鈍色の純情

ジリジリとうるさい太陽の熱視線を
隠してくれる雲が私は好きだ。

生活の音を消してくれる雨はもっと好きだ。

雨粒が跳ねて踊り狂う水溜りは
ずっと見ていられる。

いつも世界は広いのに、
この世界には私しかいないように
感じさせる傘を広げて、
いつもするイヤフォンをカバンにしまい、
私は学校に向かう。

今日は雨だから、
多分は私は教室に2番目に入る。
いつもは1番目だけど、
雨の日は特別だ。

多分、席替えをしてあの人は1番前の席なはずだ。
私は、わざわざ教室に前から入る。
すぐに目があった。
狙い通りだ。

「日向くんおはよう、早いね。」

「ん、高橋さんおはよう。
今日は雨だから早めのバスに乗ったんだ。」

「日向くん、それ前も聞いたよ。」

「そうだったかな。」

「そうだよ。」

私は窓際の1番後ろの席に座る。

次の日も雨だった。

水溜りで踊る飛沫みたいに
私も少しだけスキップしてしまう。

昨日と同じく、教室の前から入る。

「日向くんおはよう、早いね」

今日も私は花瓶の水を変えて、

窓際の1番後ろの席に座る。

雨の日のあの思い出を何度も思い返しながら。

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