【読書メモ】『ていねいな文章大全 日本語の「伝わらない」を解決する108のヒント』
▶今回の読書記録『ていねいな文章大全 日本語の「伝わらない」を解決する108のヒント』石黒 圭 (著)
『ていねいな文章大全 日本語の「伝わらない」を解決する108のヒント』
石黒 圭 (著)
ダイヤモンド社
▶感想
まず、「ていねいに」書いてあり528ページもあるのでとても分厚いです。一方で、内容は読みやすく書いてあるので、ページ数の割にはざっと読めます。とは言え、やはり分量が多いので、もう少し要点を絞ってコンパクトにしていただけると、読む方としては助かります…。
▶読後メモ
■はじめに
ていねいに書かれた、①正確な文章、②わかりやすい文章、③配慮の有る文章、④工夫のある文章
日本語の書き方の単位
表記:文字や記号の使い方 小
語彙:一つひとつの言葉の選び方 ↑
表現:まとまった言葉の選び方 |
文法:分の組み立て方 ↓
構成:文章の全体的な構成の仕方 大
■正確な文章
同じ音に複数の文字:「こんにちは」と「こんにちわ」/「う」と「お」/「じ」と「ず」/「ず」と「づ」
小さな文字の活用:「アーチスト」と「アーティスト」
片仮名語の調音:「マネージャー」と「マネジャー」
長音記号「ー」をつけるのが基本
ただし、「スリッパ」や「ドア」のように慣用的に「ー」が使われない語や「サーバ」「フォルダ」のようなコンピュータをはじめとする専門語では長音記号「ー」をつけない。
「メーク」と「メイク」、「メーン」と「メイン」のように、選択の余地があって「イ」の使用率の方が一般的に高い語は、「イ」を選んだ方が引き締まった印象を与えることができる。
片仮名語の濁音:「ホットドック」と「ホットドッグ」
常用漢字表:「破綻」か「破たん」か
送り仮名の送り方:「当った」か「当たった」か
活用語尾を送るのが基本
読み間違いを防ぐために多めに送る場合がある
断(た)って/断(ことわ)って/断わって
行(い)って/行(おこな)って/行(おこ)なって
誤解を招く変換ミス
人事移動、提案に意義をとなえる、アンケート解答、熱帯魚鑑賞、既製事実化、ご好意に感謝申し上げる、文章の構成をお願いする、時期が到来、修士課程を終了、小数精鋭、Web製作会社、左右対照、専門家同志、食欲不審、生活保証
訓読みの誤変換
頭金に当てる、ポイントを的確に抑える、税を収める、地図を描く、本皮のジャケット、期待に答える、気に触る、最期に、味を整える、核心を捕らえる、前例に習う、予選に望む、会議に図る、振るってご参加、医者に見てもらう、疑問が沸く
区切り符号
4つの記号
区切り符号:句読点
囲み記号 :かっこ
つなぎ記号:ダッシュ
並べ記号 :箇条書き
「。」と「、」
「・」
かっこの使い分け
隅付きかっこ【 】はとくに目立つかっこ。メールの件名での注意喚起など。
「 」の使い方
( )の使い方
つなぎ記号(ー、…、:、=、~)
「ー」は直接的な関連、「…」は間接的な関連
「~」は○○から○○までを示すが、国際的には通用しがたい
ならべ記号
単純列挙(・)
順序列挙((1)、①)
補足列挙(*、※)
語彙力を上げるには →何でも同じ語彙で済ませない
適切な言葉が浮かばない →国語辞典、類語辞典
文脈に合わない語彙選択
コーパスを用いた語彙選択
プライマイナスの語感
言葉足らずに気をつける
重複を避ける
数量表現の不正確さ
価値観は含めない
述語からわからない主語
ら抜き言葉/さ入れ言葉/れ足す言葉/だ抜き言葉
「から」と「ので」の使い分け
「たら」と「ば」の使い分け
■わかりやすい文章
仮名と漢字の書き分けの原則
仮名と漢字の書き分けの応用
片仮名の非外来語表記
文の終わりで句点「。」が必要ない場合:箇条書き、閉じカッコの前、打ち言葉のメディア(LINEなど)で話を切らずにつづける場合
「、」の基準
「、」で気をつけたいこと
