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読書感想文「君たちに明日はない」


以前書いた読書感想文は、好評をいただきとても嬉しかったので、
第二弾を書きたいと思っていたが、なかなかの時間が必要で書けなかったことと、どの本にしようか、と悩んで今日に至る。

最近電子書籍で、ばんばんと飛ばすように(ちゃんと読んでるけど)
小説を読み漁っている。
電車で涙した小説もあった。
(昔から好きだった小説熱は、年を経ても全く衰えず、さらにヒートアップ
していると思う)
それらも紹介に値するものだけど、(上から目線でごめん)やはり私は、
好きな小説を何度も何度も読み返すタイプで、お気に入りの本はボロボロに
してしまう性質なので、何度も読み返している本がいいだろうと思い、
選んだのがこれだ。

「君たちに明日はない1ー5」

時代的には少し前になるが、第一巻は2007年、リーマンショックの前年、
大企業も含めリストラが横行していた時代に書かれたものだ。
企業がリストラをする際に、面談をする。
その面談から、退職、その後のフォロー(一応形式的にはやっていたようだ)
までを、一括して請負う会社の一人の30代男性、リストラ請負人が主人公だ。

1から5には、あらゆるリストラを依頼した会社が登場する。
実在の会社と思わせるような、実際にあった出来事とリンクさせて
書いているゆえに、「そんなことあったよな」と思わせてくれる。
さらに、そこで働くリストラ候補の社員も様々だ。

男性主人公ともう一人派遣社員として雇われている、超絶美人だけど、
掴み所のない、感覚だけで生きている20代秘書的女性の存在も面白い。
(川田 美代子)
基本的にこの2名とリストラ候補の社員は面談をするのだが、この空間での
やりとりがすごい。
30代男性主人公は、チャラい雰囲気があるが、実際にはかなりできる男性で、
仕事を受けた次点から念入りに一人一人の社員のデータを集め、準備をし、
どこをどう突いていくかの段取りをして面談に臨む。
とりあえず面談にいけと、上司に言われたからきたリストラ候補社員は、
全く歯がたたない相手だ。

そして彼は、相手の微妙な部分を瞬時に見抜き、仮説をたて、的確な質問を
していく。
リストラに追い込むというよりも、その人の立場にも立って、この状況の中で
この人がどうしたら一番いいのかも、実は考えていて、最後の最後に「
他の社員は決してやっていないこと」を続けていたことがわかる。

それは、彼をリストラした立場でありながら、その後彼をスカウトしたこの「
リストラ請負会社」(社名は「日本ヒューマンリアクト(株))の社長
(高橋 栄一郎)の影響による。
この社長もまたキレものだけど、温かい人間味がある。

30代男性主人公(名前は村上真介)は、高橋社長を尊敬していて、
でも決してべったりな関係ではないところも、いいな、と思う部分だ。

私がこの本をおすすめするのは、全ての仕事好きな人、採用担当者、会社員、
個人事業主、経営者の一部の人たちだ。
会社員の人は、自分の会社と照らし合わせて読むと、客観的に自分の会社と
自分自身を見ることができるだろう。

個人事業主の人は、この真介の仕事の仕方は、組織の一員だけど一人でも
十分にやっていける資質と能力を持っているので、その仕事の仕方が学びになる。

経営者の一部の人は、この高橋社長の社長像が役に立つのではないか、
と思うからだ。
社員を信頼し、大事なことはしっかりと嘘偽りなく伝え、社員を大事にする。
あるリストラされた男性から、真介が街中で襲われるシーンがあるが、
その時一緒にいた高橋は真介に「どうする?訴えるか?相手のこともわかっているから、訴訟費用は会社の経費だ」というようなことを聞く。
(原文のままではない)

結局真介は、訴えないのだが、こんなことを社長に言われたら、
この社長にずっとついて行こうと思うのではないか、と思ったからだ。

真介がリストラ候補として面談した年上女性を、彼女にしたり
(規定違反ではない範囲で)またこの彼女も只者ではない。
真介の友人として登場する男性もすごい。

とにかくみんな個性派で、みんな仕事好きなのだ。

私が繰り返しこの本を読んでいるのは、「面接指導」をする立場としても
役立つし、「やっぱり仕事っていいよなー」と思うからだろう。

そして、どんな性格、どんな仕事をしていても、そこに「人間としての軸」
が明確な人たちばかりだから、好感が持てるのだ。

「自分を持っている人」というのは多いかもしれないが、それを貫き通す人は
案外少ない気がする。
人間だから、私も迷ったり、揺れたりするが、そんな時この本を読むと、
軸がシャンともう一度立てられる気がするのだろう。

この本を紹介するにあたって、第四巻がなくなっていることに気づいた。
内容をAmazonで確認したら、確かに読んだことがあるのに、捨ててしまったのを思い出した。
本棚を整理していた時に、個人的には四巻があまり面白くないと思ったようだ。
この中には、出版社の女性社員、そして客室乗務員もいるのにだ。
(JALの破綻時に書かれているらしい)
早速再度Amazonで注文して、第四巻も手元に置いておくことにしたのは、
言うまでもない。
本代をあまり気にせず(600円くらいだから)買えるのは、
本好きにとってたまらない幸せだ、と感じながら、この読書感想文を書いた。

前回に引き続き、「仕事好きな人必見」の本をおすすめしている私も、
かなりの仕事好きなんだな、と改めて思う。

次回は、ちょっと違うタイプの本を紹介できたら、と思っている。

ちなみにこのタイトルは、「俺たちに明日はない」をもじっているのだと思う。
https://g.co/kgs/w5oWve

読書感想文の本は、こちら。

君たちに明日はない第一巻
(五巻まであります)

君たちに明日はない (新潮文庫) https://amzn.asia/d/93AqJsh


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