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個性と運命

こうやって文章を書いたり読んだりしていると、文字の羅列であるこの文章にも個々の癖だったり、その人らしさだったりがあるのが分かる。
顔も声も姿も見えない文字だけの世界でも、惹きつけられるということはあって、好きな文章、好みの文章というものに出会うこともある。

自分にはとても魅力的に思えても他者からしたら難解なめんどくさい文章にしか思えなかったり、単純で単調でつまらないと思う文章でも、別の人はなんて素敵な感性だ、と感じたり。リアルのその人ではなくその人が紡ぐ言葉がたまらなく好きで、男とか女とかそういうことではなく理屈でもなく心を捕らえて離さない。なんてこともある。

だからなんだって話。
生まれ変わっても、姿形が変わっても、あなたを見つけられる。なんてことがあるのかって話だ。
無いだろうね。それはどこかで相手が何かを発信しているから見つけられるのであって。見つけられると言うよりも見つけてもらうってことになる。発信してる何かをキャッチする能力が必要かもしれないが、見つける側だって何かしらアンテナを張ってるから引っかかってくるわけで。お互い何もしないでいて姿形の変わった相手を見つけられるわけがない。運命なんてそんなもんだ。

運命的出会いなんて、無いんだよ。

誰一人として同じ人間はいない。当たり前のことだ。この先の未来にはもしかしたらクローンなんてこともあるんだろうけど。今の所そういう存在は出回っていない。
個々人が持つ個性をどこまで他の個性が捕まえられるかなんてのは膨大な砂漠の砂の中から小さな金を見つけるようなものだ。その辺りにごろごろと転がってる似たような個性に惑わされいつの間にか掻き消される。

いつかどこかで会える、いつかどこかで見つけてもらえるなんてお伽話の社交辞令だ。
信じていたって救われない。個性を確固たる個として発信できるのは限られたごく一部の存在だけ。同じものは一つして無いけれど、埋もれて行くんだ。手を挙げ、手を振り、ここに居るのだと声を上げなければ、なんてことない日常の風景に紛れ見向きもされず皆通り過ぎて行く。ただそれだけ。

もしも何かを感じたとしたら。それは単に気のせいで、甘えという狡い罠だと思えばいい。運命的個性なんてものは生憎持ち合わせていないんだ。

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