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GRPIモデルでチームビルディングをふりかえる

こんにちは。HR Tech企業で組織開発・人材育成をやっているうえむらです。本記事ではチームビルディングについて私が実践してきたことをふりかえっていきます。

誰のための記事?

  • チームをより良い状態にしたいと思っているすべての人

  • リモートワークでのチームビルディングに興味がある人

  • これからチームリーダーになる人

はじめに

青田努さん(@AotaTsutomu)が主催する「組織行動論」おすそわけ勉強会(2024年度)にGW明けから参加しています。

いまは第1回 チームビルディングと心理的安全性(前編)が終わったところ。まだはじまったばかりですが勉強会からは良い匂いがプンプンしており、はやくも参加して良かったと思っています😊

勉強会では青田さんからの講義に加え、参加者同士の「おすそわけ」、すなわち参加者の経験を持ち寄ってふりかえることで学びの富の総量を増やすというコンセプトが掲げられています。とても素敵ですね✨

私自身もこれまでエンジニアリングマネージャーとして、あるいは人事としてチームビルディングと向き合ってきた経験をふりかえる良いきっかけとなりました。そして折角の機会なので「おすそわけのおすそわけ」になればと思い、記事を書くことにしました。

(※勉強会の内容そのものは有料コンテンツとなるため本記事内では直接触れません。)


チームビルディングの定義

はじめにチームとは何か、チームビルディングとは何かについて簡易的な定義を示しておきます。

  • チームとは: 合意形成された共通のゴールを達成するために、互いに協力しながら計画的な活動を推進する集団のこと

  • チームビルディングとは: 単なる集団やグループをチームに変えるための終わりのない改善活動のこと

GRPIモデルとは

GRPIモデルは組織開発家でMITの非常勤講師でもあったリチャード・ベックハードによって提唱されたチームビルディングのためのモデルです。

「Goals(ゴール)」「Roles(役割)」「Processes(計画)」「Interpersonal relationships(関係性)」の頭文字を取って命名されています。読み方は「グリッピー」です。語感がかわいいですね。

GRPIモデルをチェックポイントとして参照することで、自ずと目指すべきチームの定義も見えてきます。

  • Goals: チームに共通のゴールがあるか

  • Roles: ゴールを達成するための役割が定義され、個人の資質にあった役割分担がなされているか

  • Processes: 目標達成に向けた計画、仕事の進め方、ルールが定められているか

  • Interpersonal relationships: 良好な人間関係が築かれているか

チームリーダーだけがGRPIを意識するだけでは理想のチームは作れません。重要なのは、GRPについてメンバー全員の合意形成ができていること。そしてI、すなわち関係性をベースとすることでチームメンバー間の意思疎通が取りやすくなり、円滑に合意形成がなされるようになります。その結果としてチームメンバーの貢献意欲を引き出すことができるというわけです。

GRPIについては組織開発の専門家こがねんさん(@jibunhack)のnote記事でもチームビルディングで意識すべき最強のフレームとして紹介されています。こちらも合わせて読んでみてください。

私のチームビルディングをふりかえる

ここからはGRPIモデルに沿って、私がこれまでに経験してきたチームビルディングについて振り返っていきます。GRPIは上から順番に合意形成することがポイント(特にGRP)。本記事でもG→R→P→Iの順で見ていきます。

Goals ~チームの目標・ゴールの合意形成~

前提として、私が所属する企業ではMBO(Management by Objectives and Self-control)による目標管理制度を運用しています。MBOにおいては上位組織と目標が連動していることが求められますが、同じくらい重要なのがメンバー自身の自律的な貢献をいかに引き出すかという点になります。以下の記事を参照頂くと目標管理をより深く理解できるのでおすすめです。

目標設定はチームビルディングのスタートラインとも言えます。チーム全員が心から達成したいと思える目標を立てることが理想ですが、実際には多くのリーダーが頭を悩ませているのではないかと思います。はい、私もその一人です。

目標設定のチェックポイントとしてはSMARTがあまりにも有名ですが、ことチームビルディングにおいてはサイバーエージェントの曽山さん(@SOYAMA)が提唱した「IMPACTモデル」が効果的かつ分かりやすくおすすめです。

Inspiring(ワクワクするか?)
Memorable(覚えられるか?)
Praiseworthy(感謝されるものか?)
Achievement(成果物が想像できるか?)
Contribution(貢献につながるものか?)
Timely(今の目標として適切か?)

目標のIMPACTモデル

上記のような目標設定のフレームワークを用いることに加えて、私はチーム目標のたたき台を持ち寄ってメンバー全員と話し合う機会を設けるようにしています。これは決定事項としてチーム目標をいきなり降ろすのではなく、未確定の段階で目標設定に関わることで、決定後の目標に対してより主体的に関わることができるためです。もちろん最後に目標を決定する責任を持つのはチームリーダーですが、その過程にメンバーを巻き込むことはチームビルディングにおいても重要な点であると考えています。

目標設定においてもう1点重要なのは目標に立ち返る機会を日々の活動に埋め込むことです。書籍『チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方』ではチームワークを生み出す行動原理のひとつに「Goal Holing」という概念が挙げられています。これは期間を通じて目標を握り続けることでチームメンバーが目標を見失うことなく成果に集中できるという考え方です。

私自身はチームでのふりかえり会のなかで「自身の活動がチーム目標にどのように貢献しているか」という設問を設けることで、忙しい日々においても定期的に目標に目を向ける機会をつくるようにしています。

Roles ~役割分担の合意形成~

次はRolesについてみていきます。チーム目標を達成するために、役割を明確にすると共に、誰がどの役割を担うかについて曖昧さや責任の重複がないようにする必要があります。チームメンバーが共通のゴールに向かってコミットしている状態をつくるために役割分担は欠かせないものとなります。

Role & Responsibilityを明文化する

私の所属する組織においては、組織目標を達成するために必要な役割をマネージャーが設定し、それを元にチームリーダーと共に話し合い、役割を決定しています。その上で、各役割に対してどのような責任を持たせるかをチームリーダーを中心に決めていきます。

ここで重要なのはいきなり人に役割をアサインするのではなく、まずは役割に焦点を当ててメンバー全員で話し合うという点です。役割を起点として考えることで、チームメンバー全員がチームに存在する役割や責任と向き合う機会が生まれます。

また役割に人をアサインする際には、できるだけ1つの役割に複数人の担当者をアサインし、主担当と副担当を分けるようにしています。基本的には主担当の業務に取り組むことにはなりますが、状況に応じて他メンバーのサポートに入ることで、他メンバーとの協力関係が生まれやすくなります。

最終的にRole & Responsibilityはスプレッドシートなどでいつでも見える場所に置いておき、自分以外のメンバーが何を担当しているかをオープンに見えるようにしています。また役割分担は定期的に見直すことが重要です。特定のメンバーに負荷が偏ることを防止することができるためです。

Processes ~仕事の計画・進め方・進捗の合意形成~

次はProcessesです。仕事の計画についてはMBOを活用し、期初にざっくりとしたアクションプランを立てておきます。また期中に定期的にふりかえりとリプランニングを繰り返していきます。進捗共有については週次のチームMTGの中で定型フォーマットに沿って確認を行い、それとは別に必要に応じて個別相談の時間を設けています。

また上記とは別に、少人数のチーム単位でデイリーチェックインを実施しています。この会議では日々の進捗報告を行いますが、メンバー同士での雑談やコミュニケーションを取ることも重視しています。これは私のチームがリモートワークで運営していることに関係しています。リモートワークにおいては雑談機会を意図的に設けることにより、メンバーのコンディションの機微が共有されたり、メンバー同士の関係性が自然とケアされる効果があるためです。

先に挙げた書籍『チームワーキング』においてチームワーキングを生み出す行動原理のひとつに「Task Working」という概念が挙げられています。これはチームメンバー全員がゴールに向かって動きながら課題を探し続ける姿勢を意味します。

進捗報告などの定例会議の場は、ともすると定型的なアジェンダに終始しがちな面があります。もちろん定型的なアジェンダをこなしていくことは重要です。チームにリズムをもたらし、当たり前のことを当たり前に実行できるチームになれるためです。その上でチームメンバーが今のチーム状態や業務プロセスに目を向け、上手くいっていないことはないか?という姿勢でチーム課題を点検する機会がチームビルディングにおいて重要な役割を果たしてくれます。

Interpersonal relationships ~関係性の合意形成~

最後にInterpersonal relationships (関係性)についてみていきます。

書籍『チームワーキング』においてもチームワーキングを生み出す3つの行動原理の最後のひとつは「Feedbacking」となっています。

チーム研究でも、チームメンバー同士がお互いに知識・理解・認識を共有し合っている程度(メンタルモデルの共有度)がチームのパフォーマンスに影響を与えることが指摘されています。

チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方

Feedbackingにおいては耳の痛いことも含めて、自分が何を感じているかを、相互に伝え合うことが重要とされています。こうした関係性をつくるためにキーとなるのが心理的安全性という概念になります。心理的安全性は「おすそわけ勉強会」の次回のテーマとなるため、本記事では割愛します。

お気づきの通り、実はここまでに触れてきたGRPのいずれのフェーズにおいても、メンバーとの話し合いが登場しています。関係性といえば対話会やワークショップなどの企画が思い浮かぶかもしれません。たしかに関係性を高めることを目的とした場の設計は重要です。しかしそれ以上に、私はチーム活動の中に対話機会を埋め込むことが重要であると考えています。

なぜなら関係性は多くの場合、時間をかけて少しずつ深まっていくものであるためです。チームにおける日常の中で関係性を少しずつ積み上げていくことができれば、目標達成に向けての活動の中で自然と関係性についても合意形成がなされていきます。

おすすめの方法としては定期的にチームでふりかえりの場を設けることが挙げられます。個人のふりかえりに加えてチームメンバー同士でフィードバックし合うことで関係性づくりの場としても機能しやすくなります。

ふりかえりのフレームワークはKPTをはじめとして様々なものがありますが、チーム結成直後など関係性づくりに注力すべきフェーズにおいてはFun / Done / Learnというフレームワークがおすすめです。

  • Fun --- 楽しかったこと

  • Done ---完了したこと

  • Learn --- 学んだこと

おすすめする理由としては、タスクよりも個人に紐づくポジティブな感情にフォーカスしやすいこと、チームメンバー同士で賞賛し合うのに適していることが挙げられます。何より楽しさを感じられると思います😊

またメンバー同士の関係性がそれなりに深まった状態でもう一歩踏み込みたい場合にはキャリア観を共有し合うこともおすすめです。

自社では上司と部下でキャリアについて対話する「Career Interview」という人事施策を全社で実施していますが、その際に作成している「Career Discovery Sheet」をチームメンバー全員で共有し合う会を実施したことがあります。普段は聞けない話や人生観に近いような話がポロっと出てきたりもして相互理解が深まる場となりました。

おわりに

本記事ではGRPIモデルに沿ってチームビルディングの取り組みをふりかえってきました。みなさんもぜひGRPIに沿ってご自身のチームビルディングを振り返ってみてください。

記事を書くきっかけとなった「おすそわけ勉強会」はまだ始まったばかり。次回以降も楽しみです。今回のように「おすそわけのおすそわけ」となる記事も引き続き書いていければと思います。

またチームビルディングに関連する書籍として、5月末から6月にかけては中原先生の『リーダーシップシフト』が、池田先生の『チームレジリエンス:困難と不確実性に強いチームのつくり方』がそれぞれ出版される予定となっています。私はいずれも予約完了しており正座待機中です。チームビルディングについての知識をアップデートできる機会を楽しみにしています。

本記事を通じてチームビルディングを実践されている方とつながるきっかけが生まれると嬉しいです。興味を持って頂いた方はXなどでお気軽にご連絡ください。

それでは、また。

うえむら(@Uemura_HR

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