野菜作りは、未来づくり
今週はマンガをお休みしてこちらのお題で野菜作りってこんなに楽しいよね!ということをプロの農家目線としてお話ししてみようかなと思います。
1.野菜作りの楽しみってなに?
【植物の声が聞こえるようになります】
別に本当に耳に野菜の声がヒソヒソと聞こえるというわけではありません♪
植物は様々なサインを出していますが、農家はこれを読み取っていかないといけないわけです。植物も虫にかじられると化学物質を生成して自分を守ったり、ブルームというロウ物質を出すことで余分な水分を弾き細菌感染などを防衛していきますがどうしても
動けません!
しゃべれません!
当たり前なのですが。
なので植物がチラッ、チラッっと控えめに出してくるサインを人間側が機敏に察知していく事が大事です。それも大量に。
サインを見て
・水が足りないよー
・栄養素が足りないよー
・虫が来てるよー
・土の中の微生物に攻撃されてるよー
・暑いよー
・寒いよー
等々
サインの内容によって葉に出る症状、根に出る症状、実に出る症状本当に様々あります。
こういったことを学び、検証を繰り返していく事で植物の声が聞こえるようになります。そして声が聞こえるようになってから農業の本当の楽しみ
植物の奴隷
状態になります!!声が聞こえてくると本当に奴隷にならないといけなくなります。とても大変ですね!そして、とてもとても楽しいですね!!
2.野菜作りのコツ
よく言われますが、野菜作りで最も大切なのは土作りです。
そもそもなぜ土作りが大事なのかと言えば圧倒的に肥料持ちがよくなり少ない量の肥料投入で良品ができるようになるからです。
実際にうちの初期のころと今の違いをざっと比較します
こちらは今のニンジンです
地元の人には良い肥料を与えてるのだろうとか、高い肥料を与えているのだろうかと質問されたこともあります。
確かに有機肥料などは非常に高価な物もありますが、うちは国が収集しているニンジン農家さんが使う平均的な肥料コストの概ね7割ぐらいのコストで生産しています。
大事なのは投入する肥料ではなく、投入する肥料をきちんと根が吸えること
根域の広さ
であると考えています。根域が広がるようになれば僅かな肥料でもしっかり全部キャッチしてくれますが、根域が広がっていなければ高価な肥料をたくさんやっても全く吸収されず地面の奥へと流れて行ってしまうだけになります。
なので野菜を作るときに栽培の本などで必ず書かれている
窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)ですが、これらを与えることは大事ですし、概ね植物ごとにどの程度必要かということは既に様々な研究で分かっています。
では
必要な窒素、リン酸、カリウムの量
と
投入する窒素、リン酸、カリウムの量
は本当にイコールなのだろうか?という疑問がある日ふと湧きました。
例えば先ほど比較写真にもありました太りも良い今のニンジンの方が過去のニンジンより肥料の投入量は少なく、窒素でいえばむしろ標準よりもかなり少ない値で与えていますが、それでも太ります。
大事なのは投入する量だけではなく野菜がキャッチできる量、すなわちその畑における根の広がる領域です。
こちらの画像をみてみましょう
④収穫の絵に注目してください。
普段収穫で取れるニンジンでは絶対分かりませんが、実は収穫する根より更に深い位置にもたくさん根を延ばしています。これは他の作物でも一緒ですがこの普段見え難い細根部を意識すると野菜栽培は飛躍的に向上すると思います。
肥料をどのぐらい投入するのか?という基本の思考から更に1段考え方を進めて、植物はどの程度キャッチするのか?という思考になっていきます。
こう考えるようになると土作りとは何か?という部分がより理解できるのではないでしょうか。
土作りとは
根が広がりやすい環境を整えてあげる
という事になります
土作りの技術的方法はたくさんありますが、うちの子野菜で大事にしている要素は以前こちらの記事でも書きましたが何よりも地元にある良い物を利用することであり、地元の産業サイクルを回すことです。
この辺は様々なやり方がありますので色々試してみてくださいね!
土作りの方法論はすごく深いので・・・その道の専門家の方に任せた方が良いかなと思いますが要望がありましたらうちの考え方をまた記事にしようかと思います。
3.野菜作りは、未来づくり
2にかかることでもありますが野菜を作ることはそこの土を作ることになります。農業の多面的価値をよく言われますが、人間がその生命維持活動を行う中で出す様々な産業廃棄物と呼ばれるもの、特に食品などの残渣を畑の微生物が吸収再生してくれることは農地の非常に重要な機能であると思います。
しかし、どうしても
農地は価値が安いです!
農産物も安いです!
そのため農地転用は都市部でどんどん行われているかと思います。
それ自体は産業発展のために否定する気はありません。
ただトイレのない家が存在しないのと同様、人口が集中していく都市空間だからこそ食品残渣や雑草などを吸収分解してかつ新たな食を創出してくれる
農地、微生物
という存在は
都市という機能のトイレ的な役割としてもっと評価してあげても良いのかなと思います。なので投入したものをすぐ分解してくれるぐらい土ができた農地は都市部に人間が集まれば集まるほど非常に重要になると思います。
例えば
動物の肉を食べれば骨が出ますが、骨の焼却灰は良いリン酸肥に
景観を守る草刈りをした草も土壌微生物を活性化させる土壌改良材に
人が食べた食品残渣も土があれば堆肥化でき、そこからまた新たな食を作れます
そんな分解力豊富な土を作る野菜作りのサイクルは
間違いなく未来の子供たちへとつないでいくための活動かなと考えています
この記事を読んでいただいた方
小さな家庭菜園、プランター菜園でも構いません、もしよければ小さな小さな微生物の分解サイクルを体験してみてください!
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