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未来の「私たち」へ そして、対話・協働する皆さまへ

これは、UCI Lab.合同会社が自ら就業規則を作成しようと取り組んだプロジェクトから生まれた『働き方の手引き』より、「はじめに」を転載したものです。


はじめに


 この「働き方の手引き」は2022年11月から2023年12月までの1年間にわたる、UCI Lab.メンバーの粘り強い対話を通じて生まれました。法人組織としての要件を満たしつつ、私たちらしい、私たち自身に使いやすい内容と構造と文体の就業規則・社内制度づくりを目指した社内プロジェクト。メンバーが、対等に率直に自身の考えをひらき、また相手の考えを受け止める場をつくり進めるために、ファシリテーションとコンサルティングを第三者に依頼して取り組みました。

 プロジェクトの直接的な成果目標は、事務手続きをスムーズにするルールや、一般的な就業規則項目の整備です。しかし、私たちはそれに加えて、UCI Lab.らしい働き方をこの機会に言語化し表現しようともしました。そして、堅苦しさやカタカナを避けたい思いから、あえて「おやくそく」と暫定的に名付けたのです。おやくそくづくりのための、対話を通じたUCI Lab.らしさの確認作業は、意外な発見も多く、改めて確認できたことがたくさんある、とても有意義な場でした。

 しかしながら、いざ私たちらしさを「おやくそく」として規則や制度の形で言語化したとき、私たちはそこにとても居心地の悪さを感じました。そして、そのことを正直に伝えあいました。自らつくったのになぜ? 私たち自身もとても戸惑ったのです。そして、悩んだ末に規則や制度というアクターがもつ家父長制的な影響力を改めて発見しました。

 例えば、「**をしないように」という内容を「**しましょう」と書き換えても、そこに潜むパターナリズム(家父長制)は消えません。制度による「支援」も、私たちには馴染まなかったようです。そこには、会社と社員の違いが前提にあります。しかし、私たちは自分達全員で会社を経営し、かつ健やかに働ける場にしようとしていて、そもそも見えない法人格と被雇用者というような距離はありません。制度をつくる人と運営する人と利用する人は、すべて同じ「私たち」なのです。

 手当のようなお金で何かを促進する制度を設けなくても、率直に要望を出し合えて意見を交わせる環境や関係を私たちは今すでに手にしています。そして、それを維持し続けたいと改めて思いました。
 私たちは、それらを単なる理想や組織内のみの制度として捉えていません。このような組織の自律性のために、これまで内外で注意深く組織のあり方を地道に整えてきたのです。

 そうして辿り着いたのは、私たちらしさとは(規則や制度がなくても)、自律したひとりひとりが、互いや社会を受容し、居心地の良い環境でのびのび仕事をして、健やかにいるために気配りしあうことを重視するような、いわば価値観や判断基準を、日々の関わり合いを通じて共有している状態という認識でした。
 そのような「大切にしたいこと」と、あらかじめ具体的で詳細に記述しておく制度・規則とは相性が悪いことに、言語化してみて初めて/改めて気づいたのです。価値観や判断基準は、行為より先に言語化される(固着する)ものではなく、日々の関わり合いを通じて生成し共有され続けるものでありたいと、私たちは考えました。

 そんな組織と制度は、どうすれば折り合い/織り合いが可能になるでしょうか。組織運営の観点からは、組織の大きさや目標や成熟度によって、最適な規則や制度が規定されます。ならば、私たちの規模では、忙しくても慣れてきても対話を欠かさないための場づくりのしくみと、業務をスムーズにするための最低限の規則があれば充分ではないか、そう考えました。「おやくそく」ではなく支援のような受動性もない、私たち自身の「手引き」です。

 この手引きでは3つの領域と、それぞれに3つの階層で構成されています。さらに、思いがけず「UCI Lab.の実践」マップが副産物として生まれました。手引きの3つの階層とは、日々のちょっとした判断や定期的な対話の前提になる「指針」と、すでに話し合って「合意していること」、最後に法人組織として最低限に絞り込んだ「業務円滑化と会社を守るための規定」のこと。その他の、一般的に備えるべきだと言われている(パターナリズム的)規則条文案は、私たちの対話の結果によって削除しました。

 そのため、私たちの働き方の手引きは法律的な就業規則としては、あえて不完全です(そもそも従業員10人以下の企業には義務付けられていないのですが)。自分たちで始めたのに、自分たちで当初の直接的な成果目標を変容させる。そのようなプロセスと決断自体に私たちらしさが、目指す柔軟さが表れているのかもしれません。面倒だけれど、全員の納得感を重視し、ひとりひとりの思いを置いていかない組織であること、一貫して対話を大切にする組織であることが、UCI Lab.合同会社らしさだと定義したいと思います。

 だから、この手引きは、私たちの対話の実践を通じて、常に手直しされ続けることを願っています。

2023年12月8日(金)
UCI Lab. 合同会社
 渡辺隆史
 大石瑶子
 田中陽子
 松浦はるか



”思いがけず”生まれた「UCI Lab.の実践」マップ


就業規則をつくる予定で(ほぼ)つくらなかったプロジェクトの詳細な経緯はこちら


「UCI Lab.の実践」マップの解説と「働き方の手引き」の詳細はこちら


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