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伝記(偉人)の取り扱い方 NO2

本シリーズでは、道徳科の授業において、どの学年でも出てくるけど、「なんか上手く取り扱えない」という声が多い、伝記(偉人)教材について、私なりに迫ってみたいと思います。これは、完全に私独自の考え方なので、共感できないかもしれませんが、シリーズの最後までお読みいただき、少しでもお役に立てば幸いです。

1 前号のおさらい

前号では、伝記(偉人)教材を、アナロジー思考を働かせることで、偉人教材を、多様な視点や観点から考えることができることを述べてまいりました。
手順としては以下のようになります。
①教材の出来事や関係性の構造を崩さずに、抽象度を上げて抽出する。
②構造に当てはまるモノを探し、当てはめる(アナロジー思考)。
③その違いを考える。
④教材から子どもが学べることを浮き彫りにする。
そして、マザー・テレサの教材で上記の手順で進めていくと、以下のようなねらいを設定することができることの提案しました。

本号では、そのねらいに迫るための発問について提案させていただきます。

2 抽象的な問いに注意

上述したねらいに迫るために、一般的には以下のような発問をすることがあります。

「マザー・テレサから学べる、働くよさって何ですか」

この発問は、マザー・テレサの働くよさを考えることで、働くことの価値は金銭的報酬だけでなく、充実感や達成感などの精神的報酬に目を向けさせるための、入り口の発問だといえるでしょう。

この発問でも、悪くはないのですが・・・
人は「問い」が抽象的すぎると、思考停止が起こります。
例えば・・

「教師の働くよさって何ですか」

と問われると、私たち教師でも何を答えていいのか戸惑ってしまいませんか。

3 『AよりもB』の発問でねらいへ

そこで、発問を次のように変えます。

すると、子どもは・・
C:助けた人から感謝される嬉しさ
C:一緒の仲間と働ける楽しさ
C:誰かの役に立っているという充実感や達成感
とねらいに迫ることができるのです。

つまり・・
発問の中に、「AとB」の比較対象を挿入し考えを焦点化してあげるのです。
そうすることで、子どもは考えやすくなります。

4 理解の遅い子どもの視点

発問を焦点化し、考えやすくすることだけが「いい発問」ではな違かもしれません。
しかし、これまでの発問は抽象度が高く、理解の早い子どもだけが主役になるような発問だったように思うのです。
そういう子どもは、教師の意図を見抜いたり、文脈から考えたりすることが得意です。
だからこそ、抽象的な問いでも答えることができます。

対照的に、理解の遅い子どもは「文脈が読めない」「抽象的で何を答えていいか難しい・・」と思考停止している可能性があります。
「AよりもB」の発問は、そんな子どもにも考えやすく、誰でも授業の主役になるチャンスを与える問いでもあるのです。

このように、発問を「AよりもBなのは」と問うことで、偉人という遠い存在でも、日常生活と比較したり関連づけたりしながら、考えることができるのではないでしょうか。
ぜひ、お試しください。

次号では、前号のアナロジー思考と、本号の発問の工夫を用いて、低学年の伝記(偉人)教材の授業づくりを行ってみたいと思います。

*私のnoteでは、2週間に一度、「道徳科の授業づくり」について書いております。興味のある方はフォローして頂けると幸いです。

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