見出し画像

2024年2月25日「欲望、ゴミ収集車の3倍の速さ」

新宿にいった。久しぶりにいった。
新宿駅で電車を降りたとたん、人が多くて、
駅を進んでいくほどに、どんどん人が増えて行って
外へ出た瞬間、欲望の渦に飲まれそうになった。


私は、先月からバイトを始めた。
住んでいる街の清掃業者でバイトをしている。
ゴミ収集車に乗っている。

朝7:30に会社にいって、7:50にゴミ収集車に乗って会社を出発する。
8時ちょうどから集積所でゴミを取れるように準備する。
午前中は収集車3-4台分の収集をする。1台2,000kgほどのゴミを載せる。
朝は通勤の人が多い、通学の児童や学生もいる。
雨の日は、車が多い。移動に車を使う人が増える。
カラスにゴミが荒らされないように、黄色いネットがかけてある。
わかりやすいゴミ集積所にあるのはもちろんだけど、
道路沿いにポツンと置かれたゴミにさえ、黄色いネットがかけられている。

ゴミの収集は、スピードが肝心のようだ。
人がいる、車もくる、住宅が多く道も細い。
その中で、午前中で6,000kg以上のゴミを集めていく。
始めたばかりで、道なんで覚えていない。
道沿いにある集積所を見つけたら飛びつく。
先輩社員の指示ももらいながら、飛びつきにいく。
目の前に集積所があるけど、「あそこは後から取る」みたいな所も多い。
道順を覚えなければ、なかなか効率的には動けない。
車の乗り降り、積むスピードくらいでしか、時間を短縮できない。
それでも、やっていて楽しさがある。

集積所についたら、車から素早く降りる。
黄色いネットを取り除き、収集車の回転盤を回す。
運転手の人が下りてくる前に、ゴミを4つぐらい入れることができたら、良い感じのペース。


次々に行かなければいけない。
運転手は運転のことを、私は素早くゴミを回収することを考える。
黄色いネットは、すばやくぶん投げる。畳んだりはしない。
でも、ごみを取り終えると、近くの住人が出てきて、ネットを畳み、近くに収納している。
その瞬間に、その場所に人が生きていることを発見する。

仕事自体は、比較的単純作業だ。
力があって、身体が丈夫で、多少走れれば、誰でもウェルカムだと思う。
後は、汚れたり、家庭から出る様々な”ゴミ”に触れるのに抵抗がなければ、大丈夫だ。

この仕事は、貢献先が分かりやすい。
街の人。生活すればどうしてもゴミはでる。仕事をすれば街がきれいになる。
同乗する運転手。私が頑張るだけ、運転手は運転だけに集中できる。早く終われば、ゆっくり休むこともできる。
達成感を得やすい。1日ごとの仕事量が決まっている。
一生懸命やることが、誰かの害になりにくい。
頑張れば仕事が進んでいく。誰かが楽になる。
誰かの顔や面子を守るために、自分の出し方を調整する必要性が少ない。
やれば終わる。
やれば、役に立つ。

職場の人たちもいい人だ。
それぞれに個性はある。でも、仕事上、社員間での利害関係が少ない。駆け引きが少ない。
まっすぐ、自分のできることをやっている人が多く、人間関係が心地いい。

今の仕事は、自分にとって、精神的にとても楽な仕事だと思う。
この地でで生まれて、生きてきた人が、この会社で働いている。
若くて家族がいるから、働いている人がいる。
別の仕事で苦しくなり、この仕事に就いた人もいる。
この仕事20年超のベテランもいる。
そういう様々な人たちが、自分の人生と仕事の両方に足を付けながら生きている。
人が純真な気がする。


こうして平日にバイトをしているから、外を出歩くことが減った。
1か月ぶりに東京にいった。新宿に行った。
欲望が渦巻いている気がした。



駅前の広場で待ち合わせをしている男女。スマホをのぞき込んでいる。
壁にもたれていた女性に男性が声をかけ、「初めまして」と言っている。

2月の夜に肌を出す女性。
声をかける男性と、並走して歩く。きっと無視されている。

キリリとした化粧と明るい髪に群がる、スカウト、ナンパ。
強めの化粧と甘い匂いをまとった、水商売系の男女。
右腕にブランドバッグ、左腕に年配男性を絡ませる若い女性。

黒いアルファード。夜なのにサングラスをかけている運転手。
風俗の広告トラック。

交差点で写真を撮る外国人。
ポーズを決める女性、カメラマンはいつも男。
家族連れ。フードを被る黒人。ひげを蓄える白人。
大きな声で話す黄色人種。
3D広告、ネオン、居酒屋のキャッチ。
アダルトグッズ広告を大々的に出す量販店。
路地で相手の口に舌を入れ合おうとしている4-50代の男女カップル。



酒を飲んだ。
隣の席に座った男女は、SだMだと話しながら、マッチングアプリで見つけた人間を格付けしている。

ネットで3時間だと予約したのに、お店では2時間になっていた。
外国人店員さんが元気で明るいから許した。

謎の深夜料金15%。
気前よく飛ばした3万円強の現金。


欲望は金を飲み込むのが早い。
回転盤がゴミを飲み込む速さの、3倍のスピードで飲み込んでいく。
住人に貢献して、運転手を楽にしようと走って得たお金の3日分が、一晩で消えていく。


当分東京にはいかなくていいかな。
いま自分に積み重ねられることを、やっていきたいと思いました。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?