1.私たちはなぜ、「障がい」と書くのか(1) 「障碍」ではなく「障がい」が広まった

 最近は公的な機関が出す文書にも、身体や精神のショウガイを「障害」と漢字二文字ではなく、「障がい」と漢字と平仮名で書かれたものを見かけるようになりました。
 「障がい」が使われ出した時期は、はっきり記憶していません。気がついたら「障害」の「害」は他に害を及ぼすという意味があり差別を助長するので「障碍」を使うべき、といった主張をメディアで見かけるようになっていました。

 もしその意見に同意する人が多ければ、「障碍」の表記がもっと増えていいはずです。しかし現実には「障がい」という平仮名を使った表記が広まっています。*
 なぜ、こんなことが起きたのでしょうか。
*内閣府「平成29年度 障害者に関する世論調査」3.(10)しょうがいの表記
https://survey.gov-online.go.jp/h29/h29-shougai/2-3.html

 「障害」は差別的な表記だと指摘され、「障害」を使うことにためらいが生じ、かといって「碍」は常用漢字ではないし、なじみのない漢字なので、「がい」が使われたのだと想像します。「碍」の平仮名表記というより「害」の平仮名表記で、障害者に配慮した婉曲表現だと私は考えています。

 一方で、宝塚市*では公文書で、「障害者等の『害』には『害する』のほか『わざわい』の意味もあることから『害』の使用を控え、『がい』と表記」することを決定し、さらに現在では「障碍」と表記することになっています。
*宝塚市HP ID番号 1028821 更新日  平成31年3月29日
http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/s/shisei/1010515/1028821.html

 自治体や公的機関が「障碍」と表記するのは、差別のない社会を作るのだという意思を市民に示すには有効かもしれません。ただそのために、「障害」を差別的な表記だとして悪者扱いしたことから、「障がい」という漢字仮名交じりの表記が出現したのではないでしょうか。
 しかし本当に「障害」は使うのを控えるべき表記なのでしょうか。

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