、基本を押さえておくというのが勉強、理解の近道になり

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資産除去債務(後編)IFRSと日本基準適用企業の事例をみてみよう

資産除去債務(後編)IFRSと日本基準適用企業の事例をみてみよう

資産除去債務の基本的な考え方、会計処理について理解を深めてきました。ここで事例にいきたいと思います。

考え方、会計処理が分かったとしても実際の企業の事例を見ていないと面白くありませんし、実践的でありません。企業の処理および開示事例をみて理解を深めることが大事です。

会計学の学習においてはこうした図が大事であると思っています。

各論を触れた後に、実際の事例を通じて理解を深めていく、イメージを固

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資産除去債務(前編)企業が求められている環境債務が分かる

資産除去債務(前編)企業が求められている環境債務が分かる

1.資産除去債務:固定資産の処分・除却に関する費用のれんを含む減損の話は、かなりダイナミックな話ですが、地味ですが、大事なお話にも触れたいと思います。

資産除去債務、です。

資産除去債務とは何ぞや?

いわゆる固定資産の取得、建設、開発、使用によって生じうる、将来発生する可能性のある除去(資産を取り除く際に発生する)に関連する将来債務のことです。

私はこう見てても負債の研究家!です。

保険

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