ゲームとアンガーマネジメント
ゲーム性とイライラ
遊びの研究に関する有名な本『遊びと人間』[1]で、遊びの原則 (ゲーム性) が語られている。
a. 自由参加
b. 基準となるルールがある
c. 結果が未確定
d. フィクション (実生活から切り離されている)
e. 非生産的 (お金にならない)
自主的に参加し (a)、決められたルールの中で (b)、なんとか勝とうとする (c) 。そしてゲームが終わったら現実に戻る (d) という流れになる。
非生産的 (e) なことに時間を割いている分、楽しめることを期待する。しかし負けるとかえってイライラする。
それが実生活にまで悪影響を及ぼすと遊びを逸脱している (d)。私が遊んでいるスプラトゥーン2でも、少し前に実生活に悪影響を及ぼしているようなAmazonのレビューが話題になった[2]。
そもそも勝敗が分からない (c) から楽しいというのがゲーム性なわけであり、勝って楽しいのと負けて悔しいのは表裏一体だ。楽しむためには負けるストレスも避けられない。
この不可避の負けストレスへの対処法がゲームを長く楽しむ鍵だ。
なぜイライラするのか
最近読んだ書籍[3]にあったアンガーマネジメントの観点から考えてみる。
アンガーマネジメントは1970年代に米国で開発された心理トレーニングで、怒りと上手くつきあうことを目標としている。
アンガーマネジメントでは怒りは自分個人の考えから逸脱したことへの対する二次感情とされる。
自分個人の考え (コアビリーフ) : 「こうあるべき」「当たり前」と考えるような価値観・信念 (個人差あり, 状況で変動)
二次感情 : 背景に不安・失望などの一次感情がある
これを踏まえると、イライラしやすい状況が分かってくる。
考え・価値観の柔軟性・多様性がない (狭い)
そもそもネガティブになりやすい気分・体調
遊んでいくうちに自分なりの考えが確立されると、どうしても柔軟性・多様性が落ちていくのかもしれない。
(「戦略的に考えて長射程がヤグラに乗ったほうが良いのに、なんで乗ってくれないの!?」「足並み揃えないと打開できないのに、なんで単身で突撃するの!?」など)
また、ゲーム以外で落ち込んでいる時にゲームも上手くいかなかった時は、いつも以上にイライラしやすいだろう。
イライラ対処法
イライラしにくくする
価値観・許容範囲を広げる
事実 / 自分の解釈 を区別する
気分・体調がイマイチなときは遊ばない
(オフラインゲーム・他の趣味などの選択肢を持つ)
イライラのピークが去るのを待つ
怒りのピークは長くて6秒と言われている*。この時間の意識を怒り以外に向けるのが対処法になりうる。
言語化・数値化 : 何に対してどのような理由で何点ぐらいの怒りを感じたのか を分析する
小休止 : 一旦やめる, 深呼吸などのリラックスできる行動をとる
*ピーク6秒説 : かなり頻用されるが根拠となる研究は見つけられなかった (具体的な数字なので元ネタがありそうだが)
そのイライラは考える価値があるのか?
重大か × 自力で変えられるか という2軸で考える。
(対人ゲームの場合は、どちらも当てはまらないことが多い)
重大さ : ゲームなので実害はない (しょせんゲーム内の数値), しかも取り返しがつく
コントロール可能性 : 自分のミスであれば反省する価値があるが、仕様や味方は自分では変えられない
参考文献
[1] ロジェ カイヨワ. 遊びと人間. 東京: 講談社学術文庫; 1990.
[2] 沓澤真二. 負けたストレスで夫が乱暴に――「スプラトゥーン2」のAmazonレビューに反響 「自分の暴言に反省」「ゲームでなくプレイヤー自身の問題」. ねとらぼ; 2020 Jun 09. https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2006/09/news132.html. 閲覧 2021 Jul 26.
[3] 戸田 久実. アンガーマネジメント. 東京: 日経文庫; 2020.
おまけ - ゲームをやめる という選択肢
ゲームの理不尽さに不平を言うプレイヤーは多い。
システムが理不尽 (例 : 不利なゲームなのに勝ってもXp増加が小さく、Xp減少が大きいことがある)
特定の戦術が理不尽に強い (例 : シェルターやシールドは、撃ち合いテクニック勝負に持ち込めずに理不尽)
コンセプトを壊している要素が理不尽 (例 : スペシャルウエポンがさして強くない, スライドで塗りを無視する)
いずれも1プレイヤーとしては、とても共感できるものの、自分には変えられない事であり、批判に心血注いでも仕方がないように思う。私達プレイヤーがとれる選択肢は、3つ。
理不尽を使う側に回る
文句を言いながらもゲームを楽しむ
ゲームをやめる
しょせん遊びなのだから、嫌ならやめたって良い。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?