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センスに自信はないけれど、パリでデザイナーやってます

この度、母校、筑波大学の非公式アカウント「筑波虚構新聞」で、私の作ったロゴが採用されました! 選ばれたご褒美として、何か宣伝したい事を広告としてツイートして頂けるということだったので、こちらのブログを宣伝していただくことにしました。

今まで長らくFacebook等のSNSを一切やってこなかったので、拡散力ある筑波虚構新聞さんのお力をお借りできるのは、とてもありがたいです。
パリのロックダウン明けをきっかけに、フランス生活のあれこれを書き始めました。今日は自己紹介がてら、特に同窓生の方々や、後輩達に向けて、学生時代のエピソードを書いてみたいと思います。

私は今、フランスの企業でサラリーマンデザイナーをしています。
筑波大学の芸術専門学群を卒業、芸術研究科を修了しました。今はどうかわかりませんが、当時は「バカ三専のゲーセン」と呼ばれていました。芸術専(セン)門学群、体育専(セン)門学群、推薦(セン)入学は、筑波大の中では「底辺」扱いでした。
当時の筑波大は、入学者のほとんどがキャンパスの敷地内の寮に住んでいました。私は大学の南側にある追越宿舎、夫はその横の平砂宿舎に住んでいたツクバ夫婦です。お互い日本企業で10年弱勤めた後、各自フランス企業に転職しました。夫婦、違う会社でデザイナーとして働いています。

夫婦共に修士課程までいたのですが、正直、デザイナーを目指していて大学院まで行く人は、ほぼいない業界です。
私の場合、完全にモラトリアム進学だったので、大学院2年間は、気持ちが落ち込み、大学のホケカンにお世話になりました。ホケカンとは、保険管理センターの略で、自殺率が高い筑波大において、学生の命を救う存在。常に複数の優秀な心理カウンセラーの先生が常駐していらっしゃいました。
就活の際、「院卒の女の子でデザイナーなんて採用しないよ。給料高いのに、歳いってるからすぐ産休取るでしょ?」と言われ衝撃を受けたのは、15年ぐらい前のことです。
フランスではデザイナーは基本、院卒。こちらに転職した際、院卒であることは条件のひとつでした。卒業してから10年近くして、初めて院卒であるということが有利に働きました。

そもそも、筑波の芸術は、デザイン業界ではやや特殊な存在。元教育大という流れもあり、いわゆる東京の私立の美大より、真面目なふつうな人が多い印象です。美術系というと、アーティスティックで浮世離れしたイメージがあると思いますが。国立でセンター試験の足切りもあるので、必然的に、ある程度は勉強ができる人が多めだけど、手が動かない人も多め。口が達者だけど、実技は苦手な集団です。ちなみに私は前期のセンターの足切りで落ち、学科の得点比率が低い後期入試で入りました。

私の実家は東京にあり、高1から美大を目指して、美術予備校に通う日々でした。美大に入るのにも、受験用の絵の予備校があるんですよね。美大受験では浪人を重ねる多浪生が多いのですが、それは絵の技術がどんどん上がっていくけれど、勉強をしなくなっていくという、一般受験では考えられない現象が起きるからです。どこの美術予備校にも、5浪、6浪と、浪人を重ねた長老のような存在がいます。
そのため、美大受験業界では現役生が一番チャンスがあると言われていました。筆記で30点上げたかったら単語を覚えれば良いけど、実技で30点上げたかったら、その技術の獲得に何十時間も費やさないといけないのです。でも勉強嫌いが集まる世界なので、わかっていてもそれができない…。

筑波大を受けようと思ったのは、出願を目前に控えた年の瀬でした。それまでは、東京の私立の美大目指して一直線!
受験前、高校の同級生の間で、自分の志望校を偽るという謎の遊びが、流行っていました。図書館で、筑波大の赤本を見ていた勤勉な同級生に「私も筑波大受けるんだ〜」と思ってもいないウソをつきました。そしたら、その子「あー、芸術学部あるもんね。赤本みる?」と貸してくれたのです。そういえば、私が大好きな「魚コード」を作ったアーティストの明和電機は、筑波大の工学系かと思ってたけど、まさか芸術系!? 

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赤本のセンターの受験項目をみると、前期は5教科だけど、後期なら3教科だけで実技の配点が上がる仕組み。当時の私の実技レベルは、私立の美大に合格できるかどうかギリギリのライン。教育学部系の芸術の実技レベルはそれよりも少し低いので、もしかしたらいけるかも…。

3教科の組み合わせはなんでも良かったので、英語と国語に、一番簡単そうな生物1Aを。生物の授業は選択制で取っていなかったので、その日の帰り道に、駅前の本屋で早速教科書を注文しました。
そこから密かに猛勉強。生物1Aだけ。父は美大受験にいい顔をしていなかったので、もし国立大学を受験しようとしてることがバレようものなら、受かる前から舞い上がって大騒ぎになりそう。出願書類の受け取りも、親の目に触れないように郵便受けのチェックは怠りませんでした。

美術予備校の先生に筑波受験を相談した時は、反対されました。私が通う予備校ではバリバリの美大受験を主眼とし、筑波大への進学実績がないから対策ができないというのです。また人数が少ないこともあり、「海のものとも山のものともつかない芸術学部」と一蹴。表向きには私立の美大を第一希望に、コッソリとひとりで準備したのでした。

結果、サクラサク!前から志望していた東京の私立の美大も、かろうじて合格しましたが、筑波合格が奇跡すぎて、迷わず筑波大に進学したのでした。私が筑波大に行くことにしたことを知らない予備校の同級生達からは、美大の入学式中に「今どこー?」と電話がかかってくるほど、私の進路変更は急なものでした。

その後、大学の授業が始まるようになると「なんで東京に実家があって、私立の美大にも受かってたのに筑波にきたの?」と何人にも聞かれました。
美大は反対だけど、国立なら良いと言われて筑波大に来た同級生も多かったので、その疑問には納得です。地方出身の人も多い学校なので、実家が東京でなぜ筑波?というのも理解できます。自分でもなんでだったか分からなくなりました。あれ、選択間違っちゃった?

その後しばらくの間、毎週末のように東京の実家に、つくばセンターから高速バスで2時間近くかけて帰っていました。当時はまだ、つくばエクスプレスがなかったんですよね。そして、美術予備校で一緒だった、美大に行った友達グループとつるんでいました。東京の綺麗でオシャレな校舎や設備、しっかり組まれた授業カリキュラム、作り込まれたクオリティの高い学祭をみて、散々羨ましがり、後悔し、涙しました…。

でも、ある日、そんな見下していた筑波の授業の講評会で、私の作品が酷評されました。提出するまでは自信満々だっただけにショックはより一層。一番だった子は、とっても繊細な仕事ぶりで、斬新な提案。あぁ、ここでもセンスが良い子がいるんだ…。ここでも、私、ダメなんだ…。

そのとき、私は本当は怖かったことに気づきました。オシャレな人達がたくさん集まる美大に行くことが。受験では合格できたけど、実技のレベルは間違いなくギリギリ。学科で得点が取れただけであって、才能やセンスは保証されていません。このセンスで闘わなければならない世界では、やっていけなさそうだということを、もしかしたら、薄々肌で感じていたのかもしれません。だから、友達の赤本を見たときに何かに取り憑かれたように、自分らしい道を見出せる気がして、受験対策をしたのだと思います。

合格発表の日、大学構内で見かけた、ちゃんちゃんこにサンダルで自転車を漕ぐ在校生、ジャージ姿で集団で闊歩する体育学群生。親しみと安心感を覚えた記憶があります。そんな牧歌的な大学で、東京の美大への劣等感と焦りは、見えない敵として、日々の制作にモチベーションを与えてくれました。

筑波大では、生き方を学んだような気がします。超放任主義なので自分で行動を起こさないといけない、ということを身をもって知れたのが一番の学びでした。まだ他の人がやっていないことを見つける、正攻法で闘わないという思想も、筑波の芸術ならでは。デザイン業界で、筑波の卒業生達は、ちょっと変わった存在感で活躍をしている人が多いのです。

芸術業界においての筑波系の特殊さは、我が芸術学群が誇る卒業生で、人気絵本作家のヨシタケシンスケさんも、糸井重里さんとの対談で語っています。

私のオシャレなものへのコンプレックスは、今もなお続いています。日本企業に新卒でデザイナーとして就職したとき、キラキラした美大卒の先輩方の眩しさに圧倒されました。今パリでも、センスの塊みたいなパリジェンヌ達を前に、日々ドキドキしながら仕事しています。ですが、いわゆる「美的センス」では勝負せずに、今のところなんとかやってきています。

こんな私の、王道で勝負せず、脇道を見つける日々をこのブログで発信していきたいと考えています。オシャレなパリブログではないのですが、筑波大卒らしさに共感してもらえるような、やや素朴系のネタを盛り込んでいければと思います。
少し前に、30日連続投稿というものに挑戦し、人気があったものをまとめた記事があるので、読みはじめとしてはオススメです。

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最近始めたインスタは、このブログの要約用デザインの仕事用に、2つの異なるコンセプトのアカウントで、色々試しているところです。

ブログは週の始まりに更新するようにしていますので、今後もみにきていただけたら嬉しいです!
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どうぞよろしくお願い致します。

uemma

※追記:私の仕事に関しての記事も書いてみたので、ぜひ!


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