うつろ。うつろ

 雨降りしきる中。家までたった10mほどだが、車内で雨宿りをする。さっき集落から出てきた車に道を譲ったがため、回り道をしたその数分の間に雨足が強まっていた。そんな日もあるか。そう思いながら、スマホをWiFiに繋ぎ直す

 今日も今日とて憂鬱に任せ、もうどれだけ考えて"結論"を出したか分からない生きる意味を思案する。思い悩むことは無駄だと精神科医は言っていたが、私はそう思わない。人が考えることをやめたらただの葦だ。弱くて儚い、かどうかは知らないが。思い悩めるのは人の特権に思える

 こんな雨の中でも家族は各々がすべきことをしに出かける。私は自らの役目を放棄して今日も楽に引きこもる。町では色々な出来事が起きていることだろう。善意も悪意も飛び交い、色々な糸が日々を編む

 ああ、悪人でさえも役割をこなしているのに私はなんなんだろう。人の役にも立たず、仇にもならず。認識の外側で細々と息をしている。子どもの頃から希望に満ち満ちてはいなかったが、今の私はもはや生きているとも言えないのではないか

 グルグルグルグルと回る思考の渦。その中心は変わらず、行き着く場所も変わらない。なのに思考を溜めては流し、また溜めては流ししている。誰の、なんの役にも立たない無意味を繰り返す。思考が深まるわけでもないのに

 テレビを見ていると全国の学校を紹介するコーナーが流れてくる。優秀な子たちだ。過去の私はもちろん、今の私でも彼らの足元に及ばないだろう。私はなんのために生きてきたのだろうか。人の努力を否定して、自堕落的に。言い訳を積み重ね、嘘を言い聞かせ。自分を見ていると虚ろだと感じた

話すことは好きだった。書き物をすることも。だけど人と比べ、劣るところばかりが目に付く。自分は気持ち悪がられているのではないかと感じる。人に接触することはおろか、近付くことも怖い。怖い。怖いでは無い。それが憚られるだけだ

 私が変わる日はこない。今日変われない人間は明日も変われない。きっかけなんていつでも、なんでもいいはずなのに。ひたすら眠っていたい。それはもう死んでしまいたいということだろうか。死んでしまうことにも無気力になっているだけだろうか

 時間は日々巡るのに。自然はこんなにも美しいのに。私はなんなんだろう。私に価値がないと分かっていても考えずにはいられない。地面に叩きつけられた雨が霧になって立ち込める。視認を許さないその向こう側に渡れたら。人は、少しくらい私に興味を持ってくれるだろうか。そうなっても。そうなったとしても。その時には手遅れなのだけどね

 少しずつ思考が身体に戻る感覚。そう。さよなら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?