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不登校を選んだ息子の漢字学習記録後編

小1秋に不登校を選んだ発達凸凹な息子はこの春小学3年生になった。現在はホームエデュケーションということで、自宅を基盤に日々彼らしい毎日を送っている。息子は小さなころから本が好きだ。少しずつだが、読む本も難しくなり漢字もずいぶん増えてきている。それもあって、私は彼にとって漢字学習は大切だと感じていた。だが息子は書字が苦手なため、漢字をおぼえること、漢字を書けるようになることに苦労していた。それでもどうにかこうにか試行錯誤で時間をかけて、なんとか2年生の漢字まではそれなりに記憶できた。

よし!このまま頑張るぞ、と3年生の漢字に突入したのだが、ここで記憶できるスピードがぐっと遅くなってきたのだ。そして忘れる率もグーンとアップ。ついでに一度覚えたはず2年生の漢字も、3年生を覚えるうちにボロボロ抜け落ちていく。これはまずい。どうしよう!何かいい方法はないだろうか?と悩みながら息子を観察していると、抜け落ちにくい漢字があることに気が付いた。そして、その漢字たちの共通点は「聴いて覚えた漢字」であることだったのだ。

息子は発達検査などで視覚優位だと言われることが多い。確かに映像を加えるとずいぶんと伝わりやすくなることも多くある。このあたりは百聞は一見に如かずという言葉もあるので、誰しもそうかもしれない。だが、一緒に暮らしていて感じることは、視覚情報に圧倒されてうまく必要な情報を処理できていないことも多いということだ。

一般的に考えても、視覚から受け取れる情報は多岐にわたり、とても量が多い。人はその中から、必要な情報だけを抜き取り、不要な情報を薄めて情報処理をしていくのだと思う。だが息子には「情報を取捨選択する力が弱い」という特性もある。そのためなんでもかんでも視覚情報を拾う。結果肝心な部分が何なのかわからなくなってしまう。

そんな彼の認知スタイルを考えると、以前まとめた「動作の不器用さ」以外にも漢字を書くことが難しい理由があることが見えてくる。例えば同じページに複数の漢字が記載してあるドリルでは、視覚情報が多すぎるのだ。いろんな大きさの複数の漢字やカタカナにひらがな。例題の文章。交差するたくさんの線、様々な色、文字の濃淡、更に数字に矢印、なぞり書きマス目の四角い図形など大量の情報に晒される。そのためどこを注視すればいいのか。何をどう書けばいいのか、どこをどう記憶すればいいのかわからなくなるのではないだろうか?そんな彼にたくさん漢字を書かせる学習をさせることは、視覚情報増やすことに繋がりますます混乱を招いているのではないだろうか?「書いて覚える」という方法自体、息子の学習には全く合わないことになり、息子が書くことを過度に嫌がるつじつまが合うようにも考えられる。

私は普段、彼とのかかわりに聴覚言語による情報伝達を重視している。息子は聴覚優位な側面もあり、耳からの情報収集を好む傾向がある。もちろん「情報を取捨選択する力が弱い」という特性があるので、聴覚情報も多すぎると混乱を招く。そのため、伝え方や言葉選びには工夫が必要だが聴覚情報には視覚情報ほど大量の情報は含まれない。視覚情報だけでは情報の波にのまれてしまう息子に聴覚からポイントを端的に伝えることで、情報を取捨選択する力の弱さをサポートすることができるのだ。

本題に戻ると、彼が忘れずに記憶できていた漢字の共通点は、Eテレの番組「ことばドリル」内の「うたって覚える漢字ドリル」コーナーで紹介された漢字であることだった。
このコーナーではメロディーに合わせて漢字を部品に分ける歌詞が流れる。更にテレビ画面いっぱいに漢字が1文字だけ表示され、歌詞に合わせてつくりや部首がアニメーションで強調される

例えば、糸へんの漢字歌の場合は
♪「糸」がいっぽんゆらゆらと
 「田」んぼに行ったら 「細」くなり
人に「会」ったら 「絵」かきさん
「白」い「水」べに 「線」をひき
「目」のしたながく 「組」みあわせ
「ノ」「レ」「一」 「みぎまげ」 ちょいと「はね」て「氏」
まっしろい「紙」の できあがり

息子はこの番組が好きだった、そしてこの歌で覚えた漢字だけはしっかりと記憶できていたのだ。つまり彼は書いて覚えるのではなく、目で見ながら聴いて覚える方が記憶しやすく忘れにくいということになる。

