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妻の不貞による不眠で辛い▶戦場で眠れるわけがない

 一生を誓い合ったパートナーの不貞は心に深い傷を残します。大切な人に虐げられた悲しみや悔しさだけでなく、他者に知られることで社会的尊厳も貶められるのではという不安感から、誰かに相談することさえ憚られます。苦しみの感情を1人で抱え込むことで、孤独感から不眠や食欲不振などの心身の不調にも繋がるなど、その影響は計り知れません。

【相談内容】

30代 男性 Bさん
結婚9年、2男1女
妻が不倫をしている様子
問い詰めても白状せず問題が解決しない
妻が悪いはずなのに、なぜか態度がデカい
離婚はしたくないが、夫婦間のコミュニケ―ションは極端に減少
最近は眠剤がないと眠れず辛い

■主訴

妻の不貞による不眠で辛い

■人物像

AC、CP、Aが高い
生まれ育った地元で就職し結婚
真面目なサラリーマン
禁止令:成功してはいけない、考えるな
ドライバー:完璧であれ、努力しろ、強くあれ

■見立て

妻の不貞によりひどく傷ついているため問題が客観的に見れなくなっている
自分の常識を妻に当てはめようと圧を掛けるも、反発され理解不能に
飼い犬に手を噛まれた気分となり被害者意識が増幅
それにより更に自分で自分を追い込む形になっているのでは


この分析をもとに、共感して主訴に応えた一言がこちらです。        

「戦場で眠れるわけがない(ですよ)。」


 Bさんにとって、もはや妻は自分を傷つける憎き敵に見えており、家庭は戦場と化しています。帰宅して妻と相対することで臨戦態勢へとスイッチが入るわけですから、安心して眠れる状況ではないですよね。

最も愛し信頼していた相手だったからこそ、裏切られた悲しみと心の痛みは壮絶です。その苦しみから身を守るために躁的防衛が働き、Bさんは妻に対して居丈高な態度で攻撃する形になっていたのでした。しかし、酷い痛手を負い満身創痍なのですから、妻を力で制圧しようとするのは得策ではありません。ですから、Bさんにはまず、ご自身の苦しみをしっかりと実感し自己受容することで、夫婦の置かれた状況を俯瞰して見る冷静さを取り戻していただく必要がありました。

夫と妻はそれぞれ別々の人間

Bさんご夫婦の場合、夫と妻でパワーバランスの認識に齟齬がありました。妻は、夫婦は対等であるにもかかわらず、自分だけいつも虐げられ家事・育児を押し付けられていると感じていたため、過度なストレスから家庭外に発散できる場所を求めていました。つまり、奥様の不貞行為疑惑は、崖っぷちでのSOSだったのです。

しかし夫であるBさんは、男は外で仕事に精を出し、女は家庭を守るものという昔ながらの家庭像に対して違和感を持つことなく育ってこられた方です。育児の大変さや妻の孤独に思いを馳せることもなく、仕事で結果を出すことだけに力を注いできました。必死で働いて家族を養っている、という意識が根底にあるため、夫婦のパワーバランスは無意識のうちに夫が上になっていたのでした。

問題の状態を具体的にイメージ

 妻の苦しみは破裂寸前の風船のような状況ですから、Bさんが力で攻撃すれば、破裂してしまいます。Bさんご自身が離婚を望まない、お子さん達のためにも良好な家族関係を築いていきたいとお考えでしたので、目指すべきゴールは明白です。そこから逆算して考えていきます。

お互いを許し合い、新たな信頼関係を築いていく

相手がどれだけ苦しんでいたのかを我が事として理解する

今回の件は、妻の不貞疑惑からBさんが不眠になるという流れがありましたので、事の発端となった妻の行動の奥にある真の思いをBさんが理解することからです。

不貞行為は確かに酷い行いです。夫婦関係においては殺傷能力の高い殺戮兵器のようなものです。しかし、そのような最終手段に手を出さざるを得なかったのは、それだけ奥様が追い詰められていたからです。本来であれば唯一無二のパートナーである夫と苦しみが分かち合えていたら、家庭外に活路を見いださずに済んだはずです。Bさんはそのことに気付かなかったどころか、妻も人間でありストレスを感じるという概念さえなかったことが最大の問題点でした。

人が悩みを抱える時、問題は必ず自分の中にあります。

内省したBさんは妻に謝罪し、これからは対等なパートナーとして支え合っていきたいと意思表明をしました。Bさんの気持ちを受け取った奥様からも心からの謝罪があったことでBさんの溜飲も下がり、夫婦の新たな信頼関係の構築が始まりました。

カウンセリングを受け問題と向き合う覚悟をしたBさんは、とても勇敢です。お子さん達にとっては、きっととても頼りになるお父さんとして、これからもご家族を力強く守っていかれることと思います。

※実際のケースを基にしていますが、お名前や年齢などの設定は仮のものです。

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