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好きなことなのに辛いんだ、と彼は言う

社会人2年目になる恋人がいます。

私はというと服飾の大学に通う3年生です。

彼は建築事務所で意匠設計をしていますが、毎日残業に追われる日々です。仕事が終わると必ず電話をくれるのですが、決まって22時半過ぎです。  彼の「疲れた、お腹すいた、会社辞めたい」このフルコンボを毎日聞いていると、私も毎回「そんなに辛いならやめちゃえば?」と言ってしまいます。

以前は彼も社会人1年目、入社4か月目の時に1回転職をしていました。 その時の転職は建築から建築でした。最初のところは14連勤で寝泊まりだったそうです。たしかにきつい、自分の時間はない、納期は迫る。無理だ。 今務めているところも残業時間は80時間を超え、月に2回くらい休日出勤があります。学生の私は何もわからない、毎日やめたいと聞かされるのにうんざりしていたのでやめればいいと言いいました。彼は何も言わずそうだよね、と言いました。

「俺、デザイン向いてないのかな」

ある日また彼が仕事終わりの電話で私に言ってきたので、私は「毎日嫌だって言ってるし向いてないのかもよ」と言いました。

毎日会社から駅、駅から家まで合計40分くらい電話をしているのですが、毎日のことなので私もまたか・・・と思っていたのは確かです。電話を切った後私は彼のことが好きなのに愚痴しか言わなくなった彼からの電話が嫌になってたことに気が付きました。彼への態度は冷たくなっていたし、返事もしたりしなかったりで都合のいい話かもしれないけれど、仕事の愚痴しか言わない彼はあまり好きではない。

あぁこれは彼もそうなのかもしれないと。

大学に進学する時の学部決めって1回自分の将来を仮決定するわけじゃないですか、だから芸大の建築デザインに進むと決め、就職先も建築業界に飛び込むぞ、と夢を持った青年だったのに日々の疲労に振り回されて考えることすらわからないくらい疲れてしまっていました。

就職を考えだす時期になって働くってなんだろう、私も彼も毎日のように考え話し合います。しかし彼は疲労に心を打ち砕かれ、私は出たことのない社会に漠然とした不安だけを植え付けられた気分になって2人でつらくなってました。

どんなに好きなことだったと思っていても、それが続くとは限らない、自分に合うとも限らない。自分の時間をそんなに捧げてまでもうできないと彼は言います。それは逃げでもなんでもなく自分の人生をちゃんと考えた上での話なのでよかったと思いました。

働き方改革だ、ブラック企業だ、国民年金だ。難しいです、いきなり社会人になって合わなかったからってすぐはやめられない、残業は少ないって聞いたのに毎日終電近くまで仕事に追われる。彼はそれでもまだ体力的にも若いしこの残業にも慣れてきたから頑張れるからもう少し頑張ってみると言っていました。こんなに働いてまだ働かなければならないのか、私はまだ漠然としています。みんなが少しくらい手を抜いて少し早く家に帰って家族と過ごすことを選んでも社会は回るはずだし回らないならシステムとして成り立たせるべきではないのか、と。

良いように使われて、疲れすぎてただ従うだけになってしまわないように、日本人は働きすぎだよね、と笑いながらバイトで残業させられてる友達を見るとなぜ笑っていられるのだ、深刻な問題ではないのか。

国の意識なんですかね、日本の政治に精通しているわけでもないので何とも言えませんが未来を託されたというよりしりぬぐいに使われている気分。

辛いからってやめれないんだよ、生活があるから、そうかもしれないですが自分の時間や大切な人との時間が賃金と取り換えっこになっていることを忘れないで何を大切にして生きていきたいのか、きちんと考えていきたいです。

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