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ケチをつけるよりやるべきこと

 性交渉に同意したかの記録が残せるアプリ『キロク』の提供が始まりました。
賛否両論、物議を醸しそうなサービスだなと思いながら見ていると、やはりネガティブな意見が多く見受けられました。新しいものに対する抵抗感や懐疑的な視点は危機管理という意味において重要ですから、あって然るべきだと思います。

 私も記事を読みながら、いざという時にこれを冷静に読める人がどれほどいるのだろうか、直前ではOKしていたけれど相手を陥れるために事後にNOにした場合は誰がどう判断するのか、などなど考えたらきりがなく、実際に活用してもらえるようになるにはいくつものハードルがありそうではありますが、これまで無かったものをゼロから作り上げて下さったのですから、プロジェクトに携られた皆様には頭が下がります。社会にとって、無いよりは断然あった方が良いものなのですから、素直に感謝したいと思います。アプリがスタートして徐々に認知が広がり、性交渉の同意についての人々の意識が高まることが大切ですよね。


限られた視点からものを見てはいないか

 このアプリに関する意見の中には、アプリに頼らずに信頼関係を築くべき、サービスを使わざるを得ない相手と性交渉を持つのが間違い、など利用者側のモラルや人間性の育成に力を入れるべきとの声もありました。確かにそうですよね、仰られていることは非常によく分かります。私も一カウンセラーとして、非常に不甲斐なさを感じるところではあります。しかし、実際にご自身が性犯罪被害者となり心に大きな傷を負ったとしても、同じことが言えるでしょうか。これは白黒どちらか決着をつけるという問題ではありません。アプリの開発と同時に個人個人の精神的な成長にも並行して力を入れるべきであり、健全な社会の醸成を目指してあらゆる方面から協力し合いながら尽力することが必要なのですから、非難や誹謗中傷はそれ自体を妨げる行為となってしまっていますよね。社会の一員として世界でも稀に見る安全な日本での生活を享受しているのならば、自分には何ができるかを考える機会にしてもらえたらと思います。

 性犯罪被害者にとっては、事件を立証するため、被害者自身の気持ちを代弁する大きな助けになるでしょうし、耐え難い孤独により誰でもいいからと相手を欲するタイミングがあるのもまた人間です。性犯罪というのはたとえ大人であっても被害を受けたことを他者には話せない場合も多く、幼い子供なら尚更です。事件として公表されている数字よりも実際には驚くほど多くの犠牲者がいる実は身近な犯罪なのですから、誰もが我が事として問題意識を持ち危機管理できるようにならなければならないのです。アプリを実際に使うかどうかではなく、その議論のきっかけを作ってくれたのだとしたら、それだけで大きな役割を果たしたと言ってもいいのではないでしょうか。

 アプリはきっとこれから何度も改良が重ねられていくのでしょう。私もカウンセラーとして、これまで以上に多くの方のお悩みに寄り添い、日本社会全体の心理的成長に寄与できるよう尽力していきたいと思います。そして1人の親としても、子供達が安全な暮らしを自分たちの手で実現していけるよう、私の持てる全てを注ぎこみ向き合っていく所存です。


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