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居酒屋のカウンター越しに、人生を見る


先日出張先の仕事終わりに居酒屋に1人で行った。
友人に誘いをかけても良かったのだが、なんとなく面倒で、1人で開店と同時に行った。

1人で行くと、まずカウンターに通される。
ラッキーなことにカウンターの端の席に座れ、目の前には30代前半くらいのキッチンで料理を作るお兄さんがいた。

私は目の前で働いてる人を見るのが、好きだ。
相手は見られて嫌かも知れないが、こちらはリラックスモードで見るのでいろんなことが見えてくる。

仕事ぶり
手先の動き
周囲への配慮
スタッフとの会話
道具の使い方
作業時の物音

等、色んな点を見ていることに自分でも驚く。

このお兄さんは、私の「見立て」によれば、こんな人だ。

・年齢30代前半
・この仕事歴5年くらい
・顔はいかついが心は優しい
・頼られると嬉しいタイプ
・几帳面
・将来店を持てるタイプ

と、勝手に当たってるかどうかわからない、確認しようもない、「見立て」を書いてみたが、私がカウンター越しでこんなことを考えているなんて、思いもよらないだろう。
このお兄さんとは、料理を渡してくれる時以外話をしてないのだから。

やがて他のお客さんが入ってくる。

少し年齢を重ねた女子達の女子会
20代のカップルが2組。

若い女性2名に、この女性達に働いて欲しい男性(完全なる妄想だが)男性、(少し夜の匂いがした)、たちがやってきた。

カップルの女性の方は、この居酒屋がまあオシャレな街にあるため、
おしゃれをしてきているが、この居酒屋には合わない。
今流行りの、袖がバルーン型のトップスにロングのフレアスカート、という出立ちで、違いと言えば、服の色と彼女達の顔くらい、と言うほど、似ている。

もしかすると「マッチングアプリ」で出会った人たちだったかも、、、
『男子ウケする服装」とかになっているのだろうか?

いや、少なくとも1組は既に二、三回あってるっぽい雰囲気だった。
2組の女性の服装がほぼ同じなのは、流行というものの凄さを感じざるを得ない。

安くて、まあまあ美味しい郷土料理っぽいものを出す店に連れてこられた女性の反応は微妙だ。

やっぱり男性には初回デートで「安い居酒屋」はやめてほしいよね、と女性達に同情する。

彼らと私との距離は少し離れていたので、話しは聞こえない。
それ故に、彼らがどんな職業に就いてるのかもわからない。
ただ、仕事終わりではなく休日の早い時間に居酒屋に来ている人たちである、ということは、普通の会社員なのだろう。
美容師とか、アパレル販売などの一見オシャレな仕事に就いてる人たちは、日曜日の早い時間に居酒屋に来ることはできないだろうから。

普通の会社員が普通の会社員に出会って、普通の結婚をしたいと望んでる人たちなのだろう。
こういう普通と思われている人たちは、どんどん減っているように感じていたが、このような居酒屋には多い客層なのかも知れない。

そして目の前のキッチンの男性の奥には、40代前半くらいの男性が、1人色の違う制服を着て料理を作っている。
この店の店長だろう。

放っている空気は、ピリッとしていて、金髪で、昔ワルやってました、という感じもあるホールの男子達も一目置いているのがわかる。
この店長がいるから、この店はまとまっている。そんなオーラがある。

若手の社員達の中から、この店長のような頭と人柄を兼ね備えた人材が出てくれば、経営者は安心だ。
店は、人が支えているのは間違いない。

結局仕事なんてなんでもいいんだと思う。

面白そうと思ったらやってみたらいいし、合わないと思えば別の仕事をすればいい。
働く必要があるなら、職場に必要とされて、尊敬できる人がいて、なんらかのスキルが習得でき、苦にならない仕事ならなんでもいい。

その後そのスキルで独立してもいいし、ノウハウを売ってもいい。
(自分で習得したノウハウだけど)

一度身につけたスキルは誰にも取られないし、食はどんなに時代が変わっても、人間が必要とするものなのだから、このお兄さん達の未来は明るい。

目の前のお兄さんもあと10年後、今とても丁寧に一つ一つの仕事をしているおかげで身につけた技術と味を、店主になってお客さんのお腹を満たしている姿が浮かんできた頃に、(要はほろ酔い状態)店を出た。


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