そのことに気づいてからは、できるだけ漢字の学習時は、漢字を言葉でテンポよく語呂にして伝えるように心がけた。例えば「親」なら「立」って「木」から「見」てる「親」のように。以前よりも頭に入りやすい手ごたえはあった。だが、息子の学習は、現在私が一人でサポートしている。語呂を一人で考えてその都度伝えていくことはかなり大変だった。
そこで教材を探したところ、学研から発売されている「小学全漢字覚えるカード」を発見!語呂合わせで漢字を覚えることをコンセプトにしてあるものだった。

この本を使うと、私が語呂を考えずにすむ。笑える語呂合わせも多いので好きな子は好きだと思う。だが結論から言うと、息子には合わなかった。この本では部首名をあまり使わず、漢字の部品をカタカナとして語呂合わせに組み込むことが多いため、部首名で漢字を書いてきた息子の場合、例えば「草かんむり」を「サ」とカタカナで表現されてしまうと、何を書くのかわからなくなってしまう。情報を取捨選択する力が弱い息子に、これ以上情報を増やすことはやめておきたい。また非常にせっかちなので漢字を探すことが大変なカード式というのも合わなかった。

となると、やはり彼に合うのはワンタッチで事が済むデジタルに限る。
ということで、タブレットで単語帳を作るアプリを使い、部首名を使う語呂合わせを少しずつ自作することにした。
進んでいく方向性がはっきりしてきたそんな時、私は運命の教材と出会う。それは電子書籍のミチムラ式「漢字eブック」だ。

唱えて覚えよう | ミチムラ式漢字学習法 | かんじクラウド株式会社 (kanji.cloud)

なんとなくネット検索をしていて、偶然みつけたこちらの教材。最初はなんだかあやしいなぁなんて思いながらサイトを見たのだが、漢字eブックには私がこれまで息子の漢字学習で試行錯誤してきたことが、余すことなく詰め込まれていた。
自分でもわけが分からないのだけど、漢字eブックの使用動画を見ていると涙が止まらなくなった。これでもう大丈夫だって。息子は漢字学習で苦しい思いをすることがないって確信出来て。息子のような子のことを真剣に考えてくれる人がいることが嬉しくて。

私は自分で思うよりずっと必死に、真剣にやってきたのかもしれない。この時の感動は詳しくはInstagramの投稿に書いたので割愛するが(笑)下に投稿を張っておく。この投稿は、保存が1500件を超え、いいね数を上回るという、私の投稿にしては過去にない数になっている。同じように悩んでいる人も多いのかもしれない。


ここ一年、何度も私は学校に相談した。担任、教頭、校長。同じ質問を複数の先生にしてきた。何でもいいから書字の苦手な子の漢字学習にいいアイデアはありませんか?と。そのたびに「書くしかない」「学校に来れば書く」「周りのみんながやってたら書く」そう言われてきた。
そんなことはないと、一択しかないなんて絶対におかしいじゃないかと。そう思ってやってきた試行錯誤を「漢字eブック」という教材が肯定してくれたように私は感じた。
この教材を使うようになり、息子は以前の苦しさがウソのように楽しく漢字と向き合っている。先日は息子から、2年生の漢字忘れちゃうから2年生の漢字eブックも買って欲しいと頼まれた。こんな日が、こんなに早く来るなんて思っていなかった。

私は息子の不登校生活はこれからも続くと思っている。そして家庭学習の期間も長く続いていくだろうと思っている。そんな中、一番の苦手とも言えた漢字学習への不安感がなくなったことはひたすらありがたい。肩の荷が降りたような気持ちだ。この教材を考えて下さった道村先生には感謝しかない。
そして、合う方法さえ見つかれば息子は楽しく学ぶことができるのだと、私の中で自信にもなった。学校での学び方は息子に合わないが、きっと息子に合う方法はあるはずだ。学ぶことが好きな息子のためにも、これからも彼に合う方法を諦めずに模索していこうと思う。



読んでくださったみなさまへ
ながーい文章を読んでいただきありがとうございました。
「漢字eブック」は漢字学習に苦労している子への新しい学習視点を生む教材だと私は思います。使ってみてよかったと思われたときはどんどんシェアしていただけたら嬉しいです。
本家のページでも(感動しすぎて私は道村先生に連絡とっちゃったので)私のnoteやInstagramでも!息子のような子が漢字を嫌いにならないように。
嫌がるにはそれなりの理由があるという事。認知スタイルはひとりひとり違うこと。そこを考慮することで楽しく学ぶことができるという考え方を大人が持つということ。それらが置き去りにされがちな現在の教育の形に、一石を投じ、学ぶことの楽しさを子どもたちに感じてもらえるきっかけができたらいいなぁと。私はそんなことを思っています。


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