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フランスで職をみつける方法:専門職編

私が働いている業界は狭い世界なので、どこの会社でポジションが空いている、デザインダイレクターが世代交代したので新しいデザイナーを探している、という話が聞こえてきます。私の場合、人づてに知り合った方から声をかけていただき、今の会社に来ることになりました。

これから、海外転職を考えていらっしゃる方に向けて、そこまでのプロセスや、心構えなどを数回に分けて書いていきたいと思います。
今回は、既に日本の会社でキャリアをつまれた方、専門職の方に向けて書いていますが、今後は色んなケースについて書いていきたいと思います。

日本を発つ前に就職先の目星を立てる

日本である程度の就労経験がある方で、フランスに転職を考えている方から相談を受けた際、必ずお伝えしていることがあります。それは、日本を発つ前に就職先の目星を立てることです。入国時のビザの種類が後々にも影響が出るからです。日本にいる間に職が決まった場合、受け入れ先が企業であれば、多くの場合、ビザの発行の手続き一切を引き受けてもらえます。条件が良ければ、海外引越の手配や、家探しのサポートまでやってくれることも。

私の友人カップルで、彼女が既にフランスで働いていて、その後結婚し、社会人だった彼を学生ビザでフランスに呼び寄せた人がいました。学生ビザは語学学校への所属でも発給されます。とにかく早く一緒に住みたかった2人は、早く取れそうなビザをということで、彼は会社を辞めフランスの語学学校へ通うことになりました。

ただでさえ失業率が高いフランスにおいて、そこから就労ビザに切り替えることはなかなか難しいのです。既に学生ビザでフランスに住み始めてしまっていた彼が就職するためには、フランス人に混ざって就職活動をする必要がありました。その上、就労ビザの手続きは雇う側の負担になります。外国人を雇うということは手間なのです。語学レベルもネイティブではないですし。そうなったとき、一般のフランス人に比べて大幅に上回る何かが求められます。学生ビザでもフランスの大学を修了していれば、大学のコネクションなどを利用して就活することができますが、語学学校の場合はそうはいきません。

彼のエンジニアとしてのキャリアは10年を超えていたので、もしフランス入国前にその経験を生かした転職先が決まっていれば、良い条件の就労ビザを発給してもらえた可能性もあったと思われます。専門性を持った外国人という扱いで、英語で仕事ができたかもしれません。一度、学生ビザで入ってしまうと、それまでの社会人経験があっても、フランスにおいてのステイタスは学生に戻ってしまうと、2人はとても後悔していました。

既に日本の会社に勤めている方、専門職の方の場合

私の周りでフランスに転職された方は、既に日本の会社に勤めていた方か、職人的な専門職をしている方のどちらかのケースが多いです。日本企業でフランスにも支社があり、移籍を希望したというのが大半。

支社がなくとも、専門職の方であれば、フランスで同業者をあたるというのも手です。日本人の手先の器用さは評判なので、職人系専門職でフランスの企業で働かれてる方は結構います。パタンナー、料理人、パティシエ、工芸作家など。

また、在仏日本人向けのビジネスは幅広く、不動産業、会計事務所、フィナンシャル系、旅行代理店など、様々な業態が存在しています。ネットで検索すると、本当に色々出てきます。そのような企業で、日本人をサポートするお仕事も考えられます。

資格職の方の場合、日仏で免許が異なる場合がほとんどなので、フランスで資格を取り直すか、同業系の職場で補佐的事務員として勤めることになると思います。
日本の保育士、看護師の資格を持った方が、日系の保育園のイベントのお手伝いをされていました。直接保育には関われないのですが、フランスで生活する上で不安を抱える日本人の相談役という立場でいらっしゃいました。日本の習慣を知りつつ、フランスとの相違点を踏まえたアドバイスは、とても心強いものでした。その上で、フランスの資格を取られたら更に良いのにな、と思いました。

資格を問わない専門職の場合であれば、フランスの現地企業に飛び込むのもありだと思います。私自身が、まさにそのケースでした。全く同業ですが、国を変えただけなので、使っている言語は違えど、仕事の進め方などは同じ世界にいます。

転職は、国、業界、職種の3つのうち、変えるのは1つに留めたほうが良いと聞いたことがあります。私は、国だけが変わったパターンなので、確かにあまりストレスなくやってこれています。夫は、業種は以前のままですが、国と業界が変わったので、前職に比べて変化が多かったようです。

新卒一括採用の恩恵はフルに使おう

転職活動中に気づいたフランスにおける、私の履歴書の優位点は、大学卒業直後から会社勤めが始まっているという点です。日本の方なら特段優位とは思いませんよね?

実は、日本の新卒一括採用というシステムは、多くの海外の国、そしてフランスには存在しないものなのです。フランスの学生の場合、卒業後、1、2年はインターンシップを繰り返し、その後、数年間は派遣社員、契約社員、そして、社会人経験5年過ぎた頃から運が良ければ正社員採用になる人も出始めます。
そこまでは、いくつも会社を転々として、経験を積みます。

そういった観点で私の履歴書をみると、まるで大学在学中から企業に声がかかって、卒業と同時に正社員として働き始めた稀にみる優秀な人物に写るのです。日本の新卒採用事情をしらない国の企業には「ビザを発給する手続きをしてまで取る価値がある人物だ」と思わせる要素になります。

転職前、英会話の個人レッスンを受けていたのですが、面接の練習で日本の新卒採用について一生懸命説明していたら、フランス人の先生に「蛇足だ」と呆れられました。そんなお国の事情は黙っていれば良い、履歴書だけみたら、デキル人にみえるのだから、と。

こんな感じで、今後もフランスで職をみつける方法を、切り口を変えつつ書いていきたいと思います。


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