1.私たちはなぜ、「障がい」と書くのか(3)校正の現場ではどう対応するか


 表記統一や校正は、クライアントからの指示通りに行うのが原則です。ただ、企画趣旨に沿って、こうしたらもっとよくなる、という提案をすることはあります。
 たとえば、著者が「障碍」にこだわって使っており、編集者から「障碍」で統一するという指示があればその通りにします。しかし校正の依頼があるのは、そもそも多くの人に読んでほしい、理解してほしいからなので、初出にはルビを振ってはどうでしょうか、といった提案はすると思います。

 また法令では「障害」が使われているので、法律の名称や法令の文の「障害」は「障害」のままです。

 では地の文章ではどうでしょうか。
 不特定多数を対象としているもので「障碍」にこだわる必要がない場合、または何も指示がない場合、「障がい」で統一する可能性が高いでしょう。なぜならそれが世の中の多数派だからです。

 校正校閲の講座で、参加者に「障害、障がい、障碍のうち、どれを使いますか」と質問すると、「障碍」はほとんどいません。あとは「障害」か「障がい」です。若い人ほど「障がい」派が多いという印象を持っています。参加者が20代中心のクラスで、ほとんどが「障がい」だったときは、そこまで浸透しているのかと驚きました。自治体の市民向け文書でも「障がい」をよく見かけます。

 表記統一では「長いものに巻かれる」というのも基準になりうるのです。
 それは、対象読者の読みやすさを大事にするという、印刷物やWEBコンテンツの宿命です。


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