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フランスで保育ママ制度を利用する我が家が、ロックダウン中に感じたこと(後編)

前回の続きです。
フランスでは、保育ママは保育園よりも昔から存在していたそうです。
仕事に復帰したとき、職場の還暦前のおじさんに、「保育ママさんに預けているなんて、古風だねぇ!」といわれました。
フランスで保育ママが、国としての制度として整えられたのは、今から40年以上も前の1977年。そのときから、保育ママは国家資格になり、国の法律によって、きちんと管理されるようになりました。そして、免許を持っている保育ママを雇う場合は、国からの助成金も出て、その上、税制優遇も受けられるのです。
でも、このようなシステムが40年前に出来上がるよりも、さらに昔から近所の子供好きのおばちゃんが子どもたちの面倒をまとめてみる、という習慣があり、その頃の保育ママはnounou(ばあや)と呼ばれていたと、そのおじさんは教えてくれました。
今でも、資格を持っている保育ママは、Assistant maternelle agrée、無資格でも子どもの面倒を見ている人をnounouと呼びます。(保育ママの総称としてnounouという言葉を使うこともありますが。)

預け先を保育ママにすると腹を括った後、また悩みがやってきました。復帰の時期です。
フランスでは、産前休暇は6週間、産後の育児休暇は10週間、この期間の給与は、満額ではなないのですが、ある程度補償されます。それ以降も、子どもが3歳未満までは、無給にはなりますが、育児休暇を延長することができます。
私のまわりのフランス人のほとんどは、給料補償される期間に、有給休暇を少し足して、子どもが生後3ヶ月過ぎぐらいで職場復帰しています。日本の私の友達は、子どもが1歳を迎える前後に職場に戻ることが多いようです。

フランスに住んでいても、日本のサイトやブログの情報に踊らされる私。ネットで「職場復帰、理想的な時期」などをキーワードに、検索の手が止まりません。お母さんとなるべく長く一緒にいるのが一番、まだ小さいうちに人に預けるなんて可哀想、などの育児評論をみて凹む日々。フランス式に生後3ヶ月で預けて仕事に戻ってしまって良いのか、日本の友達のようにせめて1年は一緒にいた方が良いのか…。まだまだちっちゃな娘をみると、罪悪感が押し寄せます。
フランス人に聞いてみたところで「あなたが良いと思うことをやれば良いのよ」と。それがわからないのよー!何が良いかがわからない!私が欲しい答えを誰かちょうだーい!
結局、そこに尽きるのです。自分の選択は間違っていなかったと、納得できる情報が欲しいのです。たとえ選択肢がなかっとしても。

最終的に、こんな私を救ってくれたのは、私の昔のメモに残っていた言葉でした。私の出産当時から更に3年前、同じくフランスで働く日本人女性デザイナーとして先輩にあたる方が、話してくれた内容を書き付けていたのです。今はすっかり疎遠になってしまって、連絡先もわからないのですが、出会った頃に、ちょうど出産、職場復帰されたところでした。日本から来たばかりだった私は、フランス式の産後すぐの職場復帰に驚き、色々と質問をしたのです。そして、久しぶりにそのときのメモをみつけたのです。
そこには、「保育士や保育ママさん達はプロなんだから、プロに任せて悪いことはない」という言葉が。これこそ、私が探し求めていた、ずっと欲しかった言葉でした。「母親と長く一緒に過ごした方が良い子に育つのかしら…?」というモヤモヤがスーッと消えていきました。きっと、これから娘を預かってくれる人は、少なくとも私よりも子どもを扱ってきた経験があるのは間違いないし、何よりそれで対価をもらってきているのだ、と。
そういえば、彼女も時間の融通が効くからという理由で、保育ママを利用していました。そのメモによると、「もっと一緒にいる時間があった方が良いかと、一時期、時短勤務を試したけれど、子どもが自分といる時間、つまらなそうにしている。一緒にいても、ちゃんとかまってあげられないから、結局通常勤務に戻した」とも。

前置きが長くなりましたが、今回のロックダウンで、まさにそれを痛感したのです。この2か月ちょっと、朝晩ずっと一緒に過ごしてみて、私達と過ごす日々は、娘にとって楽しいものであったといえる自信がありません。夫婦共に日中は在宅勤務なので、YouTubeにお世話になりっぱなし…。
タタさんの家には、たっくさんのおもちゃがあり、広々とした公園にも毎日連れて行ってもらって、お絵描き、工作、粘土、季節のアクティビティも充実しています。ふだんの一日の流れは、午前中は、児童館や、図書館、体育館、保育ママ協会の施設に行って遊びます。お昼前にタタさんの家に戻ってきて、お昼ごはんを食べた後は、お昼寝です。午後になって起きたら、おやつを食べて、お天気が良ければ公園へ。保育ママ同士、自分達が預かっている子供達を集めて集団で遊ぶ日もよくあります。

もし、私が働いてなかったら、どうだったかも少し想像してみました。
私の性格的に、子育てはこうあるべきという理想と、現実的に自分ができることとの乖離に悩んでいたと思います。悩みや葛藤を抱えつつ育てるよりも、人に預けることで、今は笑顔で育てられていると思えます。

今回、一緒にいれて一番良かったことは、彼女の言葉の習得過程を見れたことでした。生後3か月から、朝晩は私達と日本語、日中はタタさんとフランス語の生活です。2言語あるせいで、やや混乱しているような気がしていました。それが、この2か月間、日本語のみの生活で、どんどん言葉が出てくるように。ちょうど月齢的に、そういう時期だったということもあるかもしれませんが、絵本を読んであげれば、冒頭部分は丸暗記してしまったり、どうぶつカードをみせれば、どんどん単語を覚えていきます。イヤイヤ期にも突入しましたが、ハッキリと日本語で何が嫌か言えるようになり、なかなか感慨深いです。日本語漬けの日々を過ごせたことは良かったと思います。
ただし、YouTubeをみすぎているので、語彙や動きがキッズYouTuberのように、やや演技がかってきてしまいました…。
「みんなで踊ろう!」「また遊ぼうね!」
明らかに私達が使う言葉ではありません。でも、良いんです。間違った日本語ではないので。
はやくまたタタさんちで、フランス語で楽しくおしゃべりして、みんなで踊ったり遊べるようになるといいね。

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