伝わりにくい外来語:「プレゼンスをエンパワーメントするスキーム」
わかりにくい外来語の切れ目
「現」「前」「元」を付ける位置:「前田中大地労働組合執行委員長」 →役職の直前につける
読み手に意味が通じないカタカナ略語:「パワハラ、モラハラ、スメハラ」
別の意味で解釈されるアルファベットの略語
FB:フィードバック、Facebook、フルバック、ファームバンキング
PS:追伸、プレイステーション、パイプスペース、馬力
HP:ホームページ、ヒットポイント、ヒューレット・パッカード
FC:フットボールクラブ、フランチャイズ
db、dB、DB
ex:例、練習、元など
専門語:「価格」と「値段」、「賃金」と「給料」
世代を超えない言葉:「衣紋掛け」「背広」「チョッキ」
社会的に進む言い換え:「日射病」→「熱中症」、「成人病」→「生活習慣病」
オノマトペ:擬音語、擬態語
ビジネス文書のオノマトペ
こつこつ、きちんと、しっかり、がっちり、じっくり、どしどし、てきぱき、どんどん、さっと
副詞と共起
曖昧になりやすい副詞
比喩
効果的な比喩表現 →できるだけ離れたカテゴリーから選ぶ
宝石のようにつやつやしたお米
紙のように薄く切られた生ハム
石/レンガのように固いフランスパン
わらじのように大きいハンバーグ
スポンジ/羽毛布団のようにふわふわのシフォンケーキ
マグマのように赤く煮えたぎる激辛スープ
動詞の語彙力をつけるには、身体名詞(足・手・腕・頭・顔・首・目・鼻・口)を組み合わせた「慣用句」
長くても読みやすい文の構造
係り受け
助詞の解釈が分かれる文
「に」:
議長に推薦された → 議長として/議長から
開催日は10月1日に変更された → 開催日が10月1日/変更が決まったのが10月1日
上司に見えないように行動した → 上司からは/上司らしく
海山商事には競争入札で勝ってほしい → 海山商事に落札してほしい/我が社が海山商事に勝ってほしい
田中さんに話したいことがある → 田中さんに対して/田中さんには、話したいことがある
「を」
子どもを迎えに行かせる → 子どもに/夫に子どもの
全部否定と部分否定
制限用法と非制限用法
文書構成の基本型3つ:頭括型、尾括型、両括型
パラグラフ・ライティングの基本:短いパーツに分けて書いて、最期につなげて長い文章にする
パラグラフ・ライティングの実際
接続詞で深めたり広げたりする:なぜなら、たとえば、つまり、なかでも
■配慮のある文章
ジェンダーに対する配慮:保母さん、ビジネスマン、彼氏さん
少数者に対する配慮:ご父兄、お父さま・お母さま、高齢者、人種差別、障碍者、学歴差別
不特定多数への配慮:地球の裏側、昭和的なものの観方、徘徊、将棋倒し、狂言、ポエム、ブラインドタッチ、盲目的、劣化、
はっきりいうことの弊害:老後、死去、高齢者
まぎれこむ固有名詞:ウォシュレット、ポストイット、セロテープ、サランラップ、シーチキン、iPad、Suica、タイムズ
「故」をつけるのは、存命中
敬語の基本
距離を遠ざける敬語:二重敬語、「させていただく」敬語
敬語にならない敬語
名詞の敬語:「お」と「ご」
【基本】
和語(訓読み)は「お」:花、手紙、父上
漢語(音読み)は「ご」:挨拶、趣味、子息
外来語にはつけない:パソコン、アイデア【例外】
身近なものの場合、漢語であっても「お」:財布、弁当、中元【両方】使える:返事
自敬敬語は使わない:当方のご指摘、私どものご意見
相手の気持ちに配慮する宛名
さん:相手との関係が対等か、目上でも親しい関係のとき
くん、呼び捨て:とくに親しい同僚や部下に限って
様、さま:一般的な名称で幅広く使える
殿:見下す感じがあり、控えたほうがよい
教授、代表取締役のような肩書きは宛名に向かないが、部長、センター長のような役職は宛名でも使える
先生は、直接教わった相手にも、教える職業の相手にも使える
CCとBCC
