見出し画像

タイの島に隠れたリトルフランス

私は今、フランスの企業で働いていますが、その前に日本企業から2年間、別のフランス企業に赴任したことがありました。とても楽しい2年間でしたが、その後、帰任し日本に1年ほど住んでいた頃の話です。
楽しかったフランス生活が終わってしまい、久しぶりの日本の働き方にも馴染めず、さめざめと職場に向かう日々。週末は、フランス語の語学学校に行き、渋谷のBunkamuraでフランス映画を見て、1階にあるカフェ、レ・ドゥ・マゴでカフェラテすすりつつ、雑誌ELLEのパリ特集を読む。なにか違う。日本で思いっきり、フランスっぽいことやってみたけど、コレジャナイ感。私が好きなフランスはこれじゃないのよー!

そんなとき、赴任先の元同僚のフランス人一家が、夏休みを一緒に過ごそうと連絡をくれました。行き先はタイ。日本とフランスの中間地点で落ち合おうと提案されました。
友達のフランス人一家とは、バンコクで合流して、向かった先はパンガン島。初めて聞く場所だったので、事前にGoogleで調べると、世界中からバックパッカーが集まる、フルムーンパーティで有名になった島だということがわかりました。えぇー!?そんなパーティアイランドに行くの!??

バンコクから寝台列車で12時間、そこからフェリーで5時間。ほぼ丸一日かけてやっとたどり着きました。飛行機を使えば、バンコクから3時間ぐらいで行くことも可能なのですが、道中を楽しむのも旅ということで、このルートになりました。さすがフランスは3週間のバカンスなだけあって、時間に余裕がある旅行行程です。当時、私は日本企業に勤めていたので、そのうちの1週間だけご一緒しました。

パンガン島の中でも、フルムーンパーティで有名なのは島の南側。私達は、北西の海岸沿いに泊まりました。そして、到着して衝撃。フランス人だらけなのです!ホテルやレストランは、まるでフランスがそのまま移動してきたかのよう。経営者もフランス人、表示やメニューもフランス語。
聞けば、フランスのセレブ達の間で流行りはじめた場所のようです。元同僚も、超セレブのパリジェンヌの友達からオススメされて知った、といっていました。アジアの島国に、こんなリトルフランスがあったとは!

画像1

フルムーンパーティ名物の飲み物、バケツカクテルはこんな感じで売っています。全部バケツに入れて、みんなで回し飲みするのだそう。私達は飲みませんでしたが…。

画像2

その夏、フランスの海では、スポーツ用品店Decathlonで発売されたばかりのフルフェイスのシュノーケリングマスクが大流行。友達一家も、ひとりひとつ持ってきていました。私も借りて身につけていると、それを見たフランス人から「どこで買えるの?」とフランス語で聞かれるのです。タイのビーチにいるのに「フランスのDecathlonで買えるよ」という会話はなんともおかしい。

画像3

画像4

フランス人一家と旅行していて気づいたこと。それは、フランスには取り分け文化がないということ。アジア人であれば、何種類も違うものを頼んで、みんなで大皿つつき合いますよね。彼らはそういったことに慣れていないので、各自が食べたいものを注文するのです。ちなみに、フランス人は辛いものが苦手。そのため、頼めるメニューも限られてきます。

せっかくなので、色んなものをちょこちょこ食べたい私は、アジアの取り分け文化を何度も力説しました。毎回「あぁー、そうだよねー。」とわかったような反応をしつつも、頼む段階になると、私以外の全員がタイ風の焼きそば、パッタイを頼むという事態に。注文を取っているタイ人の店員さんも何度も確認してきます。「本当にパッタイ5個でいいのね?」と。辛いものが好きな私は、取り分けサイズの大きなトムヤムクンをひとりで食べました。あぁ、色んな味試したかったよぅ。

画像5

ここは、フランス人にとってのハワイみたいなものなのかもしれません。ハワイには日本人がたくさんいますが、それの逆転現象が起こっているのです。アジアの島に、フランス人がたくさん。ハワイはフランスから見ると、地球の真裏に位置しています。日本でいうところのブラジルみたいな距離感。そのため、フランス人にとって、ハワイはあまり馴染みのある場所ではありません。南国であり、異文化も楽しめるという点でも、日本人にとってのハワイに近いものだと思いました。
かくして私は、タイという日本からも遠くない場所で、思いっきりフランス気分を満喫したのでした。

そういえば、うちの近所のマッサージ屋さんには、フランス人セレブに人気のタイの超高級スパリゾートホテル「Chiva-Som」をもじったと思しき名前がついています。お金がないけど海外旅行がしたくて、近場で安いという理由でタイを選んで旅行していた学生時代。フランス人に向けては、高級なリゾート地という顔を持っていたのです。まだまだ知らない世界があるものです。

※追記:他にも旅行記を書いているので、ぜひ!



この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

もし面白いと思う記事がありましたら、興味ありそうな方にご紹介いただけたら、とっても励みになります!記事のシェアが一番のサポートです!