#51 とけい。【箇条書き日記】
息子が「チャレンジ」なるものにチャレンジしている。
しゃべるタイプの時計のおもちゃ。
勉強している。
うん、時計が読めるのはいいことや。
ねぇ、お父さん。
なんや。
どうして、時計が必要なの?
それは、時間がわからんと困るからよ。
なんで時間がわからないと困るの?
そりゃあ、世の中っちゅうもんは時間を中心に回っとるからやで。
ふーん。そうなんじゃねー。
おう、そうや、そういうもんやで。
そういうも…ん?
いや、まてよ。
まてまて。
この違和感、なに?
息子の質問に対する答えは、これであってるのか?
おれの説明は正解なのか?
いや、この質問、
すげぇ哲学的なんじゃね?
真剣に考えると、なんか違う気がするな。
たしかに、時間を中心に回っとるのは事実やな。
学校も、仕事も、遊びも、全てそうや。
でも、仮に時間がわからんかったとしたら困るのか?
別に、明るくなったら集合したらいいし、暗くなったら解散でもええかもな。
学校の場合も、なんとなく集まって、勉強すりゃいいんやないか?
仕事も、頑張ればそれでいけそうな気はするな。
遊びなんて、そもそも時間とか関係ないかもな。
でも、時間が僕らを縛っている。
なぜ?
いつからこんなに時間を気にし始めた?
幼稚園にはすでに時計あったな。
でも、江戸時代とかは時計とかみんな持ってなかったんじゃね?
どうしよったんやろうか。
宵のコクとか、明け方とか、なんかそんな表記が多かった気がするな。
昔の小説とかは。
そしたら、時計っていつ発明されたん?
そもそもなんで時計開発したん?
時間の概念て、何?
なんか、めっちゃ気になってきた。
いかんいかん。
ここでググったら負けや。
昔はグーグルなんてなかったんやから。
ひたすら自分で考えるんや。
うーん。うーん。
太陽が出る時間とかを上手に数学的に測ってみただけ?
で、それが便利だったから、世の中もその便利さに気付いたんかな?
いや、元々はおそらく、集合時間とかに遅れるやつがおって、そいつらを縛るために作ったんじゃないか?
てことは、労働者を管理するため?
その管理するやつらって金持ちよね。
働くために、時間が必要?
時間を決めないと働かないやつがいるからか。
金持ちのために生まれた概念?
おれたちを縛るために?
これ、ミヒャエルエンデのモモやない?
なんか、時間どろぼう、関係しとるんやない?
もしかして俺いま、社会の闇に触れようとしてる?
えぇ、じゃあやっぱり働くために時間が必要?
てことは、誰かに管理される必要がないなら、時計とか必要ないってこと?
そしたら、べつに困らんな。
じゃあ、働かんのなら時計とかいらんってことか?
いやでも、公共交通機関とか、時刻表が全てやんな。
それは、結局、公共交通機関で働く人がおるし、それに乗って働きに出る人も、学校に行く人もおるな。
なら最終的には、働くパーソンのために作られたのが時間であり、それを確認するために時計があるってこと?
いや、結局わからんな。
時間の概念は人間が作り出したものやろ。
いまさら、その存在意義とか考えたことなかったわ。
時間がないと、時給換算とかできんしな。
全て日給月給になるわ。
いや、そもそも一日は24時間なんやから、その概念すらも怪しくなるな。
よくよく考えたら、時間が関係することって、すべてお金が絡んどるな。
これ、経済の話なんか?それとも物理?
いや、やっぱ哲学か?
そんな難しい問いをしてきた息子は、もしかしたら天才ってこと?
それとも、そんな哲学的な問いが生まれるような教材を開発した教育系の企業の方がすげぇってこと?
ようは、社会に出て困らんようにするために、幼稚園のうちから学べってこと?
いや、社会って何?
時計の時間の見方を通じて、そういう勤労意欲とか学習意欲を掻き立てる教材ってことか?
やらないと困るから、やっとけっていうのは、ちょっと抵抗あるけど。
でも、すごいものなんか?
この時計ってやつは。
だとしたら、
チャレンジやべぇやん…
今度、大卒の人に聞いてみよう。
高卒の俺にはわからん。
俺は時計は読める。
時間も守れるよ。
でも、時間がなぜ必要か?とか
そんなんわからんよ。
おれ、大事なときにお父さんおらんかったから、お父さんにも聞いたことないし。
でも、息子よ。
お前のお父さんは、ここに存在しとるのに、お父さんは答えられん。
答えられんかったら、おってもおらんくても同じやな。
息子よ、すまん。
お父さんとしての限界を感じたわ。
だから、お父さんも勉強するよ!
勉強って楽しいもんな!
でも。
お父さんはまだ、ググらないぞ!
(おわり)
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