比喩の功罪:ダボハゼのような、お経のような、宗教のような
表現をサボらない:ヤカンを沸かす、洗濯機を回す、机に座る、電気がついている、トイレをノックする、マクドを食べる
断定を避ける言い回し
無理です→難しいです
無駄です→厳しいです
大丈夫です。問題ありません。→「おそらく」や「~そうです」をつける
婉曲表現を交えた言い回し:「できかねます」「いたしかねます」「お控えください」「ご遠慮ください」などはできないことが伝わらない可能性があるので、文脈を明確にする、ストレートな表現にするなどの工夫が必要
長いメール・短いメール
メールを返信するときは、相手の表現を参考にしつつ、コピペに見える文面を変えること
メール本文に合わない紋切型を避ける
久しぶりなのに「お世話になっております」
何をお願いしているのか分からない「よろしくお願いします」
メールの負担を減らす「三手の読み(メールを送る→相手の対応→自分の返信)」→メールは一往復半が原則
メールの返信をどう書いても意図がうまく伝わらないと感じられたときは「返信しない」
話しが複雑になりそうなときは、会って話した方がよいとき
責めるような内容のメールが来たときは、返信は慎重に。「売り言葉に買い言葉」でいいことはない。
怖いメールが来たときは、少し時間を置く
謝罪するときに大事なことは、事実の確認、真摯な反省、再発防止策の提示
感謝のメールはできるだけ速やかに出すことで、謝意が伝わる。感謝の文面は、使い回しの文面を流用するにしても、今回にしか当てはまらない点に言及することで、使いまわし感が和らぐ
■工夫を凝らした文章
人物の同定を複雑にしない
話し言葉の混入を見抜く
論文・レポートでは、「私」→「本論文」「本報告」「本調査」…
論文らしい表現:研究、背景、目的、課題、定義、文献、引用、資料、収集、方法、分類、整理、調査、観察、実験、分析、結果、考察、検討、結論
タイトルは文章の究極の要約。文章の中身を読む前に、タイトルだけでだいたいの内容の見当がつくことが大事
「てにをは」を操る
文脈参照表現:先行文脈=上・前・先、後続文脈=下、後、次
「~した。~した。」と続く単調な文末を防ぐには、段落の途中で「~する。」を交ぜる。
文章展開と時間表現:スル形、シタ形、シテイル形
丁寧形と普通形を混ぜる
体言止めの活用:SNSと相性が良い
自発表現の活用:
「思う」は個人的な思いのニュアンスが強いので、「思われる」がおススメ。
期待/示唆/推定できる → 期待/示唆/推定される
慎重な姿勢を示す否定
学術的な文章では、文末を否定表現にすることで、主張を控えめに示すことができる
論理的必然感を出す否定疑問文「ざるをえない」「なければならない」「しかない」は、書き手の一方的な主張を押しつける印象をやらわげ、論理的帰結の必然性を示すことができる
否定疑問文「のではないか」「のではないだろうか」は、書き手の考えを押しつけがましくなく示すことができる
受身文の適切な使用
意図の示し方
一人称視点と三人称視点:視点にはカメラを持つ撮影者の視点と、カメラが写す被写体の視点がある。
文末表現:「行く/来る」「あげる/もらう/くれる」「そうだ」「らしい」「ようだ/みたいだ」
立場の一貫性
メッセージの一貫性
Web文章の段落の区切り方:内容のまとまりで区切る、続きを読ませる区切り方
説明文で読み手に内容を伝えるコツは、文章を書き手と読み手の対話と考え、疑問文を使いながら、読み手の頭の中に説明の内容を一つひとつ入れていくこと
テキスト生成AIを用いた文章作成:できあがった文章を検討し、内容に嘘がないかどうか、信頼性の高い情報源に当たっての内容の真偽を確認し、必要に応じて修正する。
テキスト生成AIの未来:真に新しい世界観や独創的な内容は、人間の手から生まれる
以上です。
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