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帰国2週間後も、和食欲は続く


世界一周ファーストクラスの旅48日間を終え、2週間が経過しました。
体調調整は終わり、あとはなぜか鼻声が残っております。

鼻声になると、少し女っぽい声になるので、それが足りない私にはちょうどいいか、と思ったりしております。

心配していた「嗅覚」、つまり匂いも戻ってきて、以前のような「犬並み」の嗅覚にまでは戻っておりませんが、おそらくこれも女っぽい鼻声が消滅すると同時に復活する見込みです。
(ただの根拠のない予想ですが)

高熱時は、38.5分まで上がったものの、すぐに下がり、翌日また上がるという、不思議な熱でしたが、この間でさえも「旺盛な食欲」は絶えることなく続き、すぐ近くにあるスーパーに毎日買い物に行き、目についた食べたいものを次から次にカゴに入れ、キッチンで3種類からとった出汁でお味噌汁を作り、煮物を炊く、という、とにかく自分の「和食欲」を満たすためだけに食事を作り、満足してすぐに眠り、お腹が空いたら、時間は関係なく食事を作り、満足して眠りにつく、を繰り返していました。

ただし、「和食限定」です。
世界一周の48日中、5日間はロサンゼルスの従姉妹の家に宿泊し、従姉妹の日本人のお嫁さんが毎日和食を出してくれていたおかげと、ダブリンとメルボルンでは和食のお店にありついたので、40日間ほど和食を食べられなかった記憶が残り続けているのでしょう。

帰国1週間経過後、ようやく睡眠時間が元に戻ったものの、「パンなんて一生食べたくない」
「洋食なんて、見たくもない」という気持ちは持続しており、ひたすら「うどん」「そば」
「しょうゆラーメン」(もちろん出汁たっぷりで、インスタントではなく、添加物がほぼ入っていないのを、デパートで見つけた)という麺類がレパートリーに入ったものの、和食を食べ続ける日々でした。

朝は沖縄もずく
梅干し
3種類で出汁をとって作ったお味噌汁
海苔
白菜のお漬物
からしたかなのお漬物

これに前日に作った、鶏の団子鍋、鶏インチのハンバーグ、(洋食ではなく、ほぼつみれ状態)
蓮根とこんにゃくの煮物、甘鯛のフライ(甘鯛のフライは、私の人生最後の晩餐でも食べたいほどの母直伝の料理)、などが日替わりで加わります。

3日ほど前から、完全復活を感じてからは、朝ごはんに「卵焼き」が加わりました。

その理由は、「大根」

ピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、
少々長い話にお付き合いください。

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この時期、大根が野菜コーナー、野菜やの店頭に並びます。
一本買って帰っても、炊く、おろす、サラダなど、活用方法はいくらでもある大根ですから、
1本100円で売っていた日には、必ず買って帰ります。
(福岡ではこのくらいの値段で買えます)

そうして、大根との日々が始まります。

でも、一番使いたいのは、大根おろし。
大根おろしは、苦い、辛い、と思っていて、得意でない人も多いでしょう。
私も実はその一人でした。

しかし、大根おろしの概念がガラッと変わったのは、私がまだ20代で、客室乗務員という仕事を目一杯楽しみ、バブル真っ最中の頃に遡ります。

当時福岡ベースで仕事をしていた私にとって、福岡市中心地の「天神」は「庭」でした。
先輩や後悔と一緒に、足しげく通い、狭い路地、屋台ですら、どこに何があるかを
知っているつもりでした。

そして、私たち全国の有名グルメを知り尽くしている客室乗務員が、お昼に和食が食べたい、と思った時に行っていたお店が天神にありました。

今は天神ビッグバンとやらで、改装されているため、無くなってしまった「天神コア」というファッションビルの地下一階にそのお店はありました。

昼は定食
夜は居酒屋になる、洋風ビルにある、少しおしゃれな、若い女性も入れる雰囲気のお店でした。
カウンターがずらっと真四角になっていて、テーブル席が少し。
私たちはもっぱら、少しテーブル席に座っていました。

サラリーマンのおじさんたちが、カウンター席に座って、美味しい定食をかき込むのを眺めながら、です。

そう、私たちは「普通の仕事」とは違って、平日休みが多いので、ランチタイムにも混雑するとか、お昼休み時間がなくなるから、慌てて食べる、という経験は「地上」では一切ない生活でした。

その代わり、フライト中は会社から支給される、70%は決しておいしくはない「クルーミール」というお弁当を、お掃除のおばさまたちの清掃中に、ほこりにまみれながら10分で食べるというより、お茶で流し込むという技を新人のうちに習得することが必須科目のような日々でしたが・・・

その居酒屋には、10センチ幅の白木の板にメニューが墨で書いてありました。

記憶は薄らいでいますが、
「焼き魚定食」
「焼肉定食」
「しょうが焼き定食」
「幕の内弁当」

など、和食を頭に描いて出かけて行った脳には、刺さりまくりのメニューが並んでいます。

私は北九州の人間らしく、「焼き魚定食」が好きで、「塩サバ」「あじの開き」などが大好物。
お魚も綺麗に骨を外して食べることも、得意な方だと思います。



バリの「ワルン沖縄」で出された塩サバ 美味しかったー

その焼き魚定食は、ご飯、お味噌汁、時期のお魚、お漬物、そして「卵焼き」がついていました。
2切れくらいなのですが、味は「出汁卵焼き」で、決して甘すぎない、でもしょっぱくもない、
硬くもないし、中にはしっかり火が通っている、絶妙な卵焼きでした。

焼き魚もですが、この卵焼きを私たちは楽しみにしていました。

最初は食通の先輩に連れて行ってもらい、この卵焼きを見た時、衝撃を受けました。
卵焼きの横に「大根おろし」があったからです。
私の実家にはない習慣でした。

何度もこの店に来ている先輩を見ると、その大根おろしに「醤油」をかけています。
九州特有の、少し甘いお醤油です。

私も真似をして、三角形に形取られた大根おろしに醤油を少しかけ、見よう見まねで、卵焼きの上に大根おろしを少しのせ、一気にほおばります。

思わず、目を閉じ、全てに感謝しました。

あごが外れるほど美味しい、とは、このことだと思いました。
あっという間に食べ切り、二つ目の卵焼きを大事に大事に、大根おろしと共に食べました。

「美味しいですね」

それしか、言葉を知らないのか、と自分で突っ込みたくなるほど、でも本当に美味しい卵焼きでした。

それ以来、何度その店に通ったでしょう。

ある日、その店が無くなっていた時には、どれほどショックだったでしょう。

それでも、私の脳はあの美味しい卵焼きを記憶していて、自宅で何度も何度も、あの卵焼きに似せて作り続けています。
味は近づきましたが、あのお店の卵焼きの通りにはなっていません。

ただ、それを救ってくれるのは、「大根おろし」です。
卵焼きを作る直前に、大根をおろし金でおろし、卵焼きが完成したらその横に多めに載せる。
そして、醤油をかけ、卵焼きに多めに大根おろしを載せ、一気に頬張る。

二つ目は、一気に頬張った後にご飯をかき込む。

至福の時です。

その大根が、この時期店頭に並ぶのです。
大根を見たら、卵焼きを思い浮かべながら抱えて帰り、その夜または翌朝には卵焼きを、卵2個を使って作る。

こうして、2日連続で朝ごはんに卵焼きが並んでいるのです。

(トップの写真は、世界一周で訪れたバリ島のクタにある
「ワルン沖縄」で注文した卵焼き。大根おろしがあったことに、
感動でした。美味しかったです!)



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