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大切なものを発見した日


失くしてしまったかもしれない書類を真剣に探していた。
候補の場所は、3つ。
その場所を、一つ一つ念入りに見る。

あった。

やっぱりあった。

なくしたりしないよね。こんな大事な書類、って、
さっきまで真剣に探していた自分を、
棚の上に上げ、さらに奥に押しやって、
自分を褒める。(呆れる)

ふとその同じ場所に、見つけた。
私が人生で一番辛かった時と、
2番目に辛かった時のことを書いた、
手書きの原稿用紙が。

書いたことは覚えていた。
ただ、何度も断捨離したことで、
私は捨ててしまったのではないか、
と恐れていたのだ。
でも、あった。
ちゃんとあった。

恐る恐る読んでみる。

一番辛かった時のことを、
冷静に読めるのか自信がないから。

1ページ。
2ページ。

チクっとする。
でも大丈夫。

3ページ。
4ページ。

え、こんなこと言われた?
私、こんな風に思ってたんだ。

辛いことほど、記憶から消去している。
まさにその部分を、
パズルのピースをはめていくかのように、
記憶が完全な形になっていく。


そのうち、痛みは期待に変わった。

「これは、小説のネタだ」と。

そう思えた時に、
私はこの人生一辛い経験を
完全に自分から独立させ、
一つの物語として見ている自分がいた。
そして、昇華させるべく、小説に活かすと決める。

残るは、寿命との戦い。
命ある限り書くことは決めているが、
命あるまでに書きたいこと全てを
書くことができるか、の勝負だ。

いや、もう勝負はやめたんだった。
何ものとも戦わない、と決めたんだった。

大丈夫。絶対に全て書ける。
人生は、そうなっている。
最後に帳尻がきちんと合うようになっているんだ。


おまけ

この原稿用紙は、日頃から
「なんでも思ったことは書いとけ」
「日記でもいいから残しておけ」
と言っていた、亡き父の教えを、
私が素直に聞いたおかげだ。


自分と似ている部分が多かった父のいうことは、
割と素直に私は聞けた。
何せ、誕生日がまるっきり一緒なのだから、
当然と言えば当然なのかもしれないが。

改めて父の偉大さに感謝した。
世間的に偉大ではなくても、
私にとってはなくてはならない人だった。
父の娘でよかったと、天に向かって手を合わせた。


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