COVID-19により演劇を奪われた絶望からの少しの光 (読み合わせはいいよって話)

1ヶ月ぶりに更新します。元々、両親に言われた「あれが1番面白いという現実」について考える為に始めたnoteだったけど、余りにも環境が激変し過ぎて、余り演劇の事を考えたくなくなっていました。ので、ひっそりとしていました。人とも余り関わらず、演劇の事も考えず、時が来るのを待とうと。ひたすらゲームをしていました。FF7リメイクをはじめ、時間が無くて楽しむ余裕が無かったRPGを中心に、ゲームの中だけでも冒険しようという日々でした。それでも現実は変わらず、むしろ悲惨になっていく日々です。演劇とどう関わるか、に関しても大きな気付きが生まれてしまいました。それは、今の暮らしを続けるなら、仮にコロナが収まっても、もう演劇出来ないかもというものでした。

事の発端は、ある出演依頼を頂いた事でした。公演は5月後半。観客を入れない演劇フェス。会場は、私なんかじゃそんなに簡単に立てないような大きなところ。こんな状況の中、自分に一体何が出来るのかと、どんな感覚になるのだろうと、二つ返事でお話を受けようと思いました。連絡を受けた瞬間は。しかし…その決意は1分後には鈍っていました。

まず、私が実家暮らしという事。両親も健在ですが、2人とも初期高齢者で、コロナにかかると死亡リスクは高い。更に父は、心臓も肺もやった事があるという基礎疾患持ちです。仮に本番だけ生のやり取りになるとしても、万が一そこで貰ったら?それ以上に、そこに対して両親が非常にナーバスで、家庭内がめちゃめちゃピリついてしまうのは確実です。

では1人暮らしでも始めればいいじゃないかと思いますよね?そうでもないんです。その理由は、私の労働環境にあります。知ってる人は知ってますが、私は一族経営の会社に勤めています。その一族というのは、私、内田一族です。つまり父はただの父では無く、ええい、つまり私の勤める会社の会長でもあるのです。一緒に働いている、という事は、一人暮らしした所で俺が演劇するなら感染リスクは変わらないし、嘘ついてでも演劇するか?といっても、木・金も本番なら有給取らないといけないですからね、それでバレちゃうなあと。年1.2回くらい、金曜だけ有給取るとかなら出来るかもしれないけどね…仮に緊急事態宣言が解かれても、出歩くだけでリスクみたいな一度生まれた空気を払拭するのは難しいと感じてます。ワクチンが出来ない限り、或いは、一人暮らしをして、かつ転職をしない限り、仮に世の中が以前のような演劇活動が出来る状況になっても、私が今までと同じように演劇をやるのは難しいんだろうな…と、今回の出演依頼を貰った時に全てを悟りました。そして、その日のうちにお断りしました。

全くとんでもない事になったな、と思いました。そうして私はますますふさぎ込んでいた訳です。こんな状況の中で創作意欲なんか湧く訳がない。どうしていいのか分からないまま、何かやる気が起きるのを待つ事にしました。

そんな時、「古典戯曲の読み合わせをしないか」と誘いがありました。元々「古典はやっぱりやらなきゃ入ってこない」と主張して、読んでその普遍性や優れた点を劇評等も交え勉強しよう考えようと内々で話していたのですが、本を買うまでは行ったものの、演劇活動が忙しすぎて立ち消えになっていたものを、俺に話された方が逆提案してきたのでした。元々zoom等でやる演劇活動は、読み合わせが最も効果的だろうと思っていたのでそれはいい提案だと、やる事に決めました。ただ、一体どんなものになるかはやってみないと分かりません。期待と不安を胸に、少しの予習と共に始まりました。

タイトルは、チェーホフの「かもめ」。言わずとしれた名作で、私も2度ばかり観ていますが、当時は演劇を観るのも下手くそでイマイチ内容が入ってきてませんでしたので、ほぼ初体験です。で、結果はというと…いやーとても良かった。かもめがどんな話なのか良く分かったし、ちょっと予習をする事で、アレルギーのあった人名問題も全然クリア出来た。悲劇的な雰囲気を纏って上演される事も多いイメージで、そしてチェーホフは登場人物への皮肉も込めて「喜劇である」と言ってるのかもしれないけど、滑稽さと悲劇の表裏一体感が読んでみるとビンビン伝わるし、そうした奥行きも含めてやってみたくなる!だから100年以上愛される名作戯曲なんだなと、まだ前半を読み合わせただけですが、強く強く感じています。続きが楽しみです。

そして、コロナの絶望的な状況の中読む台詞は自分に生気を戻してくれるような感覚で、前々から感じていた「上演目的じゃなくても演劇を含む芸術活動は人の心を救う」を体現した瞬間でもありました。そりゃ人前という危機的状況の中上演する方が個人的には成長出来るし、どう面白くするか頭を痛めながら考えたい。けれど今みたいに時間があるからこそポジティブに積み重ねられるものがある。わかっちゃいたけど演劇に対してポジティブになれなくてアクション出来なかったのが、声を掛けて貰ってやったことでこりゃやった方が楽しいな、と気付けた。

いつか来るその時の為に、今出来る事を。今までやろうと思ってたけどやれなかった事で、ネットを介しても最大効果に近いものを得られるものがあった私はラッキーでした。

コロナ禍が終わる頃には近代戯曲の面白エッセンスをちょっとは捉えられるよう、バージョンアップ出来るよう楽しい引きこもり生活を送ろうと思います。

そして、今のうちにこっそりチェーホフとかイプセンとかベケットとか古典読みてえぜ、って方、いつでも声を掛けて下さい。戯曲をどうにか各々手に入れるのが条件になってしまいますが無知を解消していきましょう


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