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親孝行の真似事


2022年に父が亡くなり、母一人になった。
まあ、近くに住んでいるし、きょうだいはもっと近くに住んでくれているので、心配はない。
歩行が若干困難になってきたが、それ以外は今のところ持病も落ち着いている。

そんな母の誕生日がきた。
父が亡くなって、自由を謳歌しているので、おそらくストレスはほとんどない生活を送っているようだ。
しかし、もう「モノ」のプレゼントは欲しくない、ということで、普段は行かないホテルでの食事に誘った。
素晴らしい景色と美味しい食事。
ゆったりとした気分で、非日常を味わってもらうという作戦は成功した。
ホテル側が、写真を撮り、それを台紙をつけてくれるサーブスにも喜んでいたし、薔薇の花一輪のプレゼントもあった。きっとこの思い出は、母が元気な限り残り続けるだろう。

「モノより体験」と言われるようになって久しい。
今回の母の誕生日は、まさに「モノより体験」。人が亡くなるときに、ものは何一つ持っていけないが、(棺に入れるなどは別として)思い出は持っていける、と聞いたことがある。
死ぬ直前まで意識があれば、「あの時は楽しかった、美味しかった」と思ってもらえたら、誘って良かったな、と思える。

両親が私にしてくれたことに比べたら、私がしていることは何百分の1のお返しに過ぎないと思うが、生きていてくれるからこそ、親孝行の真似事もできる。
父も母が喜んでいるのを見て、多少羨ましく、しかしきっと喜んでくれているだろう。

母の日や誕生日などモノを贈る人が多いと思うが、年齢を重ねれば重ねるほど、もうモノは必要なく、その代わりに子どもと一緒の時間を過ごすことの方が、親にとっては嬉しいことなのかもしれない、と思った1日だった。


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