「の」の字の逆襲
今、香港で・・・「の」の字が復権し、隆盛を極めている。と言っただけでは、なんの事だかわからないですよね。
それは、広告コピーに「の」の字を入れることでメイドインジャパン(日本由来)であることをアピールすること。良く言えばとてもストレートな、悪く言えば少し安直なクリエイティブの手法なのです。
ちなみに「の」はご存知のように格助詞です。そして中国語では「の」に当たる言葉は「的」です(注:必ずしもではなく多くの場合です)。
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• 名詞と名詞の関係性 部屋の中(屋子里)
• 山田さんのリュック (山田的書包)
• 名詞修飾節の主語 私の行きたい場所(我想去的地方)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(なお、所有格としての北京語の「的」は香港で使用される広東語では「嘅」になるようです。なので香港では「の」は「嘅」の置き換えだと言っていいでしょうね)
さて、実際の広告コピーはどんな風に使われているのか?トップの画像以外にも、、、、
こんな感じです。
そして、こんな感じ。
さらにこんな感じ。。。。
なのです。
「の」の字が漢字に挟まれてるから、僕たち日本人にとっては親しみやすいはずなのに、なんだかそこだけ浮いてしまっているような・・・。しかも日本語にない漢字に囲まれている事もあって、そうなると、もう違和感しか生まれないのです。
僕が香港で仕事を始めた20年前には、日本製品と言えばクール、ハイテク、高品質、高い!というイメージでした。(ネオンサインの回も覗いてみてください)
ここ数年はファッション家電、ファストファッション、日本食材をはじめにヘアカット、エステサロン、サプリメントなどが香港の消費者に広く受け入れられています。だいぶ商品のカテゴリーやラインアップは変わったけれど、変わらないのは香港人による「日本のものはいいものだ!」という評価なのです。ありがたや。
その「日本のものはいいものだ」という評価をうまく利用して、うちの商品やサービスは、いいものだよ、信頼できるよ、というイメージを作りたい。その為に誰でもできる簡単な手法が「コピーに「の」の字を入れる」ということなのです。
この「の」の字戦法。昔は、怪しい商品やサービスを扱っている無名企業がこぞって、取り入れていました。むしろメイドインジャパンでないことを、自ら知らしめているような効果があったかもしれません。香港の人たちも「やれやれ、また使っている」というような受け止め方であったはずです。
さて、「の」が使われたコピーは10年ほど前にはあまり見かけなくなります。僕的には、なちょっと濫用しすぎ!と感じていたので、使われなくなってきたのはいい傾向だと思っていました。
しかし、この数年でまた、がんがんと使われるようになったのです。今度はきちんとしたブランドまで使うようになってきました。アメリカの化粧品会社さえも!日本企業の香港法人も。前回のブームは怪しい商品が、てへぺろ的に使っていたのに対して、今回のブームでは、まさに「の」を使うことで日本との関わりを最大限に訴えようというもの。
・原料が日本産だ。
・研究開発は日本で行われた。
・日本のレシピを採用した。
・商品デザイナーが日本で勉強した。
・香港に根ざしているけれど日本発の会社だよ。
■「の」の字を使用せずに、日本とのつながりを表す10の方法
すべて弊社で制作経験があるものです。難易度の低いもの順に紹介します。
1. 日本産、日本製と謳う
2. 日本での売り上げNo.1などの情報を入れる
3. 研究開発が日本で行われていることや、日本の関係機関による認可などの情報を入れる
4. 日本の曲を使う
5. 日本風のストーリーや、日本で話題のトピックを使う
6. 「の」だけでなく日本語の単語やフレーズを使う(ただし、よく間違ってます。日本人以外はわからないかも)
7. 日本で制作したものを、吹き替えやコピーなどでローカライズする
8. 日本のモデルやタレントを使う
9. 日本人のスタッフを使う(クリエイティブディレクターや監督、フォトグラファーなど)
10. 日本で撮影する(予算によって日本人の関与度が変わる)
最後にこちらが弊社で担当した広告です。まさに上にある10番目の方法。撮影場所、監督、制作会社、タレント、スタッフ、編集、音楽、フォト全てが日本製。クライアントとうちのディレクター二人だけが香港人でした。商業地コーズウェイベイ(銅鑼湾)駅をプチジャックしました。
ちなみに「の」は使っていません。笑
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