AIイラスト・AI絵の今後について考察


AI絵師の今後や、AI絵によるイラストサイトや、AIのトレパク問題の今後について考察してみた記事。


・AIで消えるタイプの絵師や消えないタイプの絵師 

 結局、技術の進捗次第ではあるが、要は単なる技術の高さを埋めるためのAI技術なので、単なる技術の高さしか持っていないユーザーは第三者から評価を次第に受けられなくなると考えられる。

とはいえ――

①(第三者の評価を得られなかろうと)自分の絵や描くという行為そのものが好きで。上達することそのものが楽しいと感じる人

 ――このタイプは商業ではない限り必ず生き残る。芸術的なテーマはないけどただ上手く絵を描くタイプのユーザーで生き残る手合いもこのタイプだろう。
彼らが生き残る理由は、自分が生み出す絵がAIと比較できない物であったとしても評価の指標が第三者に寄っていないためである。

他人に褒められなかったとしても、『自分が楽しいと思うのならそれで良い』は最強の概念なのだ。

また――

②自分の価値観に基づいて、何かを強烈に生み出したい。代替の難しい芸術家思考の人

――どの界隈でも存在するこのタイプもほぼ確実に生き残る。こちらも評価の指標が第三者に依存していないためだ。芸術的なセンスは個人の主観に寄る物であるためAIでは判断のしようがない。そこまでいくと最早個人の思考、思想、その人間を取り巻いてきた環境までもをAIが理解しなければいけなくなる。
つまり、描き手の『絵の上手さ以外の部分の拘り』が強くなればなるほどにAIでは精密な表現・再現が困難になる。
これはどの創作分野でもそうだろう。

とはいえ、このタイプは既に名声を得ているユーザーならまだしも、新規環境で頑張ろうとするユーザーにとっては苦難の道であろう。

この②番のタイプのユーザーはAI絵に役割を潰されることはないが、AI絵の圧倒的物量によって存在を掻き消される恐れがある。


コンテンツ数が大増加して新規のイラストレーターが死ぬ時は、『AIイラストは注目を受けた上で儲かる』という風潮が出来上がってしまった時だ

こうなったらもうお終いだと思って良い。
筆者の他の記事でも紹介されているが、コンテンツが爆増する時は『アクセス数を確保して儲かる手法(テンプレート)』が蔓延した時である。(youtubeや小説家になろうはその状態に既に陥っている)
アクセス数を得るための注目度重視のコンテンツ=気軽に消費できるコンテンツが増殖すればするほどに理解に時間がかかる重く、深いコンテンツに日の目が当たらなくなるためである。この②のタイプが生み出すような作品は、AIの模倣が困難な内容であればあるほどに『模倣性の高い質の低い作品の物量津波』によって埋もれる作品の典型となってしまうという問題を抱えている。

 また、単にAI絵を手直しする技術を持っているだけの絵師については……おそらくだが、ここまでAIの進化が早いと細部の修正も時間を置かずともAIでできるようになることが容易に予測できるため修正を売りにすることも次第にできなくなるだろう。
何よりも、消費者の大多数はAI絵で満足できる感性なので専門家しかわからない細かな違和感など気にしない。

芸術家の視点ではなく消費者目線で「見た絵の構図がちょっとおかしい」とか「ここは直すべき」みたいな部分に関しては絵の生成AIとは別に修正を行うことに特化したAIが出てくるだけなので、「単に技術があるから消費者に向けて直しができる」というアドバンテージはそのうち消滅する。

また、単に他人に褒めてもらいたいという目的で、テーマはないけどただ上手く絵を描こうみたいな志のユーザーも確実に消滅するし、界隈単位で泣き言を言っても無駄なレベルで徹底的に焦土と化す。これはもう決まった未来だ。逃れようがない。
ただ絵が上手いというところにアイデンティティを抱えていたユーザーは、圧倒的に生産が楽な上手さに特化したAIイラストの物量に叩き潰されるだけであり、消費者の評価数、コンテンツ消費量には上限が存在しているためである。

AIが好かれれば好かれるほど、同じ性質の人間が生み出すコンテンツには第三者の評価が集まらなくなる。特に深い審美を要さない再現性の高い題材であればあるほどに『技術的に上手いだけの絵を描いて第三者に評価されることで生きていた』彼らの存在意義は失われていく。


・AI絵による構図のトレパクについて


 最近話題になっているAI絵師のトレパクについて、Twitterで真っ先に上がる言論はAI絵師に対する批判的な意見怒りの感情だ。
こういった批判、怒りが発生するのは人として当たり前だろう。
しかし、おそらく怒っても問題解決的には意味がないというか。筆者としては結局ストレス発散にしかつながらない気がする。(現状、残念ながらなるようにしかならない)

 イラストにおける構図のトレパクは今までリスクが高かった
すぐバレる上に、時間をかけて絵の練習を続けることで築き上げてきた自分の名声に傷がついてしまうためだ。
しかし、次々と無から誕生し続けるAI絵師に関しては一般的な絵師の常識は最早通用しない
参入の敷居が下がり全体の母数が増えて、ここからさらに儲かるフォーマットが加速して蔓延してしまえば、きっちりとしたルール(法律)が定められていない環境下では儲かるために大多数のユーザーが躊躇なくAIを使ってイラストを学習し、既存の人気の(お金になる)イラストの構図やデザインを流用することになる。

一度そこまで勢いづいてしまえば、AIでトレパクするユーザーの圧倒的な母数に対して批判が追いつかなくなるだろうし、次第に叩かれる風潮自体が掻き消えることになるだろう。
最終的には今の二次創作を取り巻く風潮である『権利者でもない人間がいちいち文句を言う方がおかしい』どころか、(法律制定が全く追いついていないため)『トレパク元ですら文句を言うのはおかしい』といった風潮が広まっていくような気がする。


・イラストサイトのAIの今後について

 イラストサイトもおそらく、そのうち人が描いたものとAIが出力したものの区別がつかなくなってしまうことが予測される。
 そうなると結局AIに対して過剰に規制を行うサイトよりもAI絵を容認した無法地帯サイトの方が覇権を握ることになる。なぜかというとAIという大量生産的な概念を否定してしまうとサイト全体の圧倒的なコンテンツ量で競合サイトに負けてしまうためである。金銭目的でそれなりの質の作品を大量生産し続けることの強さは様々なウェブサービスで既に証明されてしまっている。

 本日発表されたPixivのAIとの共存というのは、正直同レベルのアクセスを持った競合サイトがいない故の強者の余裕であろう。
もしもPixivと同じ規模の競合イラストサイトが存在していた場合、AIの完全無法地帯化を容認したサイト――先に核ボタンのスイッチを押した方が勝っていた。Pixivも、AIとの共存などの緩和や規制策を取っている余裕はなくなってしまっていたに違いない。

 そして、もし今後一度でもどこかの大手イラストサイトがAIによってコンテンツ量を増やして覇権を握ってしまえばそれが最後だ。
AIに居場所を奪われたユーザーや注目を浴びていないユーザーが他のサイトを楽園・避難所にしたところで最早勝ち目がない。
既に有名なユーザーからすれば、全体の利用ユーザー数が多い無法地帯サイトに集まった方が良いからである。
また、結局そのような状況に陥ったとしてもAIを容認したサイトの利用者自体の数が減るわけではない。むしろ増えるため、『オワコンである』と絵師達が見切りをつけたところで環境が大きく変わるわけでもない。短期的に見て困るのは絵師サイドのみである。


いずれにせよ、AIで再現できるジャンルに関しては、先程の項で挙げた①タイプのユーザー以外消滅することが予測される。同時に②タイプの単なる絵の上手さ以外の評価指標があるコンテンツは当面は人間の専売特許であり、尖っている物であればあるほど細々と生き残ると予想される。(とはいえただでさえ流通の多い絵という創作でさらに流通が増えていくのでこれから個性的な何かを生み出したいという層は日の目を浴びることがさらに困難になる)

さらに、イラスト競合サイトが増えれば増えるほど、大量のAI絵と少数の人間絵の組み合わせが今後のイラストサイトのスタンダードになるだろうと予測される。

この流れをはっきりと規制することができるのはサイトの規約ではない(規約で制限しても損をするのはそのサイトだけだからである)。規制ができるのは著作権的な観点での国の法律のみであるが、あまりにも非現実的な話であり、意味がないだろう。

 そも様々な分野で、現状新規参入が容易で敷居の低い二次創作もろくに規制などされていない。
今まで散々イラストというコンテンツは二次創作にぶら下がり続けて増殖を繰り返して、その特性によって界隈を埋め尽くすことで、新しい一次創作が打ち上がる機会を潰してきたわけだが、結局それと似たような現象がAIでも起こるだけだ。
ここまで来たら最早なるようにしかならないのである。
(ちなみに筆者のスタンスは、創作の入り口、内輪やアングラなサイトで楽しむ規模の二次創まで否定するつもりはないのだが、現代日本の二次創作界隈は拡散力や商業的な観点であまりにも過剰に力を持ちすぎていて、一次創作への注目やヒットの機会を叩き潰しすぎていると感じるため、ある程度は規制するべきであるという認識でいる)

あらゆるウェブサービスで模倣性の高いコピーコンテンツは爆破的に増え続けるが、消費者の消費には限りがある。止める手立てはなく、ただ受け入れるのみである。

正直に言ってしまうとイラストレーター単位で見れば、AIの存在によって割りを食うユーザー層の方が圧倒的に多くなることが予想される。AIとの共存で得られる絵師の全体的な利益などは受ける打撃に対してあまりにも微々たるものだ。
結局、AIで得をするのはイラストを描けない側のユーザーだろう